細谷真大「結果」も前線に欲しい「OA枠」、久保建英や鈴木彩艶の「招集」は【パリ五輪出場サッカーU23日本代表の「大問題」】(3)

2021年に東京五輪に出場した久保建英だが… 撮影/渡辺航滋(Sony α‐1)

サッカーU-23日本代表が、8大会連続となるオリンピック出場を決めた。U-23アジアカップ準々決勝でイラクに勝利してパリ行きの切符を手にしたのだが、喜んでばかりはいられない。開幕まで3か月を切っている本大会をにらみつつ、サッカージャーナリスト後藤健生が、山積する問題をズバリ指摘する。

■メンバー選考に関する「さまざまな難しさ」

今後のスケジュールとしては、U-23日本代表は6月に海外遠征を行い、その後は本大会直前合宿に突入することになる。6月の海外遠征は最終的にチームを固めるための遠征であり、本大会に向けてのメンバー選考も、基本的には6月の遠征前にほぼ決めるのが望ましい。

メンバー選考に関しても、これまでのオリンピック以上にさまざまな難しさがあるだろう。

1つ目は、先ほど紹介したように準備期間が短いことだ。従って、今回アジアカップを戦ったメンバーが主体で、新戦力を発掘することは難しくなる。

2つ目は、海外クラブ所属選手が多いので、オリンピック出場に向けてクラブ側との交渉が大幅に増えること。本大会まで時間がない中で、短期間で交渉をまとめるのはかなり難しいだろう。

誰が招集可能なのかを確定するため、早急に交渉を進める必要がある。

■オリンピック世代の「A代表選手」の招集は?

難しさの3つ目は、すでにA代表に選出されているオリンピック世代の選手の扱いだ。

オリンピック世代最高のスター、久保建英は今や世界的に注目されている選手であり、A代表の主力でもある。また、オリンピック世代のGK鈴木彩艶も、最近はA代表でのファーストチョイスとなっている。

もちろん、彼らがチームに加わることで戦力はアップするし、久保自身もオリンピックに対して意欲を持っているとも伝えられている。経験の浅い鈴木にとっては、オリンピックでの戦いは貴重な経験となるだろう。

だが、今年は1月にアジアカップがあったことで、A代表の選手たちの負担が非常に大きくなっている。

アジアカップ終了後、ヨーロッパのクラブに戻った選手たちの多くが故障で欠場を余儀なくされたことは記憶に新しい。

しかも、最近は各国リーグで上位争いをするようなビッグクラブに所属する日本人選手も多く、当然、クラブでの試合数も多くなり、イングランドのプレミアリーグやUEFAチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグなど、ハイレベルの試合を数多くこなしてもいる。

彼らにこれ以上の負担を与えれば、多くの選手が負傷して出場機会を減らしてしまう怖れもある。従って、A代表の選手のオリンピック出場に関しては、A代表の森保一監督をはじめ、クラブ側、メディカルスタッフなどと連携して慎重な配慮に基づいて決めなければならないだろう。

■オーバーエイジ枠で呼ぶべき「頼れるベテラン」

さらに、オリンピック本大会に関しては、オーバーエイジを3人招集することになるが、これも非常に難しい問題となる。

2021年の東京オリンピックでは吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航という、当時のA代表の主力が参加したが、これは開催国だったことによる特例と考えたほうがいいだろう。しかも、当時カタール・ワールドカップを目指していたA代表と東京オリンピック代表の監督は森保監督が兼任しており、オーバーエイジ組が参加することがA代表強化にも直結していた。

だが、今回は先ほども紹介したように、A代表の選手に過剰な負担を要求すべき時期ではない。そうなると、たとえば吉田麻也や大迫勇也といった、最近はA代表に招集されていないベテラン勢の起用も考えられる。

U-23アジアカップのグループリーグでは得点が生まれないことでかなり苦しみ、そして準々決勝と準決勝で結果を出した細谷真大にとって、この大会は大きな飛躍のきっかけとなるかもしれない大会となった。

しかし、ワントップを細谷だけに託すには、好不調の波が大きすぎるような気もする。

有名な「ケチャップ理論」というものがあるが、FWの