[社説]嘉手納基地で不発弾 情報と説明が足りない

 住民の安全や生活にも関わる問題だ。迅速な対応はもちろんのこと、適切な情報開示と丁寧な説明が求められる。

 米軍は25日夜、嘉手納基地内の工事現場で見つかった米国製500ポンド(約227キロ)砲弾1発の不発弾を現場で処理した。

 現場は交通量の多い道路や住宅地に程近い。

 半径480メートル以内に住む34世帯66人が避難対象となったほか、国道58号の区間1キロが約3時間通行止めとなり、交通渋滞が発生。路線バスは運行経路の一部変更を余儀なくされた。

 避難や通行止めは安全確保のためやむを得ない措置だ。

 しかし今回は、米軍からの通報があった翌日すぐの処理となったことで、さらに住民生活に大きな影響を与えることとなった。

 沖縄防衛局などによると、不発弾が見つかったのは23日午後5時ごろ。翌24日午前9時ごろ、米軍から日本側へ通報があった。その上で、早急に処理したいという米側の意向に沿い、翌25日夜の実施が決まったという。

 通常の不発弾処理では、住民周知や避難を徹底するために1週間程度の準備期間が設けられる。

 それが今回は実質1日足らずでの実施となったため役場は周知に追われ、避難を余儀なくされた住民にはいつにも増して不安が広がった。情報を知らず、突然の交通規制に戸惑う人も少なくなかった。

 米側から日本側への最初の通報までに半日以上を要している。こうした住民生活への負担や、何より安全確保を考えれば米軍はもっと迅速に通報すべきだ。

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 不発弾は、HH60救難ヘリの運用整備格納庫の建設工事中に見つかった。

 威力が大きいもので、ここ数日続いた雨で土砂崩れなどが起きれば爆発する懸念もあったという。

 処理現場となった新格納庫は居住地域の近隣にあるとして、かねて嘉手納町議会が離れた場所への移転を求めていた。

 騒音や排ガスなどの日常的な被害が懸念されるほか、万が一にも大きな事故が起きれば周辺地域への被害は免れない。

 米軍は2026年11月に完成の予定とするが、その機能や運用の詳細についてはほとんど明らかにされておらず、同町も説明を求めている。

 県も改めて防衛局に対し事実関係を確認しているという。住民の懸念を置き去りにした建設は認められない。最低でも情報提供が必要だ。

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 外来機の相次ぐ飛来や無人偵察機「MQ9」の配備などこの間、嘉手納基地の機能は強化され続けている。

 嘉手納での米軍のパラシュート降下訓練は今月5カ月連続で強行され、米軍は来月末も実施する意向だ。日米合意で「例外」とされる運用にもかかわらず説明は不十分だ。

 地域の生活を「二の次」にし、住民に犠牲を強いるような基地の運用は認められない。

 米軍は地元が求める説明を尽くすべきであり、政府は情報開示に向け交渉すべきだ。

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