ゴールデンウィークに登りたい「春を迎える」百名山3選【関東編】

気持ちのいい稜線が続く丹沢主脈線。(撮影:山歩ヨウスケ)

もうゴールデンウィークの計画は立てているだろうか。2024年のゴールデンウィークは最長で10連休にもなり、これだけの休みがあれば縦走登山や、1日では辿り着けないような山奥の秘境へのプランを考えたいところだ。だが、アルプスなど標高の高い山々はまだまだ残雪期で、山に入るには本格的な装備が必要となってくる。

今回は、例年ゴールデンウィークには雪の無い登山を楽しめる「日本百名山」を3つ紹介したい。首都圏からのアクセスがしやすく、遠出は混雑するからと遠慮している人にもおすすめの山だ。

■静岡県・伊豆半島の屋根「天城山(万三郎岳)」

天城山(あまぎさん)は、伊豆半島中央の東西に広がり、「天城山」という名の山は存在せず、連山の総称である。日本百名山の一座として名を連ねるほか、「花の百名山」や「静岡の百山」などにも選定されている。

天城山は、伊豆半島最高峰の万三郎岳(ばんざぶろうだけ・標高1,406m)、万二郎岳(ばんじろうだけ・標高1,299m)、遠笠山(とおかさやま)等の山々から構成される。

天城縦走路登山口から周回コースがあり、万二郎岳、万三郎岳を経由して、4時間半ほどで周回することができる。

登山コースは樹林帯がメインとなるが、序盤の万二郎岳へと続く道は日の光が多く入り、明るいコースとなっている。木々の間からは眺望もあり、楽しみながら歩ける。 万二郎岳から万三郎岳へと続く区間では「アセビのトンネル」があったり、「アマギシャクナゲ」の群生地があるなど、見どころが多い区間。例年、シャクナゲの見頃は4月中旬から5月上旬ごろだ。

万三郎岳から登山口へと下山するコースではゴロゴロとした岩が目立つようになり、眺望こそないが、一本一本の木々が太く、巨木が多く立ち並び、苔むした森の中を歩く。前半に歩いた道とは雰囲気がガラッと変わり楽しめるだろう。

万三郎岳は標高1,400mを超える。春になっても天気によっては冷え込むこともあるので、防寒対策はしっかりとして出かけたい。

登山ルート
天城縦走路登山口⇒(1時間10分)⇒万二郎岳⇒(1時間10分)⇒万三郎岳⇒(45分)⇒涸沢分岐点⇒(1時間25分)⇒天城縦走路登山口

アクセス
伊豆スカイライン天城高原ICから県道111号線経由で12分(7.6km)

■神奈川県・丹沢山脈の最深部「丹沢山」

東西に40km、南北に20kmにもおよび、神奈川県の面積の6分の1を占める「丹沢山地(たんざわさんち)」その最高峰は「蛭ヶ岳(ひるがたけ)」だが、百名山として選定されているのは「丹沢山(たんざわさん)」である。

標高は1,567mで、丹沢山はかつては丹沢中央部に連なる山々の総称だったのだが、測量時に一等三角点が設置された場所に仮称として丹沢山と名付けられた。そのまま現在へと至り、一峰の名となったとされている。

丹沢山へはどこの登山口から登っても山頂までの距離が長く、時間と体力を要するチャレンジングなコースだ。丹沢山への登山口として有名な大倉登山口からでもコースタイムで5時間以上かかる。

丹沢山へのアプローチは大倉からがメジャーではあるが、筆者は「表尾根」を利用して登るのをおすすめしたい。菩提峠からスタートし、三ノ塔、塔ノ岳を経由して丹沢山を目指すルートで、行動時間は約9時間となる。

春になり、日が長くなることで計画できるようになるルートだが、早朝からの行動を心がけたい。

見どころは稜線に出てからの眺望がいいことだ。菩提峠から三ノ塔までは樹林帯だが、三ノ塔からは稜線歩きとなり、景観を楽しみながら歩ける。

稜線歩きでは日差しが強いため、紫外線対策は必須となる。登山は汗をかくので小まめなケアをしたい。
途中、塔ノ岳を経由するが、塔ノ岳からの景色は絶景で山頂スペースは広く、富士山の景色を楽しみながら昼食を食べるといい。

