県が3月に公表した、新たに農業を始めた人の数「新規就農者数」の推移です。
2008年から増加傾向にあるのが分かります。
ただ、雇用就農、つまり、農業法人などに雇われた人が半数以上を占める年がほとんどで
自ら経営を行う農家は依然として少ない状況です。
そして、合わせて2万8947の県内の農家と農業法人のうち
およそ7割は後継者を決められていません。
若い世代の主体的な農業の担い手の確保が喫緊の課題と言えます。
先月、男鹿市で就農した20代の夫婦を通して、
秋田で農業を行うことの魅力や課題を考えます。
寒風山のすそ野に広がる、男鹿市北部の五里合地区。
五里合地区とその周辺では江戸時代からナシの栽培が盛んに行われてきました。
山あいの寒暖差がナシをぐっと甘くするといいます。
ここ五里合地区の農園で先月、新たにナシ作りをはじめた夫婦がいます。
ちょっとワイルドな軽トラックの“オープンカー”に乗ってやってきたのは
宮城県出身の高橋一成さんと兵庫県出身の妻、真由さんです。
この日、2人が行ったのはナシの花を摘み取る作業です。
高橋一成さん
「これがナシの花になります」
「赤いつぶつぶ、に花粉が入っていて、この今花を集める作業では
最終的にはこの赤いつぶつぶから花粉を取り出すのが目的になりまして」
「得られた花粉を花の中心部にある、めしべですね、
めしべの先端に花粉がつくと中に入っていって」
「膨らんでいるところですね。ここが膨らみはじめてえーとどんどんナシがおっきくなってくると。」
農業を始めたばかりの2人ですが、すでにナシの知識は豊富です。
2人は県立大の学生だったころ、所属していた竿燈会で出会いました。
それぞれが親元を離れて秋田で暮らすうちに、農産物のおいしさに触れ
農家になることを決めました。
3月まで県の農業研修制度を利用して技術や経営のノウハウを学んだ2人。研修期間に恋愛も“実を結び”入籍した上で、農家としての一歩を踏み出しました。
慣れない土地に移り住んで農業を始めた2人にとって、研修で学んだ知識と経験が大きな支えになっています。
真由さん
「試験場の人とも、知り合いになってるんで、いろいろすぐ聞けちゃうから
あんまりこう、勉強不足だなと思うより、先にまず、聞いてるって感じです。」
記者
「サポートあるから農業楽しい?」
一成さん
「楽しくって言うか、不安は解消できてるんじゃないかなっていうか、
うん、やっぱ助けてくれる人のおかげですよ」
この日は2人が初めて行う作業もありました。花粉を集める作業です。
指導しているのはこの農園の前の持ち主渡部啓一さん。
ナシ作り50年以上、経験豊富なベテランです。
渡部さんは親身に相談に乗って2人を後押ししています。
高齢になったことなどを理由にナシ作りを続けることが難しくなった渡部さん。長年守ってきた農園を継いでくれる人をずっと探していました。
男鹿市やJAの紹介を通じて2人と出会い、農園を託すことを決めました。
2人にあり・なしで答える質問をしました。
高橋一成さん
「先祖代々受け継いだ農地とか、ないところからスタートだったんですよね。」
「だからやっぱりまず農地を、どうやってこう見つけていこうかっていうところに
すごく苦戦しまして」
「渡部さんが引退するタイミングだったところもありまして、
すごくそこは自分だけじゃどうしようもできないので、
やっぱりすごく難しい」
続いての質問
真由さん
「不安は、探せばいろいろ出て来るんですけど、
助けを借りながら、いろいろなんとかなるかなって今は思ってます。なので、なしです。」
「芽が出たり、花が咲いたり、今からですけど、実がなったりするのが、それを見るっていうのがまず楽しいとこです。」
実りの秋を迎えるまでに、災害や病気からナシを守る、
気の抜けない日々が続きます。
2人の初めての収穫は9月の予定です。
秋田県によりますと、新たに農業を始めた人が3年以内に辞めてしまう割合は
全体の3割余りに上っています。
入り口を作るだけではなく、若い農家を支える仕組みや、
制度を整えることも大切だと考えられます。
ABS news every.5月1日放送