今、存在しない家電はクラファンで「応援購入」すると、かなり割り引かれるかも(多賀一晃/生活家電.com)

私が応援購入したモノ(「Makuake」から)

【家電のことはオイラに聞いて!】#47

家電のマーケティングは多くの場合、自社の製品を購入してくれたユーザーの不満点をつぶす手法を取ります。メーカーの数も多いため、市場シェアを失わない方法を取るわけです。メーカーの新製品に新味がないのはこれが原因です。

家電だけでなく、モノは不具合を感じた人が知恵を駆使してそれを解決する形で、歩みを進めてきました。「必要」は発明の母。一番重要なのは「必要」であり、「不満」ではありません。

ただ、「不満」もうまく育てると「必要」に育ちます。特徴ある新製品は、そんな時に生まれます。ですが、この「必要」は当事者以外にはなかなか理解されません。

ダイソンが掃除機のサイクロンシステムを生み出した時、さまざまなメーカーに「使いませんか」と声をかけましたが、答えは「ノー」。結局、ダイソンは、自分で会社をつくり、サイクロンシステムを搭載した掃除機を生産・販売して一世を風靡しました。ダイソンの「必要」はユーザーにとっても「必要」だったわけです。

このように「不満」と「必要」は見分けにくい。メーカーの若手にアイデア出しをさせると、「不満」がたくさん出ます。中には「必要」もありますが、メーカーの都合もあり、全部採用はできません。だからといって若手が会社を飛び出して、「必要」を世に出すのは極めて難しい。営業が一緒にいないと売り先までたどり着けないからです。

さらに今は少量多品種時代。社会が熟成すればするほど、人は自分に合ったものを望むようになります。特に眼鏡や時計など身に着けるものはその傾向があります。しかし、大量生産を原則とする工業製品からいうと家電で同じことをするのはかなり難しい。

このような状況で注目されているのがクラウドファンディング(クラファン)です。不特定多数の人が、インターネットなどを通じて、他の人々や会社、各種団体に資金提供などを行う仕組みですが、モノの場合、多くは「応援購入」で資金提供を行います。例えば、Aという自分のアイデアを入れた商品案をクラファンに出展し、1000万円の資金が集まれば、その商品を作ると提案するのです。資金は応援購入という形で募ります。応援購入はケース・バイ・ケースですが、かなり割り引かれます。成功すれば、資金と初回生産量が確保できて、ビジネスを始められるわけです。クラファンサイトでは「CAMPFIRE」「Makuake」「Kibidango」などが有名です。

今や、ベンチャー企業だけでなく、大手メーカーも隙間商品の競争力を探る上でクラファンをよく利用します。サイトには量販店では見たこともない商品があふれかえっていて、なかなか面白い。

あくまでも挑戦レベルの作りのため、実物を見た時に「しまった」と思うこともありますが、これも勉強代と思って気にはしていません。その分、イメージ通りのモノが送られてきた時はとてもうれしいのです。

私が今、応援しているのは電子レンジ用のツール。ワクワクしながら待っています。

(多賀一晃/生活家電.com主宰)

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