かつて青春時代に非行に走った少女が…今年で40周年『不良少女とよばれて』を振り返る

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『不良少女とよばれて』は、1984年4月からTBS系列にて放送された大映ドラマである。舞楽者である原笙子さんの自伝的小説をベースに作られたドラマであり、非行に走った少女が多くの人との出会いやサポートによって立ち直っていく物語だ。

本作の主演を務めたのは、今では俳優や研究者としても活躍するいとうまい子(当時は伊藤麻衣子)さんだ。現在ではほんわかした癒し系キャラクターとしても有名だが、このドラマにおいてはそのイメージを覆すような演技をしており、それも本作の大きな見どころとなっていた。

今回は、今年40周年を迎えた『不良少女とよばれて』のドラマを振り返ってみたい。

■オープニングから迫力満点! MIEさんが歌う「NEVER」も有名

『不良少女とよばれて』は、まずオープニングがすごい。テーマ曲が流れたと同時に舞人が登場し「この物語は『不良少女とよばれて』の原作者で、現在民間舞楽会で活躍されている原笙子さんが、かつて青春時代に非行に走り、そして立ち直った貴重な体験をドラマ化したものである」というシリアスなナレーションが入る。

そして主演のいとうさんが凄まじいメイクでチェーンを振りかざして登場し、棒を持って襲い掛かってくる男たちをなぎ倒していくのだ。

舞楽の踊りをちょくちょく挟みながら、オープニングで男たちと格闘するいとうさん演じる主役の笙子は、男性に負けず相手をどんどん倒していく。

思えば80年代のドラマは時代劇でも女性がかんざしなどを使って男性を軽々とやっつけており、当時子どものころの筆者は相手が男でも本気で喧嘩すれば勝てると思い込んでいた。大人になってマネをしなくて本当によかった……。

そして、『不良少女とよばれて』のオープニングに流れる主題歌は、元ピンク・レディーのMIEさんが歌う「NEVER」だ。サビのフレーズは、一度聴いたら頭から離れないメロディーとして、当時大ヒットした。

■いとうさんの熱演が魅力、ヤンキーメイクも見逃せない

『不良少女とよばれて』は、非行を重ね不良のレッテルを張られた主人公の笙子が徐々に舞楽に目覚め、恋人や仲間とともに更生していく物語だ。恋人との三角関係や、不良少女同士の因縁なども見逃せないストーリーになっている。

本作での笙子は、総勢300人もの不良グループを仕切る不良少女であり、いとうさんが扮したヤンキーメイクが印象的だった。今ではあまり見ることのない紫色のアイシャドウにチーク、黒っぽい口紅は、当時流行っていた悪役女子プロレスラーを彷彿とさせる。またアフロヘアに近い派手なソバージュも、当時の不良少女の代表的なヘアスタイルだ。

そしてストーリーは、各回ごとに内容が大きく展開する。第一話では“相模悪竜会会長 曽我笙子”として暴れまくる笙子だが、第二話では悪竜会を抜け、すっかり清楚な少女として登場している。

しかしその後は少年院で波乱の生活を送り、再び手の付けられない不良になって登場したりと、とにかく主人公の環境変化が慌ただしい。それでもいとうさんはときにドスの聞いた声で不良少女として喧嘩をしたり、更生後は健気な少女としてラーメン屋さんで働いたりと、シーンごとにがらりと表情を変え、見事な演技を見せていた。

■伊藤かずえさんをはじめとした80年代の不良が大活躍!

『不良少女とよばれて』は、タイトル通り80年代に暗躍した暴走族や不良グループが登場する。

第一話ではノーヘルの暴走族集団が登場し、敵対するグループの男たちを鎖でバイクから引きずり下ろしたり木刀で殴るなど、やりたい放題だ。今では絶対にやってはいけない暴力行為だが、当時はこういうグループがカッコいいという雰囲気も少なからずあったような気もする……。

そして本作では笙子のライバルとなる謎の美女・モナリザを伊藤かずえさん、笙子グループと対立する東京流星会会長・西村朝男役を松村雄基さんが演じている。

伊藤さんと松村さんといえば、80年代の大映ドラマを支えてきた名俳優であり、当時の不良役において右に出るものはいなかった。本作でも松村さんは鋭い目つきで笙子と駆け引きをおこない、流星会の会長として存在感を放っている。

また伊藤さんが演じるモナリザも、少年院メンバーのなかで特別な美しさを放ち、笙子とはまた違う独特の雰囲気を持っていた。

このほかにも本作には、昭和時代を代表するイケメンの国広富之さんや、あまりにもカワイイ若かりし頃の岡田奈々さんなど、そうそうたるメンバーが登場している。すごんだ目つきで「あたいを舐めんなよ」など、クセの強いセリフが登場するのも魅力だ。

『不良少女とよばれて』のストーリーは、少女が大男を倒したり、更生したと思った翌日にはさらにひどい不良になったりと、今、見返してみるとかなりツッコミどころが多い。

しかし設定がコロコロ変わったり、不良少女が複数の男を倒したりするのは、大映ドラマの醍醐味と言えよう。本作は今でもレンタル作品などで視聴できるので、ぜひ機会があれば楽しんでほしい。

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