「CR Fortnite CAMP」協賛企業3社が語るeスポーツ市場の未来と人材育成【インタビュー】

「CR Fortnite CAMP」協賛企業3社が語るeスポーツ市場の未来と人材育成【インタビュー】

2024年3月23日~24日の2日間、eスポーツ関連事業を展開するGame & Co.とプロゲーミングチーム「Crazy Raccoon」は、eスポーツ教育イベント「CR Fortnite CAMP」を開催しました。

「CR Fortnite CAMP」は、Game & Co.が運営するeスポーツスクール「CR Gaming School」が主催する「プロゲーマー体験キャンプ」。Crazy Raccoon所属メンバーらによる直接指導や参加者同士の交流を通して、プレイスキルの向上だけでなくコミュニケーション能力の向上、eスポーツに関連する職業への認知を深めることなどを目的にしているといいます。

(本イベントの現地レポートおよび主催者インタビューは下記の記事をご覧ください。)

今回、e-Sports Business.jpでは本イベントの協賛企業3社にインタビューを実施。これからのeスポーツを支えていく若い世代をサポートする理由や、eスポーツの教育的意義について語っていただきました。

eスポーツは社会的能力も育む場に―未来ある人材への期待

ゲーミングモニターを中心とした周辺機器ブランド「Pixio」の国内販売を行うHamee株式会社からは、ゲーミングアクセサリー事業部の西澤瑛氏にお話を伺いました。

西澤瑛氏

――どのような事業を行っているのでしょうか。

西澤瑛氏(以下、西澤)Hameeでは、モバイルアクセサリーブランド「iFace(アイフェイス)」の生産販売をメインに、コスメや子供向けスマートフォンなど、幅広く製品を展開しています。

ゲーミングアクセサリー事業部では、米国のゲーミングデバイスブランド「Pixio」の国内販売を担っています。ゲーミングモニターがメインの製品ではあるのですが、最近はモニターアームやストリーミング用Webカメラなどの周辺機器も展開しており、ゆくゆくは総合的にゲーミング関連製品を手掛けていきたいと考えています。

私はそのゲーミングアクセサリー事業部でマーケティングを担当しているのですが、入社前はとあるeスポーツタイトルの日本リーグの運営に携わっていて、そのIPホルダーさんの日本におけるストア展開などもお手伝いしていました。

――Pixioといえば、価格がリーズナブルで、最近はカラー展開が豊富な印象があります。

西澤日本の事業部で企画し、米国の本社と相談しながら開発した製品もあります。他のブランドとは異なる個性を出して、潜在的な需要にアプローチしようというねらいがありました。

これまで黒い製品がほとんどだったゲーミングモニターの分野で、ユーザーの方が思い描いたデスク環境を実現できるブランドになれればと考えています。

ブラックの製品が多い中、Pixioはパステルカラーのゲーミングモニターやモニターアームを取り扱っているのがひとつの特徴(画像はプレスリリースより引用)

――「CR Fortnite CAMP」に協賛された経緯を教えてください。

西澤他のメーカーさんと比べてまだまだ知名度が足りないと感じていましたので、まずはファミリー層の方々に我々の個性的な製品を知っていただきたかったというのが大きな理由のひとつです。親御さん同士のつながりなどを通じて、波及していけばいいなと期待しています。

また、そういったビジネス的な側面以外の理由もあります。今日本では少子化が進んでいて、すでに人材の取り合いが生まれている中、10~20年先にゲーム市場に関わる方が増えてほしい。その種まきとして、少しでも協力できればと考えて協賛に至りました。

――イベントの1日目に現地を見学したと伺いました。どのように感じられましたか。

西澤参加者の皆さんがコーチの方に積極的に質問するなどとても熱心でしたし、参加者同士でチームを組んで取り組むようなプログラムもあり、社会的な能力を身に付ける場にもなっているんだということを実感しました。

私が子供のころは、誰かにしっかりとゲームを教えてもらうような環境はほとんどありませんでしたし、そういった機会がeスポーツ業界にきちんと用意されているのは素晴らしいですね。

――ご自身は以前からeスポーツ業界に関わっているとのことでしたが、ここ数年のeスポーツ市場の変化についてどのような印象をもっていますか。

西澤eスポーツの楽しみ方が多様化していると感じます。

例えば「スポーツが好き」といっても全てのスポーツが好きなわけではなくて、サッカーが好き、バスケットボールが好き、とさまざまな人がいます。また「サッカーが好き」といっても、Jリーグは見ないけど日本代表の試合は見るなど、楽しみ方はそれぞれです。そんな風に、「eスポーツ」も大きな枠組みとしてさまざまな楽しみ方を提供できるような文化になってきたのではないかと。

今はアジア競技大会などの国際的なイベントでも、eスポーツが注目を集めるようになっていますし、エンターテインメントとしての枠組みが広がるというのは素敵なことだと思っています。

