アベノミクスのブレーン、本田悦朗氏が強調「今利上げする理由はない」

安倍政権下で大胆な金融緩和を提唱した元内閣官房参与の本田悦朗氏と、経済アナリストの馬渕磨理子氏が28日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜午前7時30分)に出演。日銀が金融政策の現状維持を決め追加の利上げを見送り、外国為替市場で約34年ぶりに1ドル158円台まで円安が加速したことを巡って議論を交わした。

日銀はまず、先月に政策金利の誘導目標を0から0.1%にし“異次元の金融緩和”からの脱却を決めたが、この決定について本田氏は、「植田総裁がそう決断したので、これを前提に動くしかないが、少なくとも今利上げをする理由はない」と強調。

現在の円安が加速するなかでの政府・日銀による為替介入については、「今回これだけ急速に円安が動いたのに、財務省が一切動いてないというのは少し不可解な気がする」と指摘した。

一方、経済アナリストの馬渕氏は、他国との協調介入の可能性について、「ドル高を修正する政策はアメリカが応じるわけがない。日本は急速な円安は止めたいが、円高に向かわせるということに関して、なかなか了解が得られないのだろう」と指摘。そのうえで、「単独介入はあるのではないか」との見方を示した。

番組コメンテーターの橋下徹氏は、「円安になると大変だとよく言われるが、日本は、GDP成長率や賃金上昇についても円安の方がプラスになるのではないか」と指摘した。

以下、番組での主なやり取り。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
円安が進むなかで、日銀がその金融政策の現状維持を決めたということだが、その後、円相場は日本の市場が閉じて、ニューヨーク市場に入った後に急激に、また円安にふれて、1ドル158円台まで下落したが、これは事実上、日米の金利差が歴然とあるなかで、日銀はもう利上げというオプションを取れないんじゃないかとマーケットが見透かしてるのではないかという意見も結構ある。今回の日銀の今方針をどういうふうに見ているか。

本田悦朗氏(元内閣官房参与):
私の見解は、前回の日銀の政策決定会合、つまりマイナス金利政策の解除、それから、YCCというイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)、つまり、一番期間の短い金利と十年物の国債の金利の両方を抑えて、その間をつなぐイールドカーブ、利回り曲線をスムーズにしていこうと。そういうやり方をやってきたが、それを全て廃止した。全部一挙に廃止するには、私はまだ日本の足腰が弱いんではないかなと思っていて、春闘の結果、それから、6月の定額減税、その他の様子をよく見てから、それから、来年どうなりそうか、ということを確認してからでも遅くはないと思っていたが、植田総裁がそう(=マイナス金利政策の解除)決断したので、これを前提に動くしかないのだが、少なくとも、今利上げをする理由はない。少なくとも、為替の理由を前面に出して利上げをするのは国際ルール違反になる。つまり、金融政策当局は為替を触ってはいけない。為替はあくまでも円の需給、ドルの需給でもって相場で決まってくる、市場で決まってくる。だから政策的に為替レートの水準を触ってはいけない。財務省は、乱高下を防ぐのが仕事。だから、あまりにも円が急速に下がった場合には買い介入をすると。そういう乱高下防止のやり方は財務省の仕事。だから今回これだけ急速に円安が動いたのに、財務省が一切動いてないというのは少し不可解な気がする。

松山キャスター:
今回の金融政策決定会合の直前には、日銀の植田総裁などから若干利上げの可能性を示唆するような発言もいくつか出ていた。これがいわゆる口先介入ではないかという見方もあったが、いざふたを開けてみると、ほとんど現状維持だったと。このあたりの変化についてはどういうふうに見るか。

馬渕磨理子氏(経済アナリスト):
おそらくG20のなかでいろいろ向こうに交渉したところ、思ったような回答が得られなかったのではないか、というふうに思っている。つまり、日本としては急速な円安を止めたい。そのために為替介入も考えていると。できるならば協調介入も一緒にやってほしいと。プラス利上げもやっていきたいというふうな思いはあったと思うが、今のアメリカにとってドル高は優位。国内の物価がどんどん上がっているなかで、ドル高を修正するような政策というのはアメリカが応じるわけがない。なので、日本が円高に向かわせるというところに関しては、なかなか了解が得られなかった。加えて、イエレン財務長官が、為替介入というのは極めてまれな環境でしかできないというふうなことを言った後、日本の高官のトーンが全部変わったので、やはりアメリカの物価を止めるということが国際的な命題であって、そこに日本も協力するべきだというところが一致したんだと思う。しかし、とはいえ、やはり、どんどん為替が円安に進んでいくところを止めなければならないところはあるので、単独介入はあるのではないかなと見ている。

松山氏:
日本だけの為替介入の可能性はまだ残っていると。これだけ円安になってくると、やっぱり物価高がじわじわと広がってきて、家計に厳しい状況って出てくると思うが、このあたりも含めてどう見みるか。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
金融は極めて専門的な領域なので、いろんなデータを見て日銀の皆さんが判断しているとは思うが、将来の予測は専門家でも極めて困難で、日銀でも判断を間違ってきたことがあると思う。僕は政治家をやった経験として、こういう話は現状を見ながら後追いでやっていってもいいのかなというふうに思っていて。やっと今、賃金が上がってきた。これから実質賃金、その物価高を考慮しての実質賃金がどうなるのかっていうのもこれからの話なので、もうちょっと状況を見てから政治行政が判断すればいいんじゃないかと思うが、ただ、金融の専門家は今回の決定は妥当だと言うが、ちょっと元政治をやってたものとすると、現状を見てから判断してよとどうしても思う。

本田氏:
景気を浮揚させようとして金融政策をやるときは、ビハインドザカーブという言葉が鉄則。つまり、現実が先に来ると。政策は後押しをして、後ろから押していくと。もし景気が良すぎて、これを落とすときには反対になる。政策は先頭を切って、それに現実がついてこいというのが鉄則。そういう意味で言えば、今回はビハインドザカーブの原則が当てはまる時なので、ちょっと日本銀行はやや前走りすぎかなという気がする。

橋下氏:
円安について、いろいろこれは大変だ、大変だっていう今こういう状況になってますけど、為替のこの安い高いっていうのは、常にどちらにも批判がくる。円高になれば円高になれば、また、円高で大変だってなるんですよ。円高競争っていうのがずっとあるじゃないですか、で、これって為替の話はもうメリットもデメリットもあるなかで、全体を見たときに日本は、基本的には円安の方がGDPの成長率にしても、雇用・失業率の点についても、賃金上昇についても日本としては、円安の方がプラスになる国なんじゃないのか。これは各国の情勢によって違うと思うが。

馬渕氏:
おっしゃる通りだと思う。円安によって国力が低下するという議論は非常に飛躍しているなと思う。じゃあ、2円下がったら国力が上がるのかっていう話なので、日本というのは輸出をベースとして稼いでいく国にもう一度しなければならない時に円安というのは有利。今、日本に半導体中心にどんどん工場が誘致されている理由は、やはり円安がすごく恩恵になっている。日本はやはり製造業をもう一度輸出の鍵にしていくというか、今経常収支で見ると、ほとんど金融の投資で儲けている国になっていて、輸出では儲けていない状況があるなかで、今一度輸出をベースとして国力を上げていく。サプライサイド側の経済学で国力を盛り上げていくときに、円安は優位に働いていると思う。

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