ガザ停戦、イスラエルの新案をハマスが検討 アメリカは合意に期待

パレスチナ自治区ガザ地区での停戦と人質解放をめぐり、イスラム組織ハマスが29日、イスラエルの新たな提案について、仲介役のエジプト、カタールと協議した。アメリカは新提案を「非常に寛大」なものだと評価し、ハマスが受け入れることへの期待を示した。

新しい提案は、人質の解放と引き換えに、40日間の停戦と、避難しているガザ住民の北部への帰還を認める内容とされる。

また、恒久的な停戦というハマスの要求に応えるため、平穏の回復に関する新たな文言も含まれていると報じられている。

エジプト国営アルカヘラ・テレビによると、ハマス代表団は協議が開かれたカイロをすでに離れており、提案への回答書を持参して戻る予定という。

イスラエル政府に対しては、世界の友好国や人質の家族らから、合意への圧力が強まっている。

新たな提案の中身

協議の消息筋は、イスラエルの新提案はこれまでの提案と大きく違うとBBCに話した。

米ニュースサイト「アクシオス」は27日、イスラエル当局の話として、新提案にはガザ北部への住民帰還を認めると共に、ガザを分断し移動の自由を妨げている東西回廊からイスラエル軍が撤退する意向が含まれていると伝えた。

また、「合意実施の第2段階の一環として、持続可能な停戦の確立について話し合う」意思も含まれているとした。

イスラエルの当局や外交官は29日、人質解放の第1段階の人数を40人から33人に減らす用意があると、米紙ニューヨーク・タイムズと英紙フィナンシャル・タイムズに話した。

人質をめぐっては、まだ133人が拘束されているとイスラエルは主張している。うち少なくとも30人は死亡したとみられている。これら人質の解放と戦闘の一時停止の合意を形成しようと、エジプト、カタール、アメリカが数週間にわたって仲介に努めている。

ハマス側は「前向き」

ハマスはイスラエルの新提案について、公には検討しているとしか述べていない。だが、幹部の1人は29日、「イスラエルが新たに妨害しなければ、雰囲気は前向きだ」とAFP通信に述べた。

ハマス側はまた、「(提案の)内容に関するハマスの見解や問い合わせに、大きな問題点はない」と付け加えた。

ハマスは今月、パレスチナ人の囚人数百人の釈放と6週間の停戦と引き換えに、女性、子ども、高齢者、病気の人質ら40人の解放を求めたイスラエルの提案を拒否した。

ハマスはその際、イスラエル軍のガザからの完全撤退と、パレスチナ人避難民らの帰還につながる恒久停戦の要求は譲れないとした。

米国務長官らが期待感

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、ハマスとエジプト、カタールによる協議が進むなか、ハマスが新しい提案を受け入れることを期待すると述べた。

ブリンケン氏はまた、サウジアラビア・リヤドで開かれた世界経済フォーラム(WEF)の会合でも楽観的な見方を提示。「ハマスの目の前には、イスラエルによる非常に寛大な提案がある。ガザの人々と停戦の間にあるのは今、ハマスだけだ」と述べた。

そして、「ハマスは決断しなければならない。それも迅速に決断しなければならない。(中略)私はハマスが正しい決断をすると期待している」とした。

エジプトのサメ・シュクリ外相も、期待感を表明。「今回の提案は双方の立場を考慮したもので、適切な合意点を探っている」、「双方の決断に影響するだろう要素が含まれいるが、すべての人がこの機会を捉えて前向きに対応することを望んでいる」と述べた。

ラファの人道危機が悪化

ガザ情勢をめぐっては、アメリカのジョー・バイデン大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が28日に電話で協議した。人質解放と停戦の交渉が焦点になったとされる。

両首脳はまた、ガザへの支援増加を維持する必要性や、南部ラファへの本格攻撃へのアメリカの反対についても話し合ったとされる。ラファには100万人以上のガザ住民が避難している。

そのラファでは夜間、イスラエルによる空爆があり、現地の医療および救助関係者によると、民家3軒で少なくとも22人のパレスチナ人が殺害された。

イスラエル軍は即座にはコメントしていない。

ラファでは気温の上昇で生活環境がいっそう厳しくなっている。先週は40度に達し、国連によると、生後5カ月の赤ちゃんが猛暑のためにテントの中で死亡した。

ラファの子どもたちはBBCアラビア語のラジオ番組で、テントや仮設シェルターでの生活は耐えられないほどだと訴えた。サラ・アブ・アムルさん(11)は「テントに入っても、ものすごい暑さはどうにもならない。太陽の光線を直接浴びているみたいだ」と話した。

また、「電気がないので、扇風機を動かすことも、冷たい水でひどい暑さの影響を和らげることもできない。食べ物も水も、水分補給するためのものも何もない」とした。

ラファへの本格攻撃については、イスラエル軍の高官らが先週末、計画が最終決定されつつあると示唆した。

一方、ブリンケン長官は、「民間人が効果的に保護されると確信できる計画を(アメリカは)まだ見ていない」と述べた。

パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は28日、イスラエルのラファ攻撃を防ぐことができるのはアメリカだけだと話した。同議長は、ラファが攻撃されれば「パレスチナの人々の歴史で最大の惨事」が引き起こされると警告している。

イスラエルのイスラエル・カッツ外相は同日、人質解放の交渉が合意に至れば、イスラエル軍はラファでの「作戦を中断する」と述べた。

しかし、極右のベザレル・スモトリッチ財務相は、ラファ攻撃を中止しないようネタニヤフ氏に警告。ハマスの壊滅に失敗すれば「あなたが率いる政府は存在する権利を失う」とした。

イスラエルは、昨年10月7日のハマスによる南部への攻撃で約1200人が殺害され、253人が人質に取られたのを受け、ハマス壊滅を掲げてガザで軍事作戦を開始した。

ハマスが運営するガザ保健当局によると、それ以来、ガザでは3万4480人以上が殺害されている。

(英語記事 Gaza war: US 'hopeful' Hamas will accept Israel's new ceasefire offer

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