まちなかの “買い物弱者” …マイカー送迎で支え合う “お互いさま” が楽しい!“新庄くらし応援団”  富山

まちなかで生活しているのに買い物が不便…、都市部でも、いわゆる “買い物弱者” の問題が深刻です。近くにスーパーがなかったり、最寄りの商店まで歩くのもひと苦労だったりという人がいます。ボランティアによる送迎も広がりつつありますが、支える側が高齢化していく問題もあります。支える側と支えられる側の “お互いさま”の気持ちをどこまで共有できるかが“カギ”といえそうです。

富山市に住む川島邦和さん(74)は月に1度、買い物支援のボランティアに出ています。この日の利用者は2人、まずは同じ校下に住む一人暮らしの西田紘子さん(80代)の自宅に向かいます。

1週間分の食料品や日用品をまとめて買い求めるため、荷物を運べる自家用の軽自動車を使います。

週1回利用している西田紘子さん(80代):「昭和32年(1957年)に免許を取ってからずっと運転していたけど、めまいが頻発するようになって運転することが心配になったんです。去年5月に運転免許を返納したら、やっぱり買い物にいくのがすごく不便になって…。民生委員の人に相談したらこういうの(買い物支援ボランティア)があるよって紹介されて、頼むようになりました」

西田さんが後部座席に乗ると、もう1人の利用者、中島淳子さん(80代)の自宅に向かいました。

中島さんは一人で車に乗り込むことが難しいため、川島さんの介助で後部座席に腰をおろしました。

3人が向かったのは大阪屋ショップ新庄店、歩いて行ける道のりですが、80代の女性が買い物の帰りに荷物を持って歩くのは簡単ではありません。

やがて店舗に到着。入り口付近のスペースに駐車すると、西田さんと中島さん、それぞれショッピングカートを引いて店内に入っていきました。

高齢者のひきこもり、寝たきりを防ぎたい…

川島さんは、1年前から富山市新庄校下地区の「新庄くらし応援団」の買い物支援ボランティアに参加しています。

買い物支援にかかるのはほぼ1時間。ボランティアは無報酬で、自家用車を出し、ガソリン代も自己負担ですが、やりがいを感じているといいます。

買い物支援ボランティア 川島邦和さん:「私も後期高齢者に近い年齢ですが、ありがとうって言ってもらえるのが何よりうれしいし、やりがいを感じています。利用者のみなさんが不安にならないよう、自家用車にはボランティアであることを示すマグネット式ステッカーをつけて安全運転に努めています」

65歳以上の4人に1人が “買い物弱者”に…

農林水産省によりますと、最寄りの店舗まで500メートル以上かつ自動車利用の困難な65歳以上を「食料品アクセス困難人口」と定義しています。この定義では、2020年時点の推計は全国で904万3000人にのぼり、65歳以上の人口の25.6%、高齢者の4人に1人が買い物に不便を感じているとみられます。

一方、富山市新庄地区の人口は約1万2000人、このうち65歳以上は約3200人です。単純に農林水産省のデータをあてはめると、新庄地区では約800人が買い物に不便を感じているといえそうです。

さらに、買い物支援が必要と思われる一人暮らしの高齢者は91人で、新庄地区の65歳以上の2.8パーセントにあたります。富山市全体の6.3パーセントに比べると半分以下ですが、住民一人ひとりにとっては日々の暮らしにかかわる深刻な問題です。

新庄くらし応援団会長 廣田憲彦さん:「きっかけとして地区内3500世帯にアンケートしたんです。日常の困りごとについては『買い物が不便』『買い物の代行サービスが欲しい』という回答が多かったんです。ほかにも『除雪の支援』や『災害時の支援や相談』に関することなどもありました。そこで、まずは毎日の生活の中の困りごとをなんとかしなければとの思いで、みんなで話し合って始めたんです」

買い物支援のスタートにあたって、担い手となるボランティアを募集しました。ただ、ボランティアは全くの無報酬であること、ガソリン代の負担、運転技量の心配、万が一の事故の対応などの不安はあったといいます。

スタートして4年がたちますが、これまでにトラブルは報告されていないということです。

現在は校下内4つのブロック合わせて16人がボランティアのメンバーとなっていて、利用者7~8人を持ち回りで担当します。ほぼ月に1度、担当することになります。

新庄地区自治振興会会長 菱田浩一さん:「まちなかは交通の便がいい、暮らすにも便利と思われがちですが、決してそうではありません。最寄りのスーパーまで200メートル以上あると、足腰の弱い高齢者によっては買い物の荷物を持って歩くことが、大変な負担になるんです」

ボランティアも高齢化、次世代にどう引き継ぐか…

買い物を終えて帰路の車内。川島さんも含め3人が近況を話し合うなど、おしゃべりを楽しむひとときとなります。買い物を支援するだけでなく、高齢者のひきこもり、寝たきりを防ぐためのコミュニケーションの一環としての狙いもあるのです。

新庄くらし応援団は、潜在的なニーズはあるとみて、ほかにも買い物で困っている人がいないか、民生委員や町内会長を通じて周知に努めています。

新庄くらし応援団 廣田憲彦さん:「買い物支援をボランティアでやってきた人たちも、やがては支援を受ける側になります。そうした住民同士の支え合いが今後も続いていくよう、次の世代に引き継ぐ役割があると思っています」

週1回利用している西田紘子さん(80代):「近くのコンビニにも行くけど、いろんな種類の中から商品を選びたいんです。キュウリでも3本なら3本、いろんな産地があったり、地元産もあったり…。毎日の献立を考えながら食材を選ぶこと、そのものが楽しいし、(買い物支援が)ありがたいと思っています」

商品を見て、場合によっては手に取って買い物を楽しむ…。そうした喜びをもたらし、移動中の会話も気分転換になるのが住民同士の買い物支援ボランティアです。

新庄校下のボランティアも60~70代が中心。近い将来に支える側が支えられる側になる可能性が十分にあります。

今後も増えると予想される “買い物弱者” とその支援…、支援する側のボランティアをどう発掘するか、今後の課題といえそうです。

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