中古のお宝探訪 知られざる「単品アイアン」の世界・ロングアイアン編

J’sチタンマッスルの4番アイアン。10本セット販売が基本だった

中古ショップのアイアン売り場で“揃いのセットではないアイアン”が置かれているエリアに目を向けている方はどれだけいるだろうか。いわゆる「単品アイアン」と呼ばれるクラブの束であり、隅っこのキャディバッグに無造作に詰め込まれていることが多い。実はこの中にも魅力的なモノが紛れ込んでいるのだ。

「単品アイアン」増殖の理由とは

ジャンボ尾崎の全盛時代、およそ30年前のアイアンセットは、3IからSWまでの10本販売が一般的だった。本数が多く、新品で20万円超はザラで、購入には清水の舞台から飛び降りるぐらいの覚悟が必要だった。

しかし、いまやロングアイアンは7W、9Wなどのショートウッドや、UTといったお助けクラブに取って代わられた。ウェッジもタイガー・ウッズの登場以降、別売りされるようになり、アイアンセットは5番からPWまでの6本が標準と言えるようになってきた。5本、4本というセットもあり、その前後の番手を「単品アイアン」として販売している。

やさしいロングアイアンを入れるのも一つの手

コリン・モリカワのアイアンセットは3機種のコンボ

エンジョイゴルファーにとって打つのが難しく、もはや絶滅危惧種扱いですらあるロングアイアン。しかし欧米ツアーや国内ツアーでも3I、4Iをミドル、ショートアイアンと別モデルで使う男子選手が目立ってきた。彼らはミドルアイアン以下の番手を弾道が操りやすいマッスルバックなどにし、ロングアイアンには寛容性のあるモデルを入れている。

ロリー・マキロイ(北アイルランド)も4Iだけキャビティで、5I以下はマッスルバック。「マスターズ」で優勝争いを演じたコリン・モリカワは4Iにテーラーメイドの中空アイアン「P770」を、5I、6Iはキャビティの「P7MC」、7Iから下はマッスル「P730」を選択している。

実際に単品アイアンコーナーを漁ってみると、面白い在庫を発見できた。例えば、ピン「i525」(2022年)の4I(19.5度)が約1万円。ジェイソン・デイ(オーストラリア)が3Iと4Iで使うダンロップ「スリクソン ZX5 MkII」(2023年)の4I(22度)が約1万5000円…。ヘッドスピードが速いゴルファーにとって、ボールが上がりやすいウッド型UTは意外と使いにくいケースがある。単品アイアンでトップ選手をマネするのも、スコアメークのために決して悪い選択ではない。

プロも単品でやさしいモデルを入れるケースは多い

コスパよし…アイアン型UTの代わりに単品アイアン

単品アイアンの魅力は、そのお手頃価格にもある。一度探してほしいのは「これ、アイアン型UTじゃない?」と声が出そうな、ヘッドが大きく、ミスヒットに強い中空構造モデルや、深いキャビティバックの単品アイアン。お値段もアイアン型ユーティリティよりもお得感がある。

ヤマハ「インプレス UD+2 アイアン」(2020年)の5Iが9000円を切る価格で見つかった。同じくヤマハの「RMX VD40」(2021年)の5Iは8000円!アイアンでは最大級の慣性モーメントを持ち、ミスヒットに強い。

共に1万円を切る値段でお買い得感は高い

男子ツアーで活躍する金谷拓実は4I代わりにピン「G710」の5I(ロフト角21.5度)を入れて、アイアンセットは5I(26度)から「i230」という“5Iが2本入り”のセッティング。アマチュアも参考にしたい。

単品アイアンを入れる前の「ロフトチェック」

キャディバッグに単品アイアンを加える前に、まずは自分のアイアンセットのロフト角を把握しよう。同じメーカー、同じ5Iでもモデルによってロフト角が違う。4Iの代わりが欲しいと思って、そのまま4Iを探すのではなく、セットのアイアンとのロフト角の差を考えたい。2本のアイアンで飛距離の差が出なければ、元も子もない。ロフト角の差は3度から5度は欲しいところだ。

もう一つはシャフト選び。使っているUTなどよりは重く、アイアンセットと同じもしくは少し軽いものをチョイスすること。重さが逆転するとセットの流れが悪くなる。コリン・モリカワのように3種ものアイアンを組み合わせたい人は、それなりの知識が必要だ。ショップで馴染みのスタッフがいると心強い。

モリカワの4番アイアン。他の番手に比べて球が上がりやすくスピンが増えやすいシャフトを挿す

「中古ショップにある単品アイアンって誰が買うの?」と思っていたゴルファーは、意外と多いと思う。もちろん初心者が「まずは7Iを1本買ってみる」という需要もあるが、マニアにとっては激アツな売り場でもある。もちろんオンライン上の中古ショップにも4Iや5Iといった商品は多いので、たまにチェックをして掘り出し物を見つけてほしい。

次回はアイアンセットにある単品ウェッジについて語ってみたい。(文・田島基晴)

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