日本酒がさらに美味しくなる!…知っておきたい〈日本酒ペアリング〉の基本ルールとは【専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本酒をもっと美味しく飲むために是非試したいのが、相性の良い料理と組み合わせる「ペアリング」。日本酒の味と香りによって分類できる「4つのタイプ」を知っておくことで、より好相性のペアリングに出会うことができます。葉石かおり氏・監修、近藤淳子氏・著『人生を豊かにしたい人のための日本酒』(マイナビ出版)より、日本酒の分類と、ペアリングのルールについて見ていきましょう。

4タイプに分類される、日本酒の「味」と「香り」

日本酒は味・香りによって4タイプに分類されます。

①フルーティタイプ(大吟醸酒・吟醸酒系・生酒)

(「東洋美人」「横山五十」「山丹正宗」など)

香りは華やか。リンゴ、イチゴ、メロンなどフレッシュな果実やバラ、キンモクセイ、ユリなどの花のような印象。味は甘くジューシーで、透明感があり果実感にあふれています。余韻は程よく長く、冷やして飲むと味わいの輪郭をくっきりと感じられます。

②軽快タイプ(本醸造酒・火入れ酒全般・生酒)

(「八海山」「久保田」「播州一献」など)

香りは穏やか。レモン、スダチ、グレープフルーツなどの柑橘系、ローズマリーやイタリアンパセリなどのハーブ系、竹や杉のような樹木系の香りをうっすらと感じられます。味わいは軽やかですっきり、キレも良い。余韻は短く、よく冷やして飲むと爽やかさが強調されます。

③旨口タイプ(純米酒・生酛・山廃酛)

(「龍力(たつりき)」「石鎚(いしづち)」「田酒(でんしゅ)」など)

香りは、米に由来する落ち着いたイメージで、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を思わせるような印象です。和三盆や水飴のような糖系や昆布のだし系の香りも。味は、米の旨味が凝縮されたふくよかさを感じさせます。余韻はやや長く、常温から熱燗まで幅広い温度帯を楽しめます。

④熟成タイプ(熟成期間をとった日本酒)

(「達磨正宗」「木戸泉」「神亀」など)

香りは、アーモンドやカシューナッツなどのナッツ系。ドライのレーズンやアンズ、紹興酒やシェリー酒のような酒系、カラメルソースやメープルシロップなどの糖系の香りも感じられます。

味は、甘味と旨味が幾重にも重なった熟成した奥深さが特徴です。円熟味のある存在感。余韻は長く、冷たく冷やしたり燗をつけたりと、様々な温度帯で熟成酒ならではの個性を発揮します。

4タイプの日本酒を同じ形状の透明グラスで、量、温度帯も同じにして飲み比べてみると、明らかな違いを実感できるはずです。味覚や嗅覚を鍛えて風味の違いがわかるようになると、様々な料理とのペアリングがしやすくなります。

基本のペアリングルールを押さえよう

ペアリングとは、料理と日本酒が口の中で合わさることにより、お互いの味のバランスが整うこと。それぞれ単体にはなかった一体感が生まれるので、味わいの魅力が一層引き立ちます。

ペアリングにおける基本ルールは、

①料理と酒の味の濃淡を合わせる

「濃淡」の「淡」は、「薄い色、薄い味や調味料を使った料理」で、例えば、オリーブオイル、米油、塩、だし醤油、白菜、きゅうり、白身魚、イカ、鶏肉(ささみ、胸肉)、豚肉(もも、ロース)、モッツァレラチーズ、カッテージチーズなどです。これには、「フルーティ、軽快」など軽やかなタイプが好相性です。

一方、「濃い色、濃い味の食材や調味料を使った料理」は、例えば、ゴマ油、ココナッツオイル、マヨネーズ、濃口醤油、かぼちゃ、れんこん、サバ、マグロ(中トロ、大トロ)、牛や豚のばら肉、クリームチーズ、ブルーチーズなどです。

これには、「旨口、熟成」などのしっかりとした味わいのお酒がよく合います。①を大前提として、以下の②③④⑤の細かいルールを合わせていくと、より様々なペアリングを実践できるようになります。

②香りの要素を合わせる

日本酒にリンゴのような香りがあれば、リンゴの要素を料理に組み入れるなど、日本酒と食材の香りを調和させるという手法です。

③製法を合わせる

発酵食品である日本酒に、みそ、醤油、チーズなどの発酵食品を合わせると、抜群の相性となります。また、オイスターソースやバルサミコ酢など、熟成した調味料は熟成酒とよく合います。

④テクスチャー(食感)を合わせる

にごり酒のようなとろみのある日本酒に合わせるには、片栗粉で粘性を出したり、くず粉でとろみを加えたりしても良いでしょう。生クリームやホワイトソースなども合う場合があります。

⑤温度帯を合わせる

日本酒のおいしさが引き立つ温度帯を探し、料理と合わせること。温かい日本酒には温かい料理。氷皿に盛りつけた冷たい刺身には、熱燗ではなく、よく冷えた日本酒がよく合います。揚げ物など油を多用したもの、脂質の多い肉類や魚には、日本酒を温めて合わせると良いでしょう。お燗は油や脂質を口の中でサッと洗い流してくれるので、舌がさっぱりとリセットされます。

日々、なんとなく日本酒を飲むだけではなく、様々な日本酒と食を意識して合わせて、ペアリングを楽しんでみませんか?

近藤 淳子
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション
副理事長、フリーアナウンサー

葉石 かおり
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション
理事長 酒ジャーナリスト、エッセイスト

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