また、eスポーツはオンラインの場があれば十分と思う方も多いのではないかと思うのですが、コロナ禍を経験して、やはりオンラインとオフラインの両方の場があることが大事だとひしひしと感じました。現場でしか感じられない盛り上がりもありますからね。

「CR Fortnite CAMP」のように、オフラインの場で初めて会う人と一緒にゲームができるという場を設けていただけるというのは、業界全体に対しての貢献にもなっていると思います。

――ありがとうございます。最後に、eスポーツ分野における今後の取り組みの展望をお聞かせください。

西澤「Pixio」ブランドとしては、ユーザーの方々が趣味でも仕事でもモチベーションが上がるような理想のデスク環境を目指していただけるよう、製品を提供していきたいです。

卓上充電ステーションなどの周辺機器も展開する(画像はプレスリリースより引用)

その中で、学生の方でも手に取りやすいリーズナブルな価格で提供し続けることで、ユーザーの方々により多くの選択肢を与えられるようなブランドになれるのではないかなと思っています。

引き続きさまざまなイベントに協賛させていただき、老若男女問わず楽しめるカルチャーとして、業界全体を盛り上げていきたいです。

クリエイターが語る人材育成の本質

「CR Fortnite CAMP」2日目終了後には、DetonatioN FocusMe 『フォートナイト』部門所属のぶゅりるさんがサプライズで登場。漫画家・イラストレーターのカナヘイ氏が生み出し、テレビ東京コミュニケーションズが展開する人気IP「カナヘイの小動物 ピスケ&うさぎ」の新たな取り組み『Piske & Usagi Hop Step Jump !』を参加者全員で体験しました。

『Piske & Usagi Hop Step Jump !』は、『フォートナイト』上でオリジナルのアスレチックゲームを制作することができる「Unreal Editor For Fortnite(以下、UEFN)」を活用して制作されたオリジナルマップ。そんな『Piske & Usagi Hop Step Jump !』を手掛けた合同会社PortalAgencyの西﨑友樹氏とメタバース・VR分野を中心に活動するクリエイター MISOSHITA氏にお話を伺いました。

MISOSHITA氏(左)、西﨑友樹氏(右)

――自己紹介をお願いします。

西﨑友樹氏(以下、西﨑)PortalAgencyのCEOを務めている西﨑友樹です。弊社は「面白ソリューションの提供」を事業内容とした広告代理店をしております。「面白い」というものを思慮深く考えながら、言語化しそれをもって課題解決をするのが特徴です。

MISOSHITA氏(以下、MISOSHITA)GLITCH RAVEのCEO、クリエイターのMISOSHITAと申します。イノベーティブなテクノロジーとカルチャーを掛け合わせたクリエイティブ、特に3DCGを活用したものを得意としています。

――今回、「CR Fortnite CAMP」に協賛・コラボレーションすることになった背景をお聞かせください。

西﨑UEFNでのオリジナルマップ企画を進める中で、以前からご縁のあったGame&Co.の久保さんが「CR Fortnite CAMP」に取り組んでいるということを知り、これは掛け合わせて何かできるな、と。また「カナヘイの小動物」の世界観と参加者の年齢層がマッチしており、コラボすることで“可愛らしい空間”が作れるというところにシナジーを感じ、協賛させていただきました。

オリジナルマップ『Piske & Usagi Hop Step Jump !』(画像はプレスリリースより引用)

――参加者が『フォートナイト』に取り組むようすを見て、どのように感じましたか。

西﨑まず、(『フォートナイト』内での)建築が速すぎます(笑)。

また、子供たちが楽しんでいる姿が、”ラブ・アンド・ピース”だなと。カナヘイさんの描く世界観と同じように幸せで平和な空間を見て、心がほっこりしました。

また、「CR Fortnite CAMP」の参加者の皆さんは「考えて遊んでいる」人たちが多いと思いました。UEFNでは、ユーザーがオリジナルマップを作り、遊ぶ場を提供する立場になりますが、まずはプレイヤーとしてよく考えながら遊ぶことで「どうすればプレイヤーが喜ぶのだろう」という視点をもつことができますし、それをクリエイティブに活かせる。そういった意味で親和性があると思います。

――オリジナルマップ『Piske & Usagi Hop Step Jump !』は、プレイヤーが「ピスケ」や「うさぎ」を操作してステージを進んでいく、という遊びが特徴的です。制作過程やこだわったポイントをお聞かせください。

西﨑まず、UEFN上でカナヘイさんの「ピスケ&うさぎ」の世界観をどのように表現するか、と考えたときに、鳥やうさぎがモチーフであるというところから「ジャンプする、跳ねる」という要素がポイントだと思っていました。それと同時に、現在人気を博しているゲームについて調査していたところ、ジャンプして進んでいく、というゲーム体験が人気な傾向があると感じていました。

