【首都圏近郊・春の穴場】「この景色が見たくてまた登る」ツツジに彩られる駅近絶景名低山<菊花山>

新緑の樹々をフレームに、富士山とツツジの競演をパシャリ(撮影:大内征)

ゴールデンウィークに入る前に九州南部の低山を歩こうと思い、いま宮崎県に滞在している。今日は朝から雨が降ったりやんだりしていたので、調べものついでに原稿でもやろうと都城市立図書館にやってきたところだ。この施設がなかなかいい感じで、めちゃめちゃ集中できる。ついでに蔵書検索してみたら、ぼくの本も置いてあるではないか。首都圏の低山の本なのに、どうやら借りている人がいるらしい。ありがたいことである。

昨日登った宮崎の低山に、ツツジが咲き始めていた。毎年この季節になると、まさしくツツジのきれいな低山に登りたくなるぼくにとっては、とても嬉しい出来事だった。山頂で居合わせた地元の登山者が言うには、今年のツツジは早いらしい。

ツツジといえば、首都圏近郊の低山で真っ先に思い浮かぶのが、山梨県大月市の菊花山(きくかさん)である。近いうちに登りに行こうと思っているこの山を、今回は紹介したい。

■標高644mの駅近絶景低山「菊花山」

菊花山は、山梨県大月市にある標高644mの絶景低山だ。JR中央本線の大月駅が最寄りで、登山口まで10分とかからないアクセスのよさは特筆すべきポイントだろう。しかし、それにしては名の知られた山ではなく、どちらかというと玄人好みの隠れ名低山だった。なにしろひと昔前は、ここで登山者と会うことはほとんどなかったのだ。

ところがここ十年の間に、ちょっとずつその名が知られるようになった。理由のひとつに挙げられるのが、富士山の眺望のよさだろう。隣の初狩駅から登る高川山の山容がこれまた見事で、その向こうに富士の姿が立ち並ぶ構図がじつに素晴らしい。そして、その富士山にツツジを添えた絶景ポイントが、ちょっと有名になった。これを目的のひとつとして登ってくる登山者もいるくらい見事な眺めなのだ。

登山口の標高がすでに375mあるため、山頂までのコースは短い。スタートからいきなり急になるのがポイントで、連続する固定ロープはアスレチック感が抜群だ。しばらくは樹木に囲まれた急登にはりついて高度を上げていくものの、やがてところどころ視界が開けていく。周辺の山々の眺望に励まされて、少しずつ期待感も高まっていく。

新緑の季節の山は、とにかく目に鮮やかな緑に包まれる。富士山はまだ少し雪を残しているだろうから、空の青さと樹々の緑とのコントラストはこの季節ならではのもの。そして、その富士山をツツジの樹々が額縁のように囲う構図は、ここだけのものだろう。

■菊花山ならではの構図「ツツジのフレームと冠雪富士」

山頂に登りつめる前に、その絶景ポイントに差し掛かる。岩場でふり返ると、そこにあるのがツツジをフレームにした富士山だ。やはり素晴らしい、見事な構図である。これを撮りたくて今回もまた登りたいと思ったわけだ。

このあと、ほどなく山頂となる。北側には大月市を代表する岩殿山がドシンと鎮座し、大菩薩嶺を擁する甲州アルプス方面まで展望が大きい。この絶景を楽しんだら、そのまま登山口へと戻るピストンでもいいし、歩き足りない場合は周辺の山とセットで歩くコースもおすすめだ。

■周辺の「秀麗富嶽十二景」の山々と併せて縦走も可能

菊花山とセットで歩かれているポピュラーな山のひとつが、御前山だ。別名を厄王山といい、往時の修験道の名残を感じさせてくれる。こちらもツツジが見事に咲き誇り、富士山の絶景が待っている。先に御前山に登ってから菊花山に向かう登山者も意外と多いから、計画の参考にしてはいかがだろうか。

大月市には「秀麗富嶽十二景」と名付けられた、いわば市内の名山がある。山頂から眺める富士山が見事だと評された山々であり、これらを歩いて制覇する登山者は数多い。

この御前山は現在「10番山頂」として指定されているものの、ちょっと前まではその予備候補だったことを記憶している。同じ「10番山頂」の九鬼山までの縦走も楽しいし、やはり秀麗富嶽十二景は、このあたりの登山計画の参考としてぴったりだと思う。

ちなみに、原稿に名前が登場した高川山は「11番山頂」で、岩殿山は「8番山頂」である。この二座もさすがの眺望が楽しめる絶景低山だ。

<低山トラベラー厳選。菊花山周辺の立ち寄るべきスポット>
【追いハイク】御前山とセットで周回(JR大月駅に戻る)または縦走(JR猿橋駅へ)
【追いハイク】九鬼山とセットで縦走(富士急禾生駅へ)
【日帰り温泉】富士急都留市駅前「よりみちの湯」
【カフェ】富士急禾生駅近くの「cafe織水」
【宿泊】JR大月駅前にできた「東横イン」が超便利

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