コンポタ、シチュー、ナポリタン…“衝撃の味”の源は「あそびましょ。」 深谷・赤城乳業の「ガリガリ君」

話題を集めた「ガリガリ君リッチコーンポタージュ」(赤城乳業提供)

 「ガ~リガ~リ~君、ガ~リガ~リ~君♪」のテレビCMでおなじみのアイス「ガリガリ君」。赤城乳業(本社・埼玉県深谷市)が、年間で約4億本を売り上げるロングセラー商品だ。

 同社は1931年に製氷業の広瀬屋商店として創業。64年にかき氷「赤城しぐれ」を発売して人気を集めたが、70年代のオイルショックで暗転する。同業他社が価格を据え置く中、値上げに踏み切ったことなどから業績が悪化。そんな窮地を救ったのが、81年から発売を始めた「ガリガリ君」だった。

 「子どもが片手で食べられるかき氷がコンセプト」と、同社開発マーケティング本部マーケティング部マーケティングチームリーダーの岡本秀幸(37)は語る。かき氷をアイスでコーティングし、溶けて崩れにくく、しゃりしゃり食感のアイスが誕生した。

 同社の企業スローガンは「あそびましょ。」。岡本は「お客さんの期待に応えたいし、楽しんでもらいたいという思いがある」と語る。

 そんな企業精神が生み出したのが、ソーダ味など160種類以上もの多様な味のガリガリ君だ。中でもアイスの常識を覆した「衝撃の味、3部作」として話題を呼んだのが、コーンポタージュ味(2012年)、シチュー味(13年)、ナポリタン味(14年)だ。

 その「ガリガリ君リッチコーンポタージュ」は「新しい味に挑戦しよう」と企画されたが、斬新すぎるアイデアに社内から反対意見もあった。最終的に発売を決めたのは、当時の社長で現会長の井上秀樹の「ベリーグッド」の一言によってだった。

 開発で難しかったのはコーンをアイスの中に均等に入れること。試作を重ね、12年9月4日に発売を開始。話題が沸騰し、販売予測を大きく上回った。2日後には商品供給が間に合わず、販売を休止するほどだった。

 ガリガリ君は、時間をかけて凍結させた不純物のない純氷をこだわりの大きさに削り、シロップと混ぜ合わせてアイスの中に詰めた商品だ。昨年約20年ぶりにリニューアル。氷を粗く削って大きい氷の割合を増やし、従来よりも爽やかな後味にした。

 ガリガリ君といえば「当たりスティック」も忘れてはならない。コロナ禍の時は中止も検討したが、継続を決め、よく洗って乾かしビニールなどに包んでの交換を呼びかけている。岡本は「当たりスティックはガリガリ君の魅力の一つ。これからもガリガリ君がお客さんから楽しまれる存在でありたい」。遊び心は永遠だ。(敬称略)

■緩和医療学会から表彰

 「ガリガリ君」は、2019年に日本緩和医療学会の学術大会で「最優秀緩和ケア食の維持賞」を受賞している。多年にわたり緩和ケアを受ける患者の食の維持を支え、生活の質の維持向上に多大な貢献をしたためという。

 終末期の患者は飲み込む機能が低下し、口から食べ物の摂取が難しくなる。しかし、細かく砕いたアイスキャンディーは口の中に含むと徐々に溶けていき、終末期の患者にとっても食べやすいという。「終末期の患者がガリガリ君を食べたら、少し元気になった」などどいう声が同社にも寄せられているという。

 緩和ケアの業界では有名な話だったが、同学会から表彰を受け、交流サイト(SNS)を通じて話題となった。同社開発マーケティング本部マーケティング部マーケティングチームリーダーの岡本秀幸は「当初は想定していなかった食べ方だが、食べてもらえるのはありがたいこと。これからも味を守っていきたい」と語る。

 ガリガリ君シリーズは3月に税別の希望小売価格を70円から80円に引き上げた。原材料や包装資材などの価格高騰が要因で、品質維持のために値上げを決めた。1981年に50円で発売され、91年と2016年に10円ずつ価格を引き上げている。

看板商品の「ガリガリ君」を持つ岡本秀幸=埼玉県深谷市西島町の赤城乳業

© 株式会社埼玉新聞社