劇場版『名探偵コナン』aikoの曲は蘭や和葉の想い?PVに隠れたリンクする要素

4月12日に公開された、劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』。西の名探偵・服部平次と神出鬼没のライバル・怪盗キッドをメインキャラクターとして、北海道・函館を舞台にお宝争奪戦を繰り広げる本作。早くも今年2024年の映画作品でダントツの注目度を誇る作品となりつつありますね。

そんな今作のストーリーやキャラの活躍はもちろんですが、作品を彩る主題歌も映画封切と同時に話題を集めました。

劇場版 『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』オリジナル・サウンドトラック(※「相思相愛」は未収録)

今回劇場版名探偵コナンシリーズのテーマソングを担当することになったのは、長年幅広い世代のリスナーから熱い支持を集め続けるシンガーソングライター・aikoです!

主題歌タイトルは“互いに想い合い、愛し合うこと”を意味する言葉、「相思相愛」。予告映像の音楽に合わせた演出から、平次と和葉こと大阪幼馴染カップルのもどかしい関係性に思い至った人もきっと多いはず。

楽曲では物語にまつわるどんな歌詞が綴られているのか。ガチオタである一方、約10年のミュージシャン歴も持つ音楽ライターの私・曽我美なつめが、本記事では紐解いてみたいと思います。

<あなた>から思い浮かぶのは、平次の背を見守る和葉の姿

劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』主題歌となるaiko「相思相愛」。
今作の歌詞を見てみると、そこでは終始、想いを寄せる<あなた>に向けられた<あたし>の切なくもいじらしい想いが描かれています。

共に過ごした楽しい思い出もあるし、好きな気持ちは変わらない。
けれど今の<あなた>は、<あたし>にとっては少し遠い人。

『相思相愛』aiko(ポニーキャニオン)

加えて印象的な「あたしはあなたにはなれない」というフレーズは、言葉通りの意味というより、「<あなた>が何を思って何を考えているか、今の<あたし>にはわからない」というニュアンスが込められているようにも感じます。

楽曲の歌詞からは、やや切ない雰囲気すら感じるこのメッセージ。
ですが、今作でスポットの当たる大阪幼馴染カップルこと平次と和葉。この二人の関係性、特に平次を見る和葉の気持ちとしても、このメッセージは近しい部分があるのではないでしょうか。

剣道大会への出場のためわざわざ函館に来たはずが、肝心の大会を放り出し、平次はキッドが関わるお宝の争奪事件や、偶然現場に立ち会った殺人事件の解決へまっしぐら。

『名探偵コナン 服部平次&遠山和葉 シークレットアーカイブス』 (小学館)

今回に限らず、事件になるとなりふり構わず突っ走る平次に、呆れたり憤慨したり。それでも幼馴染の和葉は想いを寄せる彼を何かと気にかけ、心配で探し回ることも多々あります。

いつも隣にいられない和葉の歯がゆさ

とはいえ平次も平次で、そんな和葉をなんだかんだ大事に想っているのは周知の通り。時には半ばお節介のようについてくる彼女を、本気で邪険に扱うことはありません。

むしろ彼なりに和葉を危険から遠ざけたり、函館で一緒に思い出を作ろうとしたり。あるいは和葉が他の男性から言い寄られる気配を察知した瞬間、わかりやすくムキになる一面も(当の和葉はその鈍さからまったく平次の想いに気づいていませんが……)。

『名探偵コナン 平次&和葉 NEWセレクション』2巻(小学館)

時々自分をほったらかしにして、コナンや警視庁の面々とイキイキした表情で事件を追う平次。嫌われたり避けられているわけではない。むしろ「危険な目に合わせたくない」という彼の思いも、おそらく和葉は知っていることでしょう。

楽しそうな姿を見るのも好きだし、その邪魔もしたくない。けれどそんな彼のいる輪の中に、自分は入ることができない。
時には危険すら伴う事件に飛び込む平次を案じる気持ちと、隣に居られないことを歯痒く思う気持ち。そんな和葉のいじらしい心情を彷彿とさせるムードが、「相思相愛」の歌詞には漂っているようにも思えますね。

