牛乳を飲むと太るって本当? 熱中症の防止に効果的な牛乳の飲み方は? 牛乳にまつわる素朴な疑問を一挙に解決!

By 小山 浩子

1日3度の食事。簡単に準備ができて、おいしくて、栄養バランスのすぐれたものを食べたい――「FYTTEヘルスケアトレンド2024」で打ち出したキーワードでもある「タイパ食(タイムパフォーマンス×食事を表すFYTTEの造語)」への注目度は、ますます高まっているように感じます。そんな贅沢な願いを叶えてくれる食品が、意外にも「牛乳」です。牛乳の奥深さに驚き続ける管理栄養士の小山浩子先生に、牛乳への素朴な疑問に答えていただきました。

牛乳の栄養については、「コスパよし! タイパよし! 豊富な栄養素がチームワークでココロとカラダを守ってくれる。今こそ知りたい牛乳のパワー」の記事でくわしくご紹介しています。

牛乳は太りますか?

コップ1杯(200ml)の牛乳のカロリーは138kcal。これはご飯茶碗1/2杯分くらいのカロリーです。含まれる脂質は7.8gで、1日に必要な脂質の13~15%程度であるのに対して、ビタミン・ミネラルは1日に必要な量の25%くらいとれることを考えると、決して高い数値とは言えません。牛乳を、肉と同じくらい、もしくは近いイメージで“太ってしまう”と考えている方もいるのですが、たとえば牛肉(サーロイン赤肉)を200g食べた場合、カロリーは588kcalで脂質は51.6gと、比べものになりません。
また、牛乳に含まれる脂質を構成する飽和脂肪酸のほとんどは、短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸からできています。これらは体内でエネルギーになりやすく、体脂肪になりにくい脂肪酸であることも、牛乳の大きな特徴のひとつです。

もちろんカロリーが含まれている以上、寝る前にたくさん飲むなど、とり方によって体重増加につながることはあります。が、含まれている栄養素のバランスを考えると、牛乳が他の食品に比べて太りやすいとは言えないでしょう。

牛乳を飲むタイミングについて教えてください

牛乳は、1日のいつ飲むかによって期待できる効果が変わってきます。

朝の牛乳は寝ている間に消耗した栄養素のチャージになります。寝ている間に、私たちの体では、カルシウムやビタミンB群は消費され、肝臓に貯められたグリコーゲン(ブドウ糖)もかなり消費されます。こうした栄養素を牛乳は補給してくれます。また、睡眠の質を上げるためにも、夜よりも朝に飲むとよいとされています。

一方、骨密度を維持したい方や肌の健康を考える方には、夕食時にとるのが効果的です。これは、寝ている間に行われる成長ホルモンの分泌や骨の再生、細胞の新陳代謝に対して、牛乳に含まれる栄養素が有効に働くからです。ただし、脂質の消化は胃腸に負担がかかるため、成分無調整の牛乳よりも、低脂肪のもの(低脂肪牛乳や加工乳、乳飲料など)を選ぶとよいでしょう。

たんぱく質は、一度に吸収できる量が決まっているため、牛乳もこまめに分けて飲みたいもの。1日に200~400mlくらいを間食も含めて4~5回に分けて飲めるといいですね。栄養のバランスを考えるならば、成分無調整の牛乳を1日の前半に200ml、栄養強化で低脂肪のようなミルクを後半に200mlくらい飲むのが理想的です。もちろんそのまま飲むほか、料理などに使ってもかまいません。

効果的に筋肉を作るには?

運動のあと、30分以内に飲むのがおすすめです。
牛乳にはアミノ酸バランスのいいたんぱく質が含まれています。必須アミノ酸すべてが含まれているので、効率よく筋肉を作ることができます。運動後は筋肉の分解が進むため、30分以内に速やかにとりましょう。牛乳に含まれるBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)が筋肉の修復に役立ちます。
また、筋肉に蓄えられた筋グリコーゲンは、筋肉が力を発揮するときに必要な糖質です。運動後は筋グリコーゲンの貯蔵量も減っているため、牛乳と一緒に糖質もとるといいですよ。たとえばバナナミルクや甘酒ミルクを飲めば、たんぱく質と糖質を同時に摂取することができます。

熱中症予防に効果的な飲み方はありますか?

「外から帰ってきたら牛乳を飲もう」と、よくお伝えしています。牛乳を飲むだけでもよいのですが、冷凍のベリーを氷代わりに入れ、練乳やはちみつを少し足して飲むのもおすすめです。夏に不足しがちなナトリウムやマグネシウム、カルシウム、ビタミンB群、ビタミンCを補うことができます。外出先から戻ってきたときは、これらの栄養素が汗で流れてしまっていて、より足りなくなっているため、帰宅のタイミングをおすすめしています。

冷え性の人におすすめの飲み方はありますか?

ホットミルクにチューブしょうがとはちみつを足して飲むのがオススメです。しょうがは温めることで、しょうがに含まれるジンゲオールの燃焼効果が高くなります。

牛乳をそのまま飲むのが苦手な人も、料理にとり入れたり、冷凍フルーツやはちみつ、練乳などを使ったりするとおいしく飲めそうですね。汗の量が増えるこれからの季節、手軽に飲めて栄養バランスのよい牛乳を、タイパ食のひとつとしてとり入れてみるのはいかがでしょうか。

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