元宙組トップの和央ようか「宝塚には向いていない性格」自分らしい男役像を確立するまでの奮闘

和央ようか 撮影/三浦龍司

宝塚歌劇団・宙組の元トップスター、和央ようかさん。トップ在任期間は6年を超え、平成以降の最長記録だ。現在は夫で世界的作曲家のフランク・ワイルドホーンさんとハワイで暮らし、日本と行き来しながら活動の場を広げ続けている。芸能生活35周年を迎えた彼女の素顔と人生の転機、「THE CHANGE」とは。【第3回/全5回】

入団当初から順風満帆に見えたが、実は辞めたかった

平成以降の最長記録である6年を超える間、宝塚歌劇団・宙組トップの座を務めた和央ようかさん。入団2年目で、若手が中心となって行う新人公演で『ベルサイユのばら』のオスカル役を与えられるなど、順風満帆に宝塚でのキャリアを築いてきたように思える。だが、和央さんは自身のことを「宝塚には向いていない性格」だと話す。

「前に前に出ることが難しいんです。本当は“お先にどうぞ”と後ろでマイペースに進みたい性格。華やかな世界で、自分を積極的にアピールできませんでした。それなのに、ありがたいことなのですが、いただく役が大きすぎて。ついていけない自分が申し訳なくて、劇団に入ってからは辞めたいという気持ちが強まっていきました」

入団から5年ほどたったころ、ついに「辞めたい」と両親に口にした。もともと宝塚への入団に反対していた両親とは、“3年たったら辞める”という約束をしていた。約束の期間はとうに越えていたため、退団をすぐに認めてくれると思っていたが……。

「まさかの辞めることに反対されたんです。“嫌だとかつらいとか、そういう気持ちで辞めたら、ずっとそういう人生になる。何か一つやり遂げて、楽しかったという気持ちで辞めなさい”と母親に言われて。そう言われたときは“話が違う!”と腹が立ちましたね(笑)。でも、今では本当に心から感謝しています」

“自然体で魅せる”男役を目指した

華やかに、前に出ていく男役には「向いていない」。そう感じながらも奮闘するなかで、役との向き合い方が変わっていった。

「映画とか舞台とかで見る華麗なかっこよさじゃなくて、自然体のかっこよさでもいいんじゃないかと思うようになったんです。そうしたらストンと腑(ふ)に落ちて、楽になりました」

信号待ちの人や、ただ立っている人。何かかっこいいしぐさをしているわけではないのに、なんだかかっこいい。街中で見かけるそうした人たちを、分析していった。

「そのまま真似するわけじゃないんです。そこにいるだけで、なんとなくかっこいい。そういう雰囲気を自ら出せる男役になりたいと思って、観察していました」

華々しく前に出る男役ではなく、抜け感のある男役を目指した和央さん。インタビューに答えるときも実に自然体で、それなのに惹(ひ)きつけられてしまう。まさに自然体なかっこよさが、和央さんの身体にはいまも染み付いている。

和央ようか 撮影/三浦龍司

和央ようか(わお・ようか)
大阪府出身。74期生として宝塚歌劇団に入団し、雪組に配属。1998年宙組創設メンバーとして組替えすると、’00年にはトップスターに就任。’06年『NEVER SAY GOODBYE- ある愛の軌跡-』で退団後は、舞台だけでなくモデルとしても活動する。’15年に作曲家のフランク・ワイルドホーン氏と結婚し、現在は米国と日本を行き来する生活。そのライフスタイルも注目を集める。

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