蘭とも共通する、好きな人を想う複雑な気持ち

自分ではない誰かと、イキイキした表情で何かに取り組む大事な人。彼の様子を見て複雑な想いを抱えたり、それでも好きな気持ちを止められなかったり。
そんな葛藤を抱えるのはこの『名探偵コナン』シリーズにおいて、平次と和葉の大阪幼馴染カップルのみに留まる話ではないでしょう。

作中の主人公とヒロインともいえる、工藤新一と毛利蘭
長年の両片思いから晴れて付き合うことになった二人ですが、依然として新一は元の姿に戻る糸口が掴めず、コナンの姿のまま蘭と行動を共にしています。

『名探偵コナン 紅の修学旅行 (ビジュアルセレクションTVシリーズ)』(小学館)

「相変わらず事件の依頼が多忙であちこちを奔走している」という彼の言葉を信じ、蘭は遠く離れた場所にいる新一の無事を案じつつ、その帰りを健気に待ち続けています。

彼の活躍を嬉しく思いつつも、そばに居られない。好きな人に対し同様に複雑な思いを抱える点で共感し合う部分も、蘭と和葉が仲良しの理由のひとつなのでしょう。

快斗と青子の二人にも重なるフレーズ

さらに「相思相愛」の持つメッセージ性に通じるカップルは、上記の二組だけに留まりません。今作のメインキャラの一人である怪盗キッド。その真の姿である高校生・黒羽快斗と、彼の幼馴染・中森青子もまた、主題歌の持つムードがハマるカップルでもあります。

両者の直接的な対面はありませんでしたが、青子もまた今回の劇場作にはちらっと登場! その点からも、主題歌を聞いてこの二人の存在が頭をよぎった人もきっといたはず。

幼馴染であり互いに想い合いながらも、それぞれ相手の想いには気づいていない二人。警部の父親は長年怪盗キッドの専任捜査官として彼を追っていますが、青子もまた快斗が怪盗キッドとして活躍している事などまったく気づいていません。

小説『まじっく快斗1412 』(小学館)

彼らがメインで登場する原作でもある『まじっく快斗』では、勉強や運動を競いつつも、様々な面でいつも青子より快斗の方が一枚上手であると描かれています。

この二人の場合は「遠く離れた場所で何をしているかわからない相手を想う」というニュアンスと同時に、「<あたし>は<あなた>に適わない」という意味合いでも、主題歌の印象的なフレーズを読み取ることができるかもしれませんね。

aikoの楽曲PVに隠された、映画とリンクする要素

このように、『名探偵コナン』シリーズに登場するカップルたちの女性側の心情を彷彿とさせる楽曲となる「相思相愛」。ですがそれ以外にも今曲には、劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』とリンクするポイントがたくさんあります。

まず歌詞においておそらく最も印象的なのは、一番の最後のフレーズである「月と目が合って笑う」という箇所。エンドロールで主題歌を聴いた際、ストーリー中の重要な鍵となるワードに、つい反応してしまった人もいたことでしょう。

さらに映画を見た後は、楽曲のPVも併せて視聴するのがオススメ。

夜景、飛行機、そして花吹雪。映画の内容を思い起こすような要素が、歌唱するaikoさんの姿とあわせて、映像にはたくさん盛り込まれていますね。

一方で映画を知らない人も「遠くにいる人を想う歌詞」と飛行機の要素から、コナンシリーズに登場するカップルとはまた違ったシチュエーションで、思い合う離れ離れの二人のストーリーを想像できるはず。

楽曲だけが好きな人も、映画と併せて好きな人も、どちらも曲と歌詞の良さを楽しめる。様々な解釈ができる点も、曲の魅力のひとつであることでしょう。

劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』の物語を、主題歌として彩るaiko「相思相愛」。映画をまだ見ていない人も楽しめる楽曲ですが、映画を見た後は隠された魅力をもっと楽しめる、そんな1曲ともなっています。

まだまだ大勢から話題を集める映画と併せて、作品にぴったりの主題歌にもぜひ注目してみては。

(執筆:曽我美なつめ)

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