そこで「ピスケ&うさぎを操作して、ジャンプして進んでいく」ゲームを作れば、人気傾向にもフィットしているし面白い体験が提供できるのでは、ということで本マップのコンセプトが固まっていきました。

MISOSHITAマップ制作においては、主にこだわったポイントが3つあります。まずはビジュアルです。UEFNの他のマップでは、パネルを組み合わせた無機質なデザインのアスレチックが多い中、「ピスケ&うさぎ」の有機的で可愛らしい、ワクワクするようなデザインを活かしたビジュアルを目指しました。

2つ目はレベルデザインの部分です。全部で10コースを用意しているのですが、それぞれ異なるギミックやビジュアルを制作し、飽きの来ない遊びを実現しています。

最後はゲームシステムについて。「ジャンプしながらゴールを目指す」ということを最大限楽しいものにするために、コインを集めることでレベルアップしてジャンプ力やスピードが上がるというシステムを取り入れました。レベルアップすることで、同じコースでもまったく違ったゲーム体験が味わえます。

――「CR Fortnite CAMP」のような「eスポーツ × 教育」のイベントに協賛することで、どのようなことを実現したいと考えているのでしょうか。

西﨑プロ選手だけでなく、たとえばクリエイターやインフルエンサー、開発者、ゲーム系の広告代理店など、さまざま職業の選択肢もあるんだということを、未来ある若者たちに伝えられればいいなとも考えています。

そういった意味では、バトルロイヤルモードをプレイするだけでなくさまざまな関わり方ができる『フォートナイト』はシナジーがあって良いプラットフォームだと思いますね。

――ゲーム業界やクリエイティブ業界での若い人材の育成について、おふたりはどのように考えていますか。

西﨑「業界の規模感=人材の層の厚さ」だと思っているので、若い人材がどんどん増えることは喜ばしいですが、それと同時に若い才能が恐ろしいとも感じます。インターネットでたくさんの情報に触れて成長できる環境の中で、10代や20代前半でも驚くほど才能を持ったクリエイターが生まれています。ライバルとして脅威に感じますが、味方としてうまくやっていきたいなと。

MISOSHITAたとえば『フォートナイト』『Roblox』といったプラットフォームやプログラミング教材など、現在は子供たちがクリエイティブ活動を楽しめる環境がありますし、上の世代の人たちがわざわざ教えなくても、「遊ぶ」と「創る」がシームレスに繋がっているような時代です。

大人がカルチャーの本質を理解していないまま創作しているようなことがある一方で、むしろ子供が創ったものの方が深く刺さる、ということも起きていくでしょう。カルチャーへの理解に技術力が追いついたとき、若い人材の力は爆発するんだろうな、と期待しています。

――ありがとうございます。最後に、今後ゲームやeスポーツの領域でチャレンジしていきたいことを教えてください。

MISOSHITA私はゲームと音楽のコラボレーションで、エンタメの幅を広げたいと思っています。たとえば現実世界で活動するアーティストがバーチャル空間でライブをしたり、バーチャルアーティストとコラボレーションするような、日本発の新しいコンテンツを生み出していきたいですね。

西﨑具体的なことはまだ定まっていないのですが、異文化の掛け算に取り組んでいきたいです。たとえば「eスポーツ × 〇〇」のような取り組みは現在も一定数あるとは思いますが、それをいかに面白く見せるか。掛け算によって、新たな“コンテンツ”を生み出していきたいです。

また、がっつりとした競技というよりはバラエティ寄りのユーモラスなものをeスポーツを活用して創っていけたらと思っています。

保護者にとってのeスポーツ、ファンにとってのeスポーツ

インタビュー3社目は、ゲーミング家具ブランド「Bauhutte(バウヒュッテ)」を展開するビーズ株式会社。「Bauhutte」のブランドマネージャーを務める森川翔太氏、同ブランド広報の荒木菜々氏に保護者、eスポーツファンそれぞれの視点からお話を伺いました。

森川翔太氏
荒木菜々氏

――Bauhutteはどのようなブランドなのでしょうか。

森川翔太氏(以下、森川)Bauhutteは、「デスク秘密基地化計画」というスローガンのもと、「ゲーマーにとって超快適な空間を提案する」ブランドです。「ゲーミングチェアだけ」のように1ジャンルに特化するメーカーが多い中、ゲームに関わる家具や、ゲーマーのためのアパレルをトータルで提案するというのが弊ブランドの特長です。

――ゲーミング着る毛布「ダメ着」は有名ですよね。

森川ゲーミングPCの熱暴走を防ぐという目的から、ゲーマーの中には冬場に暖房を使わない人も多いという調査結果があり、自分の身体だけを温めながらゲームができる防寒着があれば使ってもらえるのではないか、というところから開発しました。

