同性カップルを「法律で引き裂かないで」結婚の平等裁判、東京1次高裁判決は10月30日

裁判所へ向かう原告と弁護団

法律上同性カップルの結婚が認められないのは憲法に違反しているとして、LGBTQ+当事者が国を訴えている裁判は4月26日、東京1次訴訟の高裁での審理が結審し(谷口園恵裁判長)、判決言い渡しが10月30日に決まった。

「結婚の自由をすべての人に」と呼ばれるこの裁判は、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5地裁で6つの裁判が起こされた。

これまでに札幌高裁の高裁判決を含め、7つの判決のうち6件で、同性カップルが法的に保護されないのは違憲と判断されている。

その一方で、東京1次訴訟の地裁判決では「法律上同性カップルが家族になるために、今ある婚姻制度とは別に、パートナーシップ制度のような類似の制度を作るという選択肢もありうる」という見解も示された。

26日に開かれた東京高裁の審理では、原告がこの判断に反論。「法律上同性カップルも結婚制度を平等に使えるようになることで、性的マイノリティの社会的承認は進む」と訴えた。

「時間は命」「法律で引き裂かないで」

原告の一人大江千束さんは、法律上同性カップルの結婚が認められていないことは「セクシュアルマイノリティは異質な存在というお墨付きを与えている」と意見陳述で述べた。

大江さんとパートナーの小川葉子さんは原告になった後、職場の上司から裁判を理由にハラスメントを受けるようになったという。

この上司から「セクシュアルマイノリティは社会性がない」などと繰り返し言われて心身ともに疲弊し、最終的には小川さんとともに仕事を辞めざるを得なかったという大江さん。

法廷で「性的マイノリティが不当な偏見にさらされないようにするためにも、現在の結婚制度を使えるようにしてほしい」と求めた。

審理後に記者の取材に答える原告ら(左から)上杉崇子弁護士、小川葉子さん、大江千束さん、小野春さん、西川麻実さん

原告の西川麻実さんは、「パートナーシップのような別制度を作ってから結婚制度に移行するやり方でもいいではないか」という考えがあるとして、その考えには「時間は命であるという視点が欠落している」と主張した。

2019年に裁判が始まってから5年の間に、西川さんの周りでは、法律上同性のパートナーを持つ友人や知人が亡くなっており、自殺した人もいるという。

西川さんは、パートナーシップ制度を作ってから結婚の平等へ移行するとなると何年もかかり、その間に多くの人が亡くなる。命の問題だと捉えてほしいと訴えた。

西川さんのパートナーの小野春さんは、同性カップルの家庭で育てられる子どもたちも、孤立させ苦しめると語った。

「小学校に通うふたりママ家庭の友人の子は『だってお母さんたち結婚できてないじゃん』と友だちに言われたといって泣いていたそうです」

「未来を担う子どもたちに、あなたたちのお家はお友達の家とは違うのだということができるでしょうか。私たちは家族です。法律でそれを引き裂かないでください」

裁判所の外でレインボーフラッグを掲げるLGBTQ当事者やアライの人たち

結婚の平等を後押しする判決が東京でも言い渡されるか

東京1次訴訟の原告が、地裁で最初に意見陳述をしたのは5年前の2019年4月15日だった。

この時に小野さんとともに法廷に立ち「死ぬまでにパートナーと結婚したい」と語った佐藤郁夫さんは2021年1月、脳出血で倒れて入院し、亡くなった

小野さんは、審理後の記者団の取材で「5年の間に、友人が何人も亡くなりました。一緒に意見陳述をした郁さんがいないことはとても悲しかった」と述べた。

東京一次は札幌に続く2つ目の高裁判決となる。

一連の裁判で、札幌高裁は初めて「憲法は同性間の結婚を、異性間と同程度に保障している」と判断した。

また、「同性婚について、異性婚と同じ婚姻制度を適用することを含めて、早急に真摯な議論と対応をすることが望まれる」という見解も示された。

東京高裁でも同様の判断が示されるかどうかが注目されており、意見陳述をした原告の加藤慶二弁護士は「同性カップルが婚姻制度を利用できる社会に近づくための重要な一石を投じてほしい」と求めた。

© ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社