地元「観光名所になるかも」 輪島・国道249号の迂回路 宮崎の「鬼の洗濯板」のよう

隆起した岩の上に開通した国道249号の迂回路=輪島市野田町

 2日、能登半島地震で通行止めとなっていた輪島市野田町の国道249号で迂(う)回路(かいろ)が開通し、待ちわびた多くの住民が車を走らせた。かつて海の底だった岩礁は、宮崎市の名所「鬼の洗濯板」のようにも見える。「復興したあかつきには、道路そのものが観光名所になるかもしれない」。地元では、こんな期待の声も聞かれた。(奥能登支社次長・安田哲朗)

 「この道は間違いなく復興の一歩目や」。同市名舟町区長の古酒谷政幸さん(76)は、迂回路を通って市役所へ向かった。所要時間は従来の3分の1に短縮され、交通利便性は大幅に改善された。

 「御陣乗太鼓」で有名な名舟町に住む人は、現在、地震前の1割の10人程度。だが、この日の開通前には、迂回路近くの名舟漁港に約50人が集まった。その中に、金沢市へ避難していた輪島塗職人麻窪光温(みつはる)さん(56)の姿があった。

 5月中に、近くの仮設住宅へ入居する麻窪さんは「輪島市街地の工房に地元から通える。全然違う」と開通を歓迎。1本の道が、住民を地元へ戻す呼び水となった。

 国土交通省能登復興事務所職員の先導で迂回路を進み、隆起した海岸に降りた。そこに広がる景色を見て、宮崎市にある「鬼の洗濯板」を思い出した。「能登半島は長い時間をかけて隆起と沈下を繰り返して今の形になった」と職員。そう考えれば、この岩礁も雄大な自然の一つだ。

 国道249号は生活に欠かせない「命の道」であると同時に、奥能登の名所を結ぶ「奥能登観光の黄金ルート」でもある。宿泊施設の代表を務める珠洲商工会議所の刀祢秀一会頭は言った。

 「まるでジオパーク。国道が全て開通したら、新たな観光の魅力になりそうだ」。今は住民や業者しか通れないが、たくさんの車が行き来する光景が目に浮かんだ。

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