Bauhutteのゲーミング着る毛布「ダメ着」(画像は公式サイトより引用)

――今回、「CR Fortnite CAMP」に協賛された経緯を教えてください。

森川昨年の東京ゲームショウで、Game & Co.さんとお話しした際に本イベントについて紹介していただき、興味をもったことがきっかけです。多くの親御さんはゲームの悪い影響ばかりを意識してしまうことが多いと思います。しかし、私の娘もよくゲームをプレイしているのですが、ゲームをきっかけに人とのつながりが生まれたり、教育的効果があったりという側面にも期待できるのではないかと考えています。

そんな中、しっかりと教えてくれる人がいて、ゲームをもっと楽しんでもらえる、そしてゲームに対するネガティブな印象を払拭して積極的に参加する人が増えるような環境を作るというのはとても良いことだと感じ、協賛させていただきました。

――父親としての視点も理由のひとつなのですね。

森川私自身もゲーマーで、ゲームをすることで得られることも非常に多いと思っています。例えば、娘は4~5歳くらいからゲームをするようになりましたが、ゲームを通じて文字を覚えるのも早かったと思います。何かに自主的に取り組む中で、文字を読まなければならない場面があれば、その文字や意味を読み取るために考えたり、大人に聞いたりするため、自ずと読めるようになるのではないかと考えます。また「今日こんなゲームで遊んでいてこんなことがあったんだよ」とコミュニケーションのきっかけになったりもします。

本イベントの現地には行けなかったのですが、当日は親御さんも見学されていたと聞きました。親御さんは「eスポーツとは何ぞや」「eスポーツを仕事にできるのか」と不安になるものでしょう。しかし、それがどういうものなのかを実際に見学することで、将来子供が「eスポーツの道に進みたい」と言ったときに「あの時見た、ああいう活動をするんだ」と理解できるようになると思います。

Bauhutteとしても、ゲームを快適にプレイすることの楽しさを提案していますので、本イベントには親和性を感じました。

Bauhutteとしては初めての協賛となりましたが、子供たちが実際にeスポーツに取り組む際に我々の製品を活用していただけることを期待しています。

――eスポーツに関わる人の中でも大部分を占める若い世代へのアプローチについて、どのように考えていますか。

森川Bauhutteユーザーの年齢分布はやはりゲーマーの年齢分布と非常に類似しており、30代前半までの若者がコアユーザーです。しかし、この数年で新たに出てきたZ世代と呼ばれる層やもっと若い世代については、まだまだブランド認知が足りないと感じています。

若い世代にはこれまでと違った方法でアプローチする必要があると感じています。こういったイベントに協賛することで、ブランドにポジティブなイメージをもっていただくような流れでアプローチしていければいいなと考えています。

「デスク秘密基地化計画」というスローガンを掲げ、チェアやデスク、ラックなどを総合的に提供している(画像は公式サイトより引用)

――近年のeスポーツ市場の変化について、どのように捉えていますか。

荒木菜々氏eスポーツが「プレイするだけのもの」ではなく、「みんなで観戦するもの」に変化しているのではないかと捉えています。また、特定のチームを応援するだけでなく、チームの中でも特にお気に入りの選手がいるユーザーも増えた印象を受けます。

私も個人的に応援している選手がいて、その選手が出場している大会も観戦するのですが、普段のSNSや雑談配信といった、競技以外の部分を見に行く頻度の方が高いように思います。このように、競技以外の部分を好む、ひとことで表すと選手を「アイドル視」するようなファンも、最近は多く見受けられる印象です。

また、「eスポーツ」という言葉が普及したことによって、これまでネガティブな印象が強かったゲームに対する見方も変わってきているようにも思います。単に「ゲーム」という言葉では実現し難いように思われていた地域の活性化や教育、福祉の分野でも活用しやすくなったのではないかなと。

――ありがとうございます。最後に、eスポーツ分野における今後の取り組みの展望をお聞かせください。

森川Bauhutteのターゲットは、eスポーツプレイヤーやファンを含む幅広いゲーマーの方々です。引き続き「ゲーマーにとって超快適な空間」を突き詰めていき、ゲームを楽しむ方々を増やしていく。そうすれば結果として、eスポーツの競技シーンやイベントの盛り上がりにも寄与することができると考えています。

また、イベントのようすを写真で拝見しましたが、参加者の皆さんがとても楽しんでいる半面、まだまだ「eスポーツが大人のものである」という印象を持ちました。ゲームプレイに使用する機材や机等は大人に合わせて作られているものが多く、子供も快適にプレイできる環境作りはまだまだ不足しているな、と。「CR Fortnite CAMP」のようなイベントが、大人も子供も楽しめる環境作りのきっかけになればいいなと思います。

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