楽天モバイル、通信品質調査で1位に…安くて高品質の「最強のキャリア」か

楽天モバイルの公式Xアカウントより

英調査会社Opensignalは最新版「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」を発表。大手キャリア4社のなかで総合で楽天モバイルが1位、NTTドコモが最下位となった。楽天モバイルといえば利用料は安いが通信品質がいまいちという評価が定着していたが、「安いうえに通信品質も良い」となれば、キャリアの乗り換えや新規加入を検討している人にとっては“最も魅力的なキャリア”ということになる。実際のところ楽天モバイルの通信品質はどうなのか。また、最優先で検討すべきキャリアになったといえるのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

今回の調査では以下の計16の項目について各キャリアの通信品質をポイント化(調査期間:2023年12月1日~24年2月28日)している。

●5G・4G・3G全体のエクスペリエンス
・動画
・ライブ動画
・ゲーム
・音声アプリ
・ダウンロード速度
・アップロード速度
●5Gのエクスペリエンス
・5G動画
・5Gライブ動画
・5Gゲーム
・5G音声アプリ
・5Gダウンロード速度
・5Gアップロード速度
●カバレッジ
・5Gカバレッジ・エクスペリエンス(体感的なモバイル・ネットワーク範囲)
・利用率(5G・4G・3G全体/ネットワーク接続時間の割合)
・5G利用率
●一貫性
・コンシステント・クオリティ(各種操作・動作を遅延等なく完了させられる度合い)

このうち、楽天モバイルは「5G・4G・3G全体のエクスペリエンス」では「ダウンロード速度」を除くすべて、さらに「5Gダウンロード速度」「5Gアップロード速度」の計7項目で1位を獲得。ソフトバンクも「動画」「5G動画」「5Gライブ動画」「5Gゲーム」「5G音声アプリ」「5G利用率」「コンシステント・クオリティ」の7項目で1位を獲得。単独1位の項目の数は楽天モバイルのほうが上回っているため総合1位となった。

「楽天モバイルの通話アプリというのは『Rakuten Link』のことだと思われるが、品質が良いという評判は聞いたことがなかったので意外。5Gについては楽天はOpen RAN技術に力を入れて他キャリアより先行しているので、その結果かもしれない」(大手キャリア関係者)

オープンな仕様に基づき複数の異なるベンダーのハードウェアから構成される無線ネットワークシステム「Open RAN」。今、IT分野でAI(人工知能)とともに最もホットなテーマの一つとされる。通信事業者をはじめとする企業が無線ネットワークを構築する際、複数の異なるベンダーのハードウェアを使うことによりフレキシブルにシステムを構築することができ、またロックインと呼ばれる単一の提供ベンダーによる囲い込みの問題を解消することでコスト削減につながるとされる。

ビジネス化で先行するのが楽天グループだ。傘下の楽天シンフォニーは2月、Open RAN対応の集約ユニット(CU)と分散ユニット(DU)ソフトウェアへの商用アクセスをサブスクリプション型で提供するサービス「リアルOpen RANライセンシングプログラム」の開始を発表した。

「Open RAN対応のCU・DUのすべてのコードベースが含まれており、世界中で数百万もの基地局を展開する上で不可欠なものとなります。これらのコードベースは、LTE eMTC、5G FWA(固定無線アクセス)、5G SA・NSA、5Gプライベート・ネットワークなど、4G・5Gネットワークにわたる幅広い技術をサポートするように設計されています」(同社の公式リリースより)

楽天シンフォニーのOpen RAN技術はすでに楽天モバイルで実用化されており、ドイツのキャリア、1&1にも採用されている。2月にはウクライナの大手通信事業者キーウスターが楽天シンフォニーの技術を導入すると発表されており、フィリピンの通信事業者ナウ・テレコムも楽天シンフォニーの5G Open RANの試験運用に関する覚書を締結するなど、海外展開を進めている。

一方、多くの項目で順位を落としたのがNTTドコモだ。ドコモは前回調査では「音声アプリ」「ダウンロード速度」「5Gダウンロード速度」「利用率」で1位だったが、今回の調査では他キャリアに負けている。ドコモをめぐっては昨年に入って「つながりにくい」「通信速度が遅い」といった声が続出。同社も基地局のトラフィックに対する容量設計の不足が原因であると認め、10月から全国2000カ所以上で対策を実施するに至っていた。

「総合的に見た場合の技術力の厚みという面では、やはりドコモが強い。それが消費者からの『ドコモは品質が良い』という信頼につながり、契約者獲得の武器になってきたが、その強みが崩れるとドコモは厳しくなる」(大手キャリア関係者)

楽天経済圏のヘビーユーザーなら“楽天モバイル一択”

大手キャリアとしては業界4位の楽天モバイル。楽天グループ(G)は2020年に子会社の楽天モバイルを通じて携帯電話事業のサービスを開始したが、同社の加入者を伸ばす原動力となったの割安な料金だ。どれだけ使っても月額で最大2980円(楽天回線エリアのみ/通話料等別)、さらに月間データ利用量が1GB以下なら基本料無料というプランを掲げ、翌21年には500万回線を突破したものの、昨年には1GB以下の0円プランを終了した影響で契約数が減少。昨年8月に500万件を超えたものの、それまでの1年ほどは400万件台が続いていた。

苦境が続くなか、昨年6月からは「Rakuten最強プラン」の提供を開始し、従来の料金体系を維持しつつ、auローミングの制限を撤廃。それまではデータ利用量については、KDDIのパートナー回線によるauローミングサービス利用時の高速通信は月間5GBに制限されており、制限を超えると通信速度が1Mbpsに制限されていたが、その制限を撤廃した。また、10月には楽天モバイルにとって念願だったプラチナバンドの割り当てが実現。12月にはMNOサービス(自社回線利用分)の契約数が600万件を突破したと発表した。

さらに契約者増の起爆剤として2月に打ち出したのが「最強家族プログラム」だ。家族で「Rakuten最強プラン」に加入すると、1回線あたり月額110円(税込、以下同)の割引が適用されるというもの。今月8日には契約数が650万回線(MNO回線数)を突破したことを発表。楽天Gの三木谷浩史会長は契約数の目標値を1200万件としており、24年中に800万回線を達成するとの見方を示している。

「楽天モバイルの料金は他社と比べて割安だといっていいが、それにプラスして楽天市場や楽天ペイ、楽天トラベルなど楽天系サービスを頻繁に使うユーザにとっては、楽天モバイルを契約すると楽天ポイントの還元率がアップするなど非常にメリットが大きい。今回のOpensignalの調査は利用体感に関するものなので、どこまで信憑性があるものなのかはわからないが、もし仮に通信品質が他キャリアと遜色ないレベル、もしくは上回るレベルに改善されているのであれば、契約先キャリアとしては最優先で検討すべき最強の存在ということになる。特に楽天経済圏のヘビーユーザーなら“楽天モバイル一択”となってくるだろう。

正直にいって、携帯電話業界で楽天モバイルが通年での黒字化を実現できると思っている向きはほとんどいないが、安いのに加えて品質も良いという評価がじわじわと広まれば、黒字化の目安とされる800万回線の達成も現実のものになってくる。ただ、利用者を食われる格好になる既存3社もなんらかの手を打ってくるだろうから、そう簡単にはいかないだろう」(大手キャリア関係者)

(文=Business Journal編集部)

© 株式会社サイゾー