【色の名前クイズ】どっちが「鴇色(ときいろ)」?

日本には古くから伝わる色の名前があります。名前から想像できるものもあれば、予想外なものも。ここでは『増補改訂版 色の名前事典519』より、あまり聞きなれない色の名前を取り上げ、クイズにしました。今回は「鴇色(ときいろ)」。果たして、鴇色はどちらでしょうか?

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鴇色は【A】or【B】?

【A】
【B】

「鴇(とき)」は鳥の名前です。今ではなかなか見られない鳥ですが、どのような色だったのでしょうか?

いずれが鴇色なのか、次のページで、鴇色と、もう一色についても色名の由来を詳しく解説しています。

鴇色は【B】

日本の鴇(朱鷺)は国際保護鳥、特別天然記念物という特別扱いを受けたにもかかわらず、2003年に絶滅しました。ところがこの鳥は江戸時代までは、いたるところで見られるありふれた鳥だったそうです。

そこで、鴇が飛ぶ姿を当時はたいていの人が見知っていたよう。この色名は、鴇が飛ぶときに見える風切羽(かざきりばね)の薄いピンクからつけられたものといわれています。

古来の日本語の色名には、動物からとられたものがほとんどないのですが、江戸時代になると鳶(とび)や雀、鶯などの身近な鳥の羽からつけられた染色の色名が現れます。鴇色もその一つだったにちがいありません。身近に鴇はいなくなりましたが、この色は若向きの和装の染色には欠かせない色で、この色名も色に需要があるかぎり廃れることはないかもしれません。

鴇色は、日本産業規格(JIS)「物体色の色名」で定められた「慣用色名」269色のうちの1色です。

それでは【A】は何色?

【A】は梅染(うめぞめ)

梅の木による染め色で、赤みを帯びた薄茶色。梅の樹皮や枝、根を煮詰めて煎じた汁に、榛(はしばみ)の樹皮を煎じた汁を加えた、梅屋渋という汁により染められます。梅染は室町時代から行われており、加賀友禅のルーツに当たるといいます。

染めの回数で色が変化します。ざっと染めたものが梅染、二、三度染めた赤みのある茶は赤梅、さらに濃く染めた黒ずんだ茶の色は黒梅と呼び分けられます。染め色は木の部位で変わり、木質部では茶、皮ではピンク系、根ではきれいな色になります。梅汁の媒染剤に何を用いるかにより色は大きく変わります。木の年齢やそれぞれの木の個性、その日の天候などによってもさまざまな梅染色が生まれます。

梅の花びらでは布は染まりません。梅の木から、花のために用意された命の色をいただいた色が梅染です。

※この記事は『増補改訂版 色の名前事典519』(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。


監修者
一般財団法人 日本色彩研究所

日本で唯一の色彩に関する総合研究機関。1927年画家・故和田三造氏により日本標準色協会として創立。1945年財団法人日本色彩研究所として改組。1954年、世界に先駆けて「修正マンセル色票」の色票化研究に着手し、諸外国の研究機関に寄贈するなど、長年にわたり先端的な研究を続ける。諸省庁、自治体からの要請への対処、JISの制定や関連色票の作成等への参画、ガイドラインの提案などに携わる。

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