頭痛するほど超絶クサいが、嗅げたらラッキー?  別名「死体花」 インドネシア産・激レア巨大植物

とにかくクサい、でも、とにかくレア! 世界には珍奇な植物がいっぱい!

世界最大の花で毒々しい色合いと激臭を放つ「ラフレシア」や花弁が透明に見える「サンカヨウ」など、世界には珍しい植物が数々存在します。インドネシアおよび、その西部に位置するスマトラ島が原産地の植物「ショクダイオオコンニャク」も珍奇植物の一つ。「死体花」や「おばけこんにゃく」などといった、なんとも気味の悪い異名を持つ植物です。「フラワーパークかごしま」(鹿児島県指宿市)の栽培管理課技師で実際にショクダイオオコンニャクを育てている大島さんに、どんな植物なのか聞いてみました。

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【写真】例えるなら「これら」が腐ったニオイ……だそうです

ショクダイオオコンニャクは漢字で「燭台大蒟蒻」と書き、花がロウソクを載せる台「燭台」に見えることから名付けられました。小さく育っても1メートル、大きなものだと3メートルにまで成長する巨大植物です。ラフレシアは花単体として世界最大なのに対し、ショクダイオオコンニャクは花序(花の集合体)として世界最大なのだとか。ちなみに、同園で栽培している株では2010年8月2日に開花した243センチメートルが最大記録です。

大きさもさることながら開花した際に放つ強烈な匂いも特徴で、死体花と別名される由来です。

「魚と肉が腐ったような、頭痛がするくらい強烈なにおいです。当園で開花した際には、温室から200メートル離れた園の入り口までにおいが届きました」(大島さん)

そこまで強烈な匂いなのに、展示していて大丈夫なのでしょうか? 大島さんは「ショクダイオオコンニャクは基本的に7~10年に1度、しかも2日間という短い期間しか咲かないと言われています。ものすごくクサいんですが、むしろ匂いを体験できるのはめちゃくちゃレア」と力説。

「国立科学博物館筑波実験植物園では隔年で開花を成功させているので、栽培の環境次第で変わるものだと考えられます。当園では2003年から栽培をスタートし2008年に2株、2010年に1株が開花した記録があります」大島さんは言います。実はショクダイオオコンニャクは「IUCN(国際自然保護連合)」の発表するレッドデータブックで特に絶滅の危機が高いとされる「EN(絶滅危惧IB類)」に指定。それほど希少な植物がゆえ、国内での栽培例も数えるほどしかありません。もちろん育成方法の情報も少なく、開花させるのは至難の業なのだとか。

大島さんいわく「栽培例が少ない要因としては、まず葉が2メートル以上まで成長するため、天井の高い温室が必須となることが挙げられます。また、病気や線虫に弱く休眠に入ったらその都度新しい土で植え替えを行う必要があります」とのこと。さらに大きさの関係で、鉢や用土(植物を育てるための土)を合わせると重さはなんと1トン近くになるのだとか。数人がかりで作業を行う必要があり、植え替えた後はその場から動かすことができないという難しさもあります。同園でも「用土の配合を変えてみる」「暗渠(あんきょ)と呼ばれる側面に穴の空いた管を鉢に挿して通気性を確保する」「冬場の最低気温が13度を下回らないよう温室内で管理する」……など、さまざまな工夫を凝らしながら栽培しているそう。

人の手をかけて開花させるのは大変に難しい植物ということが分かりましたが、生まれ故郷であるスマトラ島やインドネシアでは育ちやすいのでしょうか? 大島さんに聞いてみると、「原産地であっても、花が咲くまで大きくなる個体は一握りであると考えるのが自然でしょう」という回答が返ってきました。

「当園で種をまいた際、まいた8粒すべてが発芽したため、実を結ぶまで到達すれば発芽率はかなり高いと推測されます。さらに、受粉に成功すれば700個以上の実がなるため、おおよそ1000粒程度の種子ができる計算になります。そうなると自然界でもっとショクダイオオコンニャクの数が多くてもおかしくありませんが、実際はそうではありません」と大島さんは説明。つまり、小さな芽から花が咲くまで無事に成長する個体が極めて少ないと推測できるということ。激烈な「臭気」も自然界での個体数の少なさゆえ、獲得した生存戦略であると考えられているのだとか。

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同園では2株のショクダイオオコンニャクが育っており(2024年4月時点)、偶然にも入れ替わりで休眠に入るためほぼ1年を通しどちらかの株の葉を見ることができるそう。ですが、その開花の瞬間は誰も予測できません。

(取材・文=つちだ四郎)

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