”地上の太陽”レーザー核融合発電とは? 30億年使える希望の光【現場から、】

新たなエネルギーの形として近年注目が集まるのが「レーザー核融合発電」です。二酸化炭素を排出せず、燃料はほぼ無尽蔵と言われる夢のエネルギー。実用化に向けた第一歩が浜松市の研究施設で始まっています。

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美しく輝く緑色のレーザーはエネルギー問題を抱える日本にとっては希望の光です。

浜松市中央区の施設では、スタートアップ企業「エクスフュージョン」がレーザー核融合発電に向けた基礎的な技術の研究を進めています。

<エクスフュージョン 我妻一博さん>
「レーザー核融合というのは、レーザーで太陽、小型の太陽を作り出すというようなものになります」

そもそも核融合発電とは、原子核同士を融合させる際に出る膨大なエネルギーを利用するもので、この化学反応は太陽と同じ原理。そのため、核融合炉は「地上の太陽」とも呼ばれています。

<エクスフュージョン 我妻一博さん>
「このピカピカピカっていうとこですね、ここに燃料が投入されますと、ここで核融合反応が起きます」

この方式では、炉の中に撃ち出した燃料の重水素に複数のレーザーを当て急激に収縮させます。そこに別のレーザーで点火し核融合反応を起こすのです。

<寺坂元貴記者>
「核融合発電が期待される理由は、その燃料にあります。なんと海水の中に無尽蔵に含まれているというんです」

海水に含まれる重水素を核融合の燃料として活用すると、計算上、使い切るまでには30億年かかると言われています。
4月29日、イタリアで開かれたG7の会合で、2035年までに石炭火力発電を廃止することが合意されました。エネルギーに乏しい日本は、別の道を探る必要に迫られています。

<エクスフュージョン 我妻一博さん>
「誇らしい言い方をするのであれば、いま我々がやっている仕事の技術というのは、30億年使える、それの礎を作っていくということになります」

この施設で検証が進められているのは、核融合を実際に起こすことではなく、燃料にレーザーを連続して確実に当てることです。

実用化に向けては、数ミクロンのターゲットに複数のレーザーを1秒間に10回当てることが求められます。実現すれば世界初の技術。こちらの会社では、大阪大学の中にある本社と連携して研究を続けています。

大阪の本社では燃料を打ち出す装置などを、浜松ではレーザーの制御を中心に研究しています。浜松に研究拠点を置いたのは、光産業が発展していることに加え、チャレンジ精神にあふれる土地柄に惹かれたからだといいます。

<エクスフュージョン 松尾一輝CEO>
「浜松市、静岡県というのは、いわゆるこれまで日本の産業を支えてきたような自動車会社とか、そういったものをやっぱり生んできたっていう長い歴史の中でやらまいか精神みたいなことがある地域だという風に認識していて」

浜松の地でレーザー核融合発電は、確かな一歩を踏み出しています。

<寺坂元貴記者>
「核」というワードがあるので原子力発電と核融合発電は近いモノなのか?と思われるかもしれませんが、この2つは全く違う原理で動いています。
レーザー核融合発電はレーザーを照射することで毎回エネルギーを生み出すので制御が可能です。一方、原発で用いられている核分裂反応は、一度動き始めると反応が連鎖するため制御が難しいという側面があります。制御できず暴走した原発は大事故につながるリスクが高く、核融合の方が安全だと考えられています。

夢のエネルギーと言われる核融合発電ですが、多くの課題を抱えています。
一番は技術の確立です。核融合反応は30年以上前から理論は確立されていましたが、なかなか技術が追いつかず「永遠の30年」とも揶揄されていました。いまも実現への道のりは遠いというのが事実です。

次は実現までのコストです。技術の確立まで莫大な投資が必要ですし、核融合炉の建設のコストは数千億円から数兆円かかるという見立てもあります。
3つ目は低レベル放射性廃棄物です。核融合発電でも、今の原発に比べると量は少なく管理する期間は短いのですが、放射性廃棄物は出ます。

どんな発電でもメリットとデメリットはありますが、燃料の確保のしやすさや環境への配慮を考慮すると核融合発電の開発を急ぐ必要があると言えます。

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