【5月2日付社説】石川町長逮捕/立場利用した不正許し難い

 公平性、透明性を担保しなければならない入札で、町長の立場を利用して不正を働いていたならば断じて許されない。

 石川町の塩田金次郎町長が町発注の道路改良工事の入札で、事前に予定価格を業者に漏らしたなどとして、県警に官製談合防止法違反などの疑いで逮捕された。県警は、工事を落札した同町の土木会社の元役員2人も公契約関係競売入札妨害の疑いで逮捕した。

 県警によると、入札は2022年9月に行われ、土木会社は1262万4千円の予定価格にかなり近い価格で入札し、落札した。

 予定価格は入札当日に塩田容疑者が決裁したが、約1カ月前に設定された設計金額も把握していた。予定価格と設計金額は同額だったという。県警には、元役員との間で金銭や物品の授受、他の入札でも情報漏えいがなかったかなど、事件の全容解明が求められる。

 県内の現職首長の逮捕は、21年2月に当時の会津美里町長が町発注の工事を巡り、業者側に最低制限価格を事前に漏らすなどしたとして、官製談合防止法違反などの疑いで逮捕されて以来だ。

 塩田容疑者は自身と同じ立場の首長が逮捕されてからわずか1年半後、同様の不正に手を染めていたことになる。選挙で町政を託された首長が自ら町民の信頼を裏切る行為を行っていたとすれば、首長としての責任感や緊張感の欠如が甚だしい。即刻辞職すべきだ。

 塩田容疑者は1987年から町議を2期、95年から県議を4期務め、2018年の町長選で初当選した。長年の政治活動で、自身が携わった公共事業は少なくないだろう。当然ながら、政治家は一部の業者の利権のために働いてはならないが、塩田容疑者には業者との関係などで一部の町民から疑いの目が向けられていたという。

 一般に落札率が95%以上は談合が強く疑われるとされている。今回の道路改良工事の落札率は98.6%と極めて高い。町民の声や高い落札率を踏まえ、町議会は問題や不正がないか、確認できたはずだ。入札制度の問題点の有無、議会の監視機能が十分に働いていたかなど検証が求められる。

 石川町では1991年に当時の町長が公職選挙法違反の疑いで書類送検され、93年に辞職、有罪判決が確定した。この町長は2006年にも町職員の採用を巡る贈収賄事件で逮捕されている。

 再び町トップが逮捕される事態となり、町民の行政への信頼は失墜した。町職員や議員は、組織や制度などの不備や問題点を洗い出し、改めなければならない。

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