ゼレンスキー氏、武器供与を急ぐよう要求 「ロシアが遅滞につけ込んでいる」

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は29日、西側からの武器の供与が遅れており、ロシアがそれにつけ込んで攻勢に出ているとして、支援を急ぐよう求めた。

アメリカ政府は24日、610億ドル(約9兆6000億円)規模の対ウクライナ追加軍事支援予算を成立させた。

ゼレンスキー氏はこの日、支援の一部は届き始めているが、もっと急ぐ必要があると述べた。

この発言は、北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長とキーウで会談後の、共同記者会見で出た。

ゼレンスキー氏は、「私たちがパートナーから、とりわけアメリカから物資を待っている状況に、ロシア軍がつけ込もうとしている」と主張。

「それこそまさに、物資の迅速な供給が前線を安定させる理由だ」と述べた。

ゼレンスキー氏は特に、砲弾と防空システムが必要だと強調。「ウクライナのパートナーはそれらを保有している。ロシアのテロリストの野望を打ち砕くため、それらはウクライナで使われているべきだ」と訴えた。

そして、「ロシア軍はさらなる攻撃を準備している」と付け加えた。

NATOトップはまだ勝利できると

ストルテンベルグ氏は共同会見で、「何カ月間かウクライナは装備で劣勢にあり、弾薬を配給せざるを得なくなっている」と説明。武器が必要だとするウクライナの主張に同調した。

そして、アメリカの支援が半年遅れたことが「戦場に深刻な結果」をもたらしたとした。

ただ、武器が届けられればその流れは変わると楽観していると表明。「ウクライナの勝利はまだ遅過ぎではない」との見方も示した。

そのうえで、「私たちの友好国は、これまで以上に何ができるか検討しており、近いうちに新たな発表があるだろう。ウクライナの緊急のニーズに応えるため、私たちは懸命に努力している」と述べた。

ストルテンベルグ氏はまた、ウクライナが望んでいるNATO加盟はいつか実現すると強調した。一方で、7月に米ワシントンで開催されるNATO加盟国の首脳会議に正式招待される可能性は低いと付け加えた。

南西部や東部で爆撃

ウクライナでは29日、黒海に面した南西部の港湾都市オデーサでロシアのミサイル攻撃があった。

現地当局によると女性3人と男性1人の計4人が殺害され、32人が負傷した。負傷者には4歳と16歳の子どもや妊婦が含まれているという。地元で「ハリー・ポッターの城」と呼ばれていた建物も損壊した。

一方、ロシアは同日、ウクライナ東部での攻撃で、セメニウカ村を占拠したと発表した。2月に占拠したアウディイウカの北に位置する。ロシアは28日にも、近くのノヴォバフムティウカ村を掌握したとしていた。

ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は28日、ロシアの複数の攻撃を受けて前線の状況は悪化していると説明。東部ドネツク州で陣地から部隊を引き上げたと述べた。

(英語記事 Zelensky: Russia taking advantage of slow arms delivery

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