全国で広がる消防車の更新遅れ 半導体不足やメーカー不正重なり納期長期化

2024年度に更新する計画だった山口市消防本部のはしご車

 消防車が計画通りに更新できないケースが相次いでいる。半導体不足やメーカーの不正問題など複数の要因が絡み、納期が長期化したためとみられる。住民の安心安全な暮らしに欠かせない車両だけに、担当者は「更新まで現有車両を使わなければならない。念入りに点検整備し影響が出ないようにしたい」と口をそろえる。

 山口市消防本部は2024年度、消防車2台を更新する計画だった。しかし23年11月ごろ、発注に向けたやりとりの中で業者側から「納入は1年以上かかる。4月に発注しても年度内は難しい」との趣旨の回答があったという。

 同本部は大型消防車で配備から15年、はしご車で17年を使用期間の目安とする。24年度に更新予定だった大型ポンプ車は15年、はしご車は22年が経過したが、新車が納入されるまで使い続けるという。

 同様の事態は全国的に広がる。松江市消防本部は更新予定が22年度だったはしご車、23年度だった化学消防車とポンプ車の計3台の納入が24年度中にずれ込む。福山地区消防組合と広島市消防局でも、23年度に更新予定だった各1台の納入が間に合わなかった。

 消防車などを製造するモリタホールディングス(東京、大阪)によると、消防車は、トラックメーカーが造る車台に、発注者が求める装備を搭載して完成する。新型コロナウイルス禍を契機に、ロシアのウクライナ侵攻や半導体不足、日野自動車のエンジン不正問題などが重なり、20年ごろから車台がメーカーから入りにくくなったことが、納期が長引いている要因という。

 同社は「発注から長くても2年以内で納入している。昨年から改善しつつあるが、完全な収束がいつかは見通せない」とする。

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