菩提峠から丹沢山までは約5時間の道のり。距離は約8kmほどだが、終始眺望がいいのでそれほど疲れを感じずに歩くことができる。

日が長くなる季節は日帰りも可能なコースだが、時間に余裕を持って楽しみたい人は1泊するのもおすすめ。

1泊すれば、翌日に丹沢山地の最高峰・蛭ヶ岳に登ってから下山することもできる。丹沢表尾根と主脈線はとにかく眺望を楽しみながら歩きたい人にとってはおすすめのルートである。

【登山ルート】
菩提峠⇒(1時間10分)⇒三ノ塔⇒(2時間20分)⇒塔ノ岳⇒(1時間30分)⇒丹沢山⇒(1時間)⇒塔ノ岳⇒(2時間)⇒三ノ塔⇒(1時間)⇒菩提峠

【アクセス】
東名自動車道・秦野中井ICから県道70号線経由で34分(16.9km)

■東京都の最高峰「雲取山」 1泊で行くチャレンジコース

東京都の最高峰「雲取山(くもとりやま)」。標高は2,017mで、東京都最高峰ではあるが、東京都、埼玉県、山梨県にまたがる山で、日本百名山、多摩百山に選ばれているほか、山梨百名山や埼玉の山50にも名を連ねている。

東京都内だけあって、都心から登山口への距離は近いが、高速道路を降りてから峠道を長く走るため、アプローチにかかる時間には余裕を持っておきたい。雲取山山頂まではどこの登山口から登っても距離が長く、奥多摩湖に近い鴨沢バス停から七ツ石山を経由して登っても6時間以上かかり、日帰りで登るにはかなりの体力を要する。

1泊で行くのが時間的にも体力的にも現実的なプランになる。宿泊地の候補は2か所、山頂近くにある「雲取山荘」か、雲取山への道中にある「三条の湯」だ。

せっかく行くのであれば三条の湯で泊まり、温泉を楽しみながら山頂を目指すコースを紹介したい。

アプローチは「お祭」のバス停から後山川沿いに並走する林道を利用し、山小屋「三条の湯」へと向かう。

三条の湯から雲取山山頂までは2時間40分で、下山は2時間ほど。三条の湯での宿泊の場合、1日目に雲取山山頂を目指すとなると、行動時間はトータルで7時間10分。休憩時間なども入れると、早朝に出発するのがマストとなる。

マイカーでアクセスするのであれば片倉橋のゲートまで乗り入れができ、行動時間を1時間ほど短縮できる(片倉橋から三条の湯まではおよそ2時間30分)

雲取山へ登頂し、宿泊地の三条の湯まで戻ってきたら、待っているのは極上の温泉だ。ゆっくりと疲れた体を癒すことができる。

初日に雲取山へと登った場合、2日目は下山するだけなので三条の湯を出発するのはゆっくりでも大丈夫だが、早朝に出発すれば下山後に観光を楽しんだりすることも可能だ。

なかなかハードではあるが、東京都の最高峰に立てたという達成感と、温泉での癒し効果から満足度の高い山行になるはずだ。

〈登山ルート〉
片倉ゲート⇒(2時間30分)⇒三条の湯⇒(2時間40分)⇒雲取山⇒(2時間)⇒三条の湯
三条の湯⇒(2時間)⇒片倉ゲート

〈アクセス〉
東名自動車道・秦野中井ICから県道70号線経由で34分(16.9km)

■GWは近場の百名山へ出かけよう

世界的なパンデミックも落ち着いてきたことから旅行に行く人も少なくないだろう。遠出もいいが、近場で登山を楽しむのも悪くない。ゴールデンウィークは新緑の山を楽しみにアクセスしやすい山へと出かけてみてはどうだろうか。 紹介したルートはいずれも歩行距離が長く、行動時間も長くなる。事前に足慣らしをし、体力を戻してから出かけてほしい。

紹介した山は例年ゴールデンウィークには雪が残らないが、天候やコンディションを調べたうえで出かけてほしい。

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