精神科医が診断!覇権を争うプレミア3強のキャプテンで最も頼りになるリーダーは誰か「ナンバー2にもナンバー1にもなれる貴重なリーダー」【リバプール/ファン・ダイク編】

熱心な海外サッカー・ウォッチャーであり、複数のクラブでメンタルアドバイザーを務める精神科医の木村好珠先生が、プレミアで三つ巴の覇権争いを演じるリバプール、マンチェスター・シティ、アーセナルのそれぞれのキャプテンのリーダーシップを診断する。重圧がのしかかるここからの戦いで最も頼りになるキャプテンは誰か? リバプールのフィルジル・ファン・ダイクを診断する。

―――◆―――◆―――

フィルジル・ファン・ダイク(リバプール/DF)

【木村先生のリーダーシップ診断/5段階評価】
●求心力/5
●影響力/5
●責任感/5
●精神力/5
●統率力/5

欠点がまるで見当たらない、まさにパーフェクトなキャプテン。経験という点も含めて、理想のリーダー像だと思います。プレーヤーとしても世界トップのディフェンダーなので背中でもしっかり示せますし、非の打ちどころがありません。

これだけ完璧でありながら、弱みをさらけ出せるところもリーダーとして優れている要素です。過去のインタビューやSNSを見ると、「苦しい」、「辛い」といった言葉を実は何度も口にしています。監督もそうですが、上に立つ立場の人は弱みを見せてはいけないとか、自分がつねに引っ張らなければいけないとか、そういう思考になりがちです。

でも、例えば怪我で長期離脱を余儀なくされて苦しい時に「苦しい」と言えるのは大事なことで、チーム全体にも好影響を与えます。自分も弱い部分を見せていいんだ、意見を言っていいんだ、そんなマインドが生まれるからです。このいわば心理的安全性を保てるリーダーは多くありません。

精神的にまだ成熟していない若手に対しても、ポジティブな影響が期待できるでしょう。それこそファン・ダイクと最終ラインでペアを組むCBのコナテは、その恩恵を受けている可能性が高いです。

もうひとつ特長を挙げるなら、監督をしっかり立てられるところ。強烈なリーダーシップを発揮するキャプテンは、時として監督と衝突してしまうケースもあるのですが、そういう話はまったく聞こえてきません。人間的魅力に溢れるクロップだから、というのもあるとは思いますが、ボスとの調和もしっかり取れるタイプなのでしょう。

監督を立てるナンバー2の仕事もできるし、選手を統率するナンバー1の仕事もできるのがファン・ダイクの特別な資質で、こういうリーダーは少なく、とても貴重です。

ここから佳境を迎えるプレミアリーグでも、ファン・ダイクは持ち前のキャプテンシーを存分に発揮するでしょう。しかも今シーズンは、恩師であるクロップの最後のシーズンです。カタール・ワールドカップのアルゼンチンが、メッシを優勝させたい一心で団結した時と同じような雰囲気を、いまのリバプールには感じます。とくにクロップとの付き合いが長いファン・ダイクは、特別な思いを抱いているはず。

限界説が囁かれはじめていた昨シーズンから一転、全盛期のパフォーマンスを取り戻せているのは、きっと偶然ではないでしょう。責任感の強い彼のことですから、誰よりもトレーニングに打ち込み、リーダーの責務を果たしているのだと思います。

診断者●木村好珠

【診断者プロフィール】
大学時代に『ミス日本』で準ミスに輝き、現在は『このみこころとからだクリニック』院長。精神科医、産業医、健康スポーツ医、タレントとしても活躍。大のサッカー好きで、マンチェスター・Cのファン。北海道コンサドーレ札幌やレアル・マドリー・ファウンデーションのアカデミー、愛媛FCなどでメンタルアドバイザーも務める。22年には『メンタル弱いままたのしく生きていく』を出版。X(@konomikimura)では精神科医およびサッカーファンの一人として呟き中。

※『ワールドサッカーダイジェスト』2024年4月18日号の記事を加筆・修正

© 日本スポーツ企画出版社