「基地の町」の佐世保 タトゥー店多い? 客の半数が外国人 米文化が地域に影響 長崎

壁一面にタトゥーの下絵が並ぶ店内。客の半数は外国人という。彫師の佐世保さんは「米軍基地がある町だからこそ、米国文化を表に出した町になってもいいのでは」と期待する=佐世保市

 長崎県佐世保市中心部のアーケード周辺を歩いていると「TATTOO」と書かれた看板をよく目にする。米海軍佐世保基地の軍人とみられる外国人が、腕や足に大きな入れ墨(タトゥー)を入れている姿も。「佐世保はタトゥーの店が多い?」-。調べると、周辺ではここ5年ほどで店が増え、7店舗ほどあるという。背景の一つに、米軍基地がある地域特有の事情も垣間見えた。

 栄町にある「グラフィティタトゥー」。店に入ると、タトゥーの下絵が壁一面に並んでいた。「全部私が描いているんですよ」。オーナーで彫師の「佐世保彫和(させぼほりかず)」さんがはにかんだ。
 佐世保さんは25年ほど前に開店。当時はまだ1、2店ほどだったという。
 客の半数が外国人で、米海軍佐世保基地の軍人らや旅行客が多いという。米軍の艦船が寄港すると客も増加。沖縄の海兵隊員が、沖縄で入れたタトゥーを、佐世保に来て手直ししたこともあった。
 米軍人ら外国人の客に日本語が通じない場合は、英語を話せる彫師が対応したり、スマートフォンの翻訳アプリを使ったりして対応。人気は「洋彫り」と呼ばれる洋風の絵や文字などで、外国人の場合は、聖書の一文などが多いという。時折、和風の絵をあしらう「和彫り」の要望もあった。
 客の女性米軍人とのやりとりを見せてくれた。こけしのデザインを希望しており、佐世保さんが素案を描いて提案。メールでやりとりしながら、女性に再度意見を求めて加筆・修正していた。「お客さんの肌の色なども踏まえて、きれいに見えるように気を付けてデザインしている」
 佐世保さんは「米軍基地がある町だからこそ、米国文化を表に出した町になってもいいのでは」と期待する。一方で「タトゥーに悪い印象を持っている人もいる」と話す。彫師として「他人に不快な思いをさせないように、自分の行動にしっかりと責任を持って、入れてほしい」と語った。
 米軍基地は、地域の文化に影響を及ぼしているのか。相模女子大メディア情報学科の塚田修一准教授(文化社会学)は、外国人が町を歩いていても違和感がない環境など「基地がある故に、タトゥーショップが出店しやすい雰囲気があるのでは」と指摘する。基地の町と“不良文化”には結び付きがあるといい、同じく米海軍基地がある横須賀(神奈川)では、スカジャンが浸透。「異なる文化に寛容な地域の特性があるのでは」と分析した。

◎除去しても傷残る 長崎大学病院・樫山准教授

 ファッションとしても捉えられる入れ墨(タトゥー)。ただ、一度入れると完全に消すのは難しい。長崎大学病院形成外科の樫山和也准教授(46)は「除去する治療をしても必ず傷痕が残り、費用もかかる。入れるかどうかよく考えて決めたほうが良い」と話す。
 皮膚は、表皮とその下にある真皮(しんぴ)と皮下組織から成る。タトゥーは主に、真皮層に針を刺して色素を入れる。除去する選択肢には▽皮膚ごと切り取って縫う▽自分の皮膚を他の部位から移植する▽レーザー治療-の三つがある。タトゥーの色素の種類や深さによってはレーザー治療が反応しにくい場合があるという。
 治療は一度で終わらず、数週間の間隔を置いて複数回必要となることが多く、全て終えるまで長期間かかる。健康保険が使えないため、治療費は全額自己負担。金額は病院ごとに異なるという。「不安や相談がある人は、近くの形成外科に相談してほしい」と語った。

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