難しい「チーム強化」、短縮された「準備期間」、アジア杯「弊害」【パリ五輪出場サッカーU23日本代表の「大問題」】(2)

サッカーU-23日本代表はパリへと乗り込むが、準備のための時間はあまりない。撮影/中地拓也

サッカーU-23日本代表が、8大会連続となるオリンピック出場を決めた。U-23アジアカップ準々決勝でイラクに勝利してパリ行きの切符を手にしたのだが、喜んでばかりはいられない。開幕まで3か月を切っている本大会をにらみつつ、サッカージャーナリスト後藤健生が、山積する問題をズバリ指摘する。

■U-23アジアカップ新設で「最終予選」激変

2012年のロンドン大会までオリンピック・アジア最終予選は、ワールドカップ予選と同じくホーム&アウェーの2回戦総当たり制で行われており、U-23アジアカップという大会が新設されてアジア予選を兼ねるようになったのは、2016年からのことだった。

たとえば、最終予選形式として行われた最後の大会、2012年ロンドン・オリンピック最終予選を見ると、初戦は2011年の9月に行われ、日本は佐賀県鳥栖市でマレーシアと対戦しており、最終戦は3月に東京・国立競技場でのバーレーンとの試合だった。最終予選で、日本(関塚隆監督)は5勝1敗という圧倒的な成績でオリンピック出場権を獲得している(唯一の敗戦はシリアとのアウェー戦)。

ホーム&アウェー方式では、集中開催の大会と違って試合ごとに選手を入れ替えて、テストを繰り返しながら強化できる。

また、アジアカップが予選を兼ねることになってからの最大の難しさは、「準々決勝で敗れたらオリンピック出場への道が完全に閉ざされてしまう」というレギュレーションだ。

グループリーグの3試合でどんなに内容の良い試合をしていても、あるいは準々決勝でゲームを支配していたとしても、たった一発の不運な失点(あるいは不運なVAR判定)で予選敗退となってしまうことがありうるのだ。

そういう意味で、アジアカップ形式になったことで、予選勝ち抜きとチーム強化の難しさは増している。

■日本が決勝に進出したのは「2回だけ」

もちろん、現在のように海外組が多くなると、ホーム&アウェー方式では試合のたびに海外クラブとの交渉を行わなければならず、煩雑さは増すだろうが、その分、多くの海外組をテストすることはできるかもしれない。

U-23アジアカップは2014年に新設され、その後2年に1度開かれており、オリンピック・イヤーの大会が予選を兼ねることになっている(2020年大会までの大会名は「U-23アジア選手権」)。

日本がこれまで決勝に進出したことは、優勝した2016年大会のたった1度しかなかった。というのは、日本はオリンピック予選を兼ねない年のU-23アジアカップには、次期オリンピック代表であるU-21代表、つまり他国より年齢の低い代表を派遣しているからだ。

また、2020年大会はオリンピック予選を兼ねた大会だったが、日本は開催国としてすでに出場権を与えられていたので、よりモチベーションの高い中東勢相手に1分2敗のグループ最下位に終わっている。

つまり、日本が「オリンピック予選」としてのモチベーションを持ってU-23アジアカップを戦ったのは2016年大会に続いで今回が2度目のことであり、日本は今回もオリンピック出場権を勝ち取ったうえに、決勝進出を果たすことに成功した。

■ゼロコロナ政策で「準備期間がなくなった」

ところで、U-23アジアカップはこれまですべての大会が1月に開催されていた。つまり、オリンピック出場権を獲得してから、本大会までの間には6か月ほどの準備期間があったのだ。

ところが、今年のU-23アジアカップは4月から5月にかけて開催され、日本が出場権を獲得したのは4月29日のことだった。つまり、U-23日本代表にとって本大会までの準備期間は3か月もないのだ。

カタール大会も当初は例年通り、2024年1月に予定されていた。

ところが、2023年6月に中国で予定されていたアジアカップの開催を、中国側がいわゆる「ゼロコロナ政策」のために返上し、その代替開催地としてカタールが選ばれたのだ。だが、カタールでは6月開催は不可能。そこで、アジアカップが2024年1月から2月にかけて行われることになり、同じカタールで開催されるU-23アジアカップは4月に延期されたのだった。

本来なら、U-23アジアカップは開催国を変更してでも、1月か2月に開催してほしかったが。

こうして、予選突破を決めた大岩監督にとって、本大会までの準備期間はほとんどなくなってしまったのだ。

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