日系ブラジル人 歴史迫る 現地で取材 証言集め継承へ 茨城・つくばの尾曽さん動画制作

ブラジルに住む日系人(左)にインタビューする尾曽菜穂子さん(本人提供)

日系ブラジル人の歩みと現在の姿を知ってもらおうと、茨城県内在住の女性がドキュメンタリー動画を制作している。3月に現地に渡って取材し、写真や資料を交えながら日系人の証言を記録、動画共有サイトで発信を始めた。「彼らの経験を歴史として継承したい」と話している。

動画制作に取り組んでいるのは同県つくば市在住の尾曽菜穂子さん(24)。大学卒業後の2022年、ブラジル日本交流協会の研修プログラムを利用し、同国南東部の小さな町ピラール・ド・スールで日本語学校講師として働いた。現地では、流ちょうではない自身のポルトガル語を認め、留学生の自分を受け入れてくれた「日常を共に過ごし、笑い合える」温かさに、心地よさを覚えたという。

日本でブラジルの文化や慣習を学ぶ機会が少ないと感じていた。帰国後の23年に動画制作を決意。今年3月、日系人10人に取材する目標を掲げて単身ブラジルへ渡航したところ、協力者が次々と現れ、取材対象者は35人に拡大。中には、移住してから誰にも話していない経験を打ち明ける人もいたという。

「ブラジルの日系人の歴史と今の記録」と題した動画では、日系1~2世を中心にこれまでの人生を振り返ってもらい、移住の理由やブラジルでの生活についてインタビュー。それぞれの談話から、日本人のブラジル移住の歴史をひもとくキーワード「コチア青年移民」「花嫁移民」などを抽出し、尾曽さんが解説を加えた。

動画は月1回、ユーチューブチャンネルで公開される。各回15分程度で全15回を予定。すでに公開が始まっており、初回は戦後ブラジルに渡った福島県出身の夫婦について、2人の出会いや移住の理由を紹介している。

国際協力機構(JICA)などによると、日本人のブラジルへの集団移住は1908年に始まり、農工業の労働に従事。その後も移民は続き、現在は子孫を含め日系人約280万人が同国で暮らす。

日系人の記録について、尾曽さんは「放っておいたら知らずに消えてしまう。彼らの経験を歴史として継承したい」と意義を強調。ブラジル人のポジティブな考えに助けられた自身の経験や日系人の生き方を動画で共有することで、日本で暮らす若者たちに「悩みやつらさから抜け出すヒントを見つけてほしい」と願う。

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