米国など西側諸国の「過剰生産能力論」が再浮上した理由

米国など西側諸国の「過剰生産能力論」が再浮上した理由

4月24日、中国の新エネルギー車(NEV)メーカーの生産ラインで働く従業員。(鄭州=新華社記者/李嘉南)

 【新華社北京5月1日】米国など西側諸国はこのところ、「中国の過剰な生産能力が世界市場に打撃を与える」との主張を続けている。いわゆる「中国の過剰生産能力論」は新しい概念ではない。古い常とう句が再浮上した背後にはどのような深い動機があるのだろうか。

 ▽中国の新エネルギー産業発展を抑制する意図

 中国に「過剰生産能力」が生じているという非難は、世界の新エネ産業市場の需要と将来の発展可能性を無視しており、経済学の原則と国際貿易の基本ルールにも反し、明らかに誤った主張である。

 歴史的にも、米国など西側諸国が中国の「過剰生産能力」について一連のレトリックを展開するのは今回が初めてではない。香港中文大学(深圳)全球・当代中国高等研究院の鄭永年(てい・えいねん)院長によると、20年以上前に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した後、中国が輸出する良質で安価な製品は、ある種の意図を持つ一部の人々から脅威と見なされていた。また「一帯一路」構想の提唱から十年余りの間に中国の提供する公共財やサービスを中傷する西側の声が途絶えたことはない。鄭氏は、中国の「過剰生産能力」は本質的に、形を変えた「中国衝撃論」「中国脅威論」であり、経済・貿易問題を政治や安全保障、イデオロギーの問題にする動きの再来に過ぎないという。

 「過剰生産能力」は中国を標的にした新たなナラティブのわなということになる。常とう句の背後には、中国の産業発展を抑え付ける意図が潜んでおり、あからさまな経済的脅迫、横暴ないじめでしかない。

 ▽覇権を維持するための一貫したやり方

 米国などの国々で経済の金融化と産業空洞化が深刻化するにつれ、製造業における比較優位が低下し、これらの国々は後発国の技術の進歩や産業発展を抑え付けることで、世界の分業体制における自国の独占的地位を守ろうとし始めた。

 歴史を振り返ると、米国が自国産業の利益に損害を与えたと見なした国をさまざまな方法で批判し抑圧するのは、根深いゼロサム思考と自国第一主義の覇権の論理を反映している。中国国家発展改革委員会マクロ経済研究院の金瑞庭(きん・ずいてい)研究員は、日本の繊維、自動車、半導体産業などの影響力が増大した1900年代半ば以降、米国は覇権を守るために反ダンピング関税を発動し、輸出制限と輸入拡大を迫るなどの手段で日本の関連産業に系統的な打撃を与えたとの考えを示した。

 米国は現在、同様の手口を使い、自国の覇権が脅かされる焦りを保護貿易主義によって軽減しようとしている。しかし、他国に損害を与え、自国の利益も損なうようなやり方は、米国が抱える問題の解決にはつながらず、世界のクリーンエネルギー産業チェーンの発展にも悪影響を及ぼす。

 ▽大統領選の年の特殊な需要

 今年は米国大統領選挙の年であり、バイデン政権はしきりに「中国の過剰生産能力」を世界的な話題に仕立てている。選挙前に労働組合の票固めを図る思惑がある可能性も否定できない。

 米通商代表部(USTR)は米国の労働組合が提出した申請に応じ、海事、物流および造船分野における中国のいわゆる「不公平で非市場的な政策と慣行」に対する通商法第301条に基づく調査を開始すると発表したが、選挙の年の政治的な雰囲気を考えれば、自国産業の問題を中国のせいにするやり方に意外性はない。

 北京大学中国経済研究センターの姚洋(よう・よう)主任は「米国政府は自国の貿易政策を『労働者中心』と称し、『中国の過剰生産能力論』をつくり出して対中貿易の調査を開始している。最近の動きからは経済的な懸念というより、特定の有権者層の機嫌を取り、歓心を買う姿勢が強くうかがえる」と述べた。

 ▽中国は揺るぎなく改革開放を推進し続けるべきだ

 米国など西側諸国から根拠のない非難を受けても中国は揺るぎなく、断固として改革開放を推進しなければならないと多くの専門家が指摘する。

 中国は現在、世界最大で最も整備され、最も競争力のあるクリーンエネルギー産業チェーンを構築し、世界の産業チェーンとサプライチェーンの安定を強力に支え、世界の供給を充実させ、世界的なインフレ圧力を緩和している。

 中国マクロ経済研究院対外経済研究所・新興経済体研究室の李大偉(り・だいい)主任は、新エネ車(NEV)、リチウムイオン電池、太陽光発電製品の「新三様」(新たな定番3品目)に代表される中国の良質な製品は、世界各国で増加するグリーン(環境配慮型)消費の需要を満たすだけでなく、人々の生活条件を向上させ、グリーンエネルギー発展やグリーン投資に重要な中間部品を提供することで産業のグリーン転換を促進していると説明した。

 「過剰生産能力論」によって中国製造業の構造転換や高度化を止めることはできない。「新三様」をはじめとする中国の新エネ製品は間違いなく、世界で低炭素のより良い生活を支える重要な役割を果たす。

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