ブルズ退団後のピッペンが見せた“ベテランの振る舞い”を元同僚が回想「彼は6つのリングが入った箱を私の家に置いていった」<DUNKSHOOT>

“神様”マイケル・ジョーダンの相棒として知られるスコッティ・ピッペンは、シカゴ・ブルズで2度の3連覇を果たしたのち、ヒューストン・ロケッツで1年、ポートランド・トレイルブレイザーズで4年を過ごした。新たにタイトルを獲得することはできなかったが、ブレイザーズで同僚だったボンジ・ウェルズは、ピッペンとの忘れられないエピソードを回想している。

ヴィンス・カーター(元トロント・ラプターズほか)やダーク・ノビツキー(元ダラス・マーベリックス)、ポール・ピアース(元ボストン・セルティックスほか)らと同じ1998年のドラフト全体11位指名でNBA入りしたウェルズ。ブレイザーズ、メンフィス・グリズリーズ、サクラメント・キングス、ロケッツ、ニューオリンズ・ホーネッツ(現ペリカンズ)で計10年間プレーし、ブレイザーズ時代の2001-02シーズンには自己ベストの平均17.0点をマークした。
ブレイザーズで同僚だったラシード・ウォーレスがホストを務めるポッドキャスト『Sheed & Tyler』に出演した際、「プレーオフで優位に立つための鍵」をテーマにトーク。

ベテランの存在が挙がるなかで、まずはウォーレスがチームの黄金期を支えた1人であるクリフォード・ロビンソン(1989~97年に在籍。ウォーレスは移籍1年目の96-97シーズンに共闘)について触れ、気の抜けたプレーをしていれば「コートから出ていけ!」と雷が落ちたと振り返った。

するとウェルズは「私にとって、ピップがそんな存在だった」と、1999年10月にロケッツからトレードでやってきたピッペンの名前を挙げた。

「ピップは当時13年目のベテラン。リングも6つ持っていた。(プレーオフで)レイカーズとのゲームを控えたタイミングだった。家のドアベルが鳴ったんだ。でも、ドアを開けたら誰もいなかった。道路を見下ろしたらピップがいて、私に手を振っていた。彼は(ブルズ時代に獲得した)6つのリングが入った箱を私の家に置いていった。『俺のために(リングを)もう1つ加えてくれ』と言っていた。まだカメラ付きの携帯が普及する前の話だけど、ただ彼のことをずっと見ていたのを覚えている。箱の蓋は透明で、そこにリングが全部で6個あった」 ウェルズが在籍した1998~2003年までの間、ブレイザーズはプレーオフでロサンゼルス・レイカーズと3年連続で対戦。2000年はカンファレンス決勝であと一歩まで追い詰めるも3勝4敗で敗れ、その後は1回戦で2年連続スウィープ負け(3連敗)を喫した。シャキール・オニール&コビー・ブライアントを擁し、2000~02年にリーグ3連覇を果たすライバルの壁は越えられなかったが、“絶対王者”を苦しめたチームのひとつがブレイザーズだった。

ウェルズは、ピッペンが置いていったリング入りの箱をベッドに置き、その横で寝たという。
「私はそのケースをベッドに持ち込み、ただただ見ていたよ。枕のすぐ横にリングがある状態で寝た。(マイケル)ジョーダンが指にリングをつけた写真を飾っていたけど、自分の目の前に文字通りリングがあるんだ。次の日の朝、起きてもまだ信じられなかったよ。ピップが私を信頼してくれているのがわかった。彼は私を弟のように可愛いがってくれた。『この人のためにもう1つリングを獲得しなきゃいけない』と思った。結果的に彼にリングをプレゼントすることができなくて悔しかったよ」

ブレイザーズでいぶし銀の働きを見せたピッペンについて、当時主力だったウォーレスも「プレーオフではすべてが激しくなる。ベテランがいるとチームが締まる。俺たちに彼は必要だった」と敬意を表していた。

構成●ダンクシュート編集部

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