急激な円安進行に政府日銀は“異次元の対策”を 「外国為替資金特別会計」活用《今でしょ》の声

今でしょ!(C)日刊ゲンダイ

先の大戦でも新型コロナ対策でも指摘する声が出ていた「戦力の逐次投入による失敗」は日本の“お家芸”とはいえ、今回もまた同じ展開になるのではないか。34年ぶりに一時、1ドル=160円台まで急落した円相場のことだ。

急激な円安進行を受け、政府・日銀は4月29日の外国為替市場で、5兆円規模の「円買い・ドル売り」の為替介入を実施したとみられ、1ドル=154円台まで円が買い戻される場面があったものの、5月1日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=157円73~75銭(午前9時時点)と再び「円安・ドル高」水準となった。

日米の金利差は依然として大きく、政府、日銀が「異次元の対策」を打ち出さない限り、この状況は変わらないのは誰が見ても分かるだろう。そうした中、SNS上で《今こそ使う時》《いつ使うの?今でしょ》といった声が出ているのが「外国為替資金特別会計」(外為特会)の活用だ。

外為特会は外国為替相場の安定(為替相場の急激な変動の際の為替介入など)のために設けられているもの。

財務省のホームページによると、「歳入と歳出の差額である毎年度の利益(決算上剰余金)は、一部を外国為替資金特別会計の運用資金である外国為替資金に組み入れ、残りを一般会計や翌年度の外国為替資金特別会計の歳入に繰り入れています」「外国為替資金特別会計が保有する外貨資産は安全性及び流動性に最大限留意した運用を行うこととし、この制約の範囲内で可能な限り収益性を追求するもの」とある。

■まさに今が「市場に急激かつ過度な変動が生じた場合」ではないのか

急激な円安で含み益も膨らんでいるといい、国会会議録などを見ると、2023年3月末の外為特会貸借対照表の内部留保額は約28.8兆円で、うち、為替評価差益が約19.5兆円。同月末の外為特会の資産残高は約169.7兆円で、1ドル=230円台だった約40年前の1983年3月末(残高は約13.8兆円)と比べて約156兆円も増えている。

財務省はこの財源の一部を防衛費などにも支出する考えを示していた上、そもそも「外国為替相場の安定」のために設けられているのだから、今こそ活用するべきだろう。2024年3月末の外貨準備高は1兆2906億600万ドルで、2月末と比べて91億2200万ドルも増加しているのだ。

2023年12月5日の参院外交防衛委員会で外為特会の財源化が議論された際、財務省大臣官房参事官は「財源確保のために外貨を円に替えるのは、実質的に外貨売り、円買いの為替介入そのものになります。為替介入は、G7などでの国際的な合意におきまして、過度な変動や無秩序な動きへの対応のために行われることとされておりまして、財源確保のために外貨準備を取り崩すことは適当ではないと考えております」と言い、こう続けていた。

「市場に急激かつ過度な変動が生じた場合に自国通貨を買い支えるために十分な額の外貨資産を保有しておくことは重要」

まさに今が「市場に急激かつ過度な変動が生じた場合」ではないのか。小出しの逐次投入はやめて、ドーンと異次元レベルで活用してはどうか。

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