「きったねえ!」コンビニの雑誌「立ち読み」で指なめ、"ペロリストおじさん"を器物損壊に問えるのか

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

サンダル履きの高齢男性は、コンビニの雑誌・書籍コーナーから漫画誌を手にすると、指を舌で「ペロ」っとなめてから読み始めた——。

会社員のK太郎さんは、早朝のコンビニでこのような光景を目にして、「気持ち悪い」と鳥肌を立てました。

このように雑誌のページをめくるだけでなく、指をなめてお札を数えたり、書類を仕分けたりするような行為や人は、「ペロリスト」や「指ペロ」などと呼ばれています

高齢になって指の水分が失われたり、乾燥する季節になると、ページがめくりにくくなるため、手近な「水分」を付加するため指をなめるようです。

ただ、他の人に不快感を与えますし、衛生面でも問題があると言えるでしょう。

特に新型コロナの流行時期には、お札をなめて支払いをする人に注意するため、小売店などで「指ペロ禁止」を掲げる店もありました。雑誌の「指ペロ」には法的な問題はないのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。

●【弁護士の見解】あまりに汚損がひどければ弁償の可能性も

——コンビニの雑誌を「指ペロ」した客を罪に問えるのでしょうか

なめた指でページをめくる行為については、器物損壊罪(刑法261条)の成立を検討することになります。

過去の裁判例では、鍋や徳利(とっくり)に放尿する行為について、器物損壊罪の成立が認められています。

「損壊」には、物質的に物を壊す場合のほか、「事実上または感情上そのものを本来の目的に供することができない状態にさせる場合」が含まれるとされているからです。

ただし、指をなめてページをめくる程度では「損壊」にはあたらないと思われます。

——これが常習的に繰り返されるようであればどうでしょうか。

たとえば、指をなめてページをめくる行為をやめるように再三注意をしているにもかかわらず、繰り返すような場合には、威力業務妨害罪(刑法233条)に該当する可能性があると思われます。

ですが、「本」に対する損壊行為を認めるのは困難なので、器物損壊罪が成立すると考えることはできないでしょう。

——店は弁償(買い取り)を求めることはできるのでしょうか。

たとえば、手に着色するような物を食べたあとすぐに、何度も指をなめてページをめくるような場合など、本の汚損がひどくなって、商品として販売できない状態にしてしまったときには、民事上の責任が発生して、店側が弁償を求めることができる可能性は否定できません。

【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。
事務所名:NTS総合弁護士法人札幌事務所
事務所URL:http://nts-law.jp

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