バイデン米大統領、インドと日本は「外国人嫌悪」と

バーンド・デバスマン・ジュニア BBCニュース、ワシントン

アメリカのジョー・バイデン大統領は1日夜、日本とインドには「ゼノフォビア(外国人嫌悪)」があり、「移民を受け入れたがらない」国だとして、ロシアや中国と並べて語った。

アジア系アメリカ人が多く集まる選挙資金集めのイベントで発言したバイデン大統領は、今年11月の大統領選では「自由とアメリカと民主主義」が問われるものだとしたうえで、「なぜか? 私たちは移民を歓迎するからだ」と話した。

「考えてもみてください。どうして中国は経済的にこれほどひどく停滞しているのか。どうして日本は大変な思いをしているのか。ロシアはどうして? インドはどうして? この国々は、外国人を嫌っているからです。移民に来てほしくないから」

日本の岸田首相は今月8日から14日まで、アメリカを公式訪問した。その際にバイデン大統領は、アメリカと日本の同盟関係は「強固」だと述べていた。

インドについては、アメリカ国務省がインド国内の人権状況について懸念を示しているものの、インドもアメリカにとって重要な協力国のひとつ。

ホワイトハウスは、バイデン大統領は日本もインドも不快にさせるつもりはなかったと説明している。

ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官も、大統領の発言はアメリカの移民政策全般に関するものだったと述べた。

「我々の同盟国や協力国は、いかにバイデン大統領が自分たちと友情と協力を重視しているか、具体的な形で承知している」、「大統領がいかに同盟や協力関係を全面的に徹底的に重視しているか、(各国は)理解している」と、カービー氏は強調した。

日本の在米大使館は3日、アメリカ説明によるこうした説明を承知しているとによると述べ、「日本の政策の正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」とコメントした。

日本政府は数十年にわたり世界でも特に厳しい移民政策を施行していたが、近年では人口減を受けて外国人労働者の受け入れ拡大に取り組もうとしている。

茶碗の中の嵐か

アメリカ国内ではバイデン大統領の発言を批判する声も出ている。

トランプ政権で国防次官補だった

はソーシャルメディアで、日本とインドは「我々にとって特にしっかりした、重要な同盟国」だと指摘。「どちらも我々の敬意を受けるに値する国で、我々は両国に対して丁重に語り掛けるべきだ」と書いた。

コルビー氏はさらに、「協力国に向かって、アメリカ独自の革新的考えを押し付けるなど、恩着せがましく、愚かだ」とも、バイデン氏を批判した。

ワシントンのシンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」の南アジア研究者、サダナンド・ドゥメ氏はBBCに対して、「ナショナリズムが勢いを増している」インドでは、バイデン氏の今回の発言は歓迎されないだろうと話した。

「バイデン氏はインドに対して友好的ではないという見方が、一部のインド人の間にある。今回の発言はその見方を補強する」と、ドゥメ氏は説明し、「中国のような独裁国家とひとくくりにされるのを、そういう人たちは喜ばないはずだ」と述べた。

アメリカ国務省は4月末、インド国内に「相当の」人権侵害の事例があるとする人権状況報告を発表した。これについてインド政府は、「深い偏見に満ちたもので、インドへの理解が非常にお粗末」だと批判した。

しかしドゥメ氏は、バイデン大統領の発言の影響は長期的にはわずかで、「茶碗の中の嵐」に過ぎず、「米印関係に大きい影響を与える見通しはない」としている。

インド政府はバイデン氏の発言に直接反応していないが、インドのエコノミスト、マダヴァン・ナラヤナン氏はアラブ首長国連邦を拠点にするナショナル紙に、インドが移民を受け入れたがらないという発言は「不正確」だと指摘。「インドはかねて、バングラデシュなど貧しい国からの低賃金労働者にとっても、高給取りの外国人にとっても、魅力的な行先だ」と話した。

バイデン氏は2020年の大統領選で、不法移民の取り締まり強化を掲げる当時のドナルド・トランプ大統領を排外的で外国人嫌悪だと非難していた。現在では、アメリカ・メキシコ国境の対策をめぐり与野党から批判が高まっている状況で、バイデン氏も移民受け入れについて制限を強化する姿勢を示すようになっている。

(英語記事 Joe Biden calls US allies India and Japan 'xenophobic'

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