沖縄とロカビリーの現代史 運動会のBGMでも!? 5月18日、那覇にThe Biscats、MAD3がやってくる

沖縄のロカビリーシーンを説明する赤嶺真さん=4月2日、那覇市壺屋のnănnca okinawa

 「宮ビリー」という言葉をご存じだろうか。「宮古島」と「ロカビリー」を掛け合わせた造語だ。1990年代ごろから宮古島出身者を中心に沖縄でもロカビリーバンドが隆盛し、関東で活動していた宮古島出身のロカビリー好きな一団やそのシーンを示す名称として、いつしか定着していった。そんな沖縄に5月18日、日本を代表するロカビリーバンドである「The Biscats」や「MAD3」らがやってくる。イベントを主催するフィールグッドの赤嶺真さんに、沖縄とロカビリーの歩みについて聞いた。(文・写真=ライター・長濱良起)

一口メモ:ロカビリー音楽と沖縄
 ロカビリーは、ロックンロールとカントリー音楽などの要素が合わさって、1950年代に米国で誕生した音楽ジャンルとされる。代表的なミュージシャンにエルビス・プレスリーやエディ・コクランら。日本の先駆者の一人としては和製プレスリーと言われた尾藤イサオが挙げられる。沖縄では2000年代にThe Country HunchbacksやThe Beatle Crusher、RYUKYU FREE STYLEらが名を上げた。

宮古民謡とロカビリーの共通点?

 

 ー2000年前後に沖縄でロカビリー音楽シーンが非常に盛り上がった時期がありました。この背景にはどういったことがあったのでしょうか。

 「まず、東京・原宿にあった『CREAM SODA』というロック系のアパレルブランドと、その店員で結成されたバンド『BLACK CATS』が人気を博し、影響が濃かった1990年代ごろの時代背景があります。オシャレして行くようなお酒が飲める遊び場で、よくかかっていたのがロカビリーだったんです。ちょっと不良っぽいというか。そんな場所に当時の10代の男の子たちが憧れを持って、ロカビリー自体にもはまっていったという流れがあります」

 「有名なバンドがツアーで沖縄に来ることも少なかった1991年に、那覇にあったライブハウス・ケントスに、全国的に人気のあったバンド『クールス』が来たらしいんですよ。その音漏れを聴きに来ていた当時高校生のThe Beatle Crusherのボーカル・TAKUMIさんが卒業後にバンドを組み、その最初のライブをRYUKYU FREE STYLEのギターボーカル・ROMEOさんが見に来ていた、と。また、当時那覇にあったライブハウスClub D-Setの店長のTAROさんがThe Country Hunchbacksを組んでいて、とにかく勢いのある、ウッドベースをバチバチ弾くようなロカビリーのバンドがどんどん増えていきました」

 -宮古島では伝統的にロカビリーが盛んで、嘘か誠か「ウッドベース保有率全国一」と表現されることもあるようですが、なぜこんなにも盛んなのでしょうか?

 「一説にはですが、宮古民謡の中にはシャッフルビート(跳ねたリズム)の曲が多いからと言われています。シャッフルビートはロカビリーの基本的なリズムでもあるので、親和性が高かったのではないかとも言われています。小学校の運動会のBGMでロカビリーが流れていたそうです(笑)」

 「宮古島の人たちは、他の地域の人と比べて団結力が高いって言われますよね。その団結力が、ライブ活動をする時にも確実に生きたと思うんですよ。『ライブするから来てね』というと、友達がみんな来てくれる。バンドが頭角を現しやすいという素地はあったかと思います」

 -「宮ビリー」という言葉はどのように生まれていったのでしょうか?

 「1990年代前半に東京で生まれた言葉だと聞いています。宮古島出身で、サイコビリー(ロカビリーの派生)好きな集団を指した言葉らしいです。その中のお一人が、宮古島ロックフェスティバルの立ち上げに関わられたなど、今のシーンにもつながっています」

「目いっぱいオシャレしてツイストを!」

 

 -イベントを前にひと言お願いします!

  「沖縄の健康優良不良中年のみなさん。ぜひ目いっぱいオシャレして会場に来てツイストを踊ってほしいです。ばっちり髪もセットして。これがロカビリーですよね。もちろん、若い人たちにも来てもらって『40代50代、それ以上に年を重ねてもずっと何かを楽しめるんだ』ということを感じてもらいたいです。The Biscatsのボーカルの青野美沙稀さんは、(前述の)BLACK CATSの久米浩司さんの娘さんでもあるので、そういった面でもロカビリーの歴史を感じられるかと思います」

イベント「MAD3 SPECIAL ★ THE NIGHTS」のポスター

イベント情報
「MAD3 SPECIAL ★ THE NIGHTS」
5月18日(土)開場 18:00/開演 18:30
出演:MAD3/The Biscats/Ol' CATS(オープニングアクト)/Haruka delsole(バーレスクショー)/Rockin'港川人(DJ)YASUHEAD(DJ)
前売 :4000円(1ドリンク代別)
https://eplus.jp/sf/detail/4025750001-P0030001
問い合わせ:info@feelgood098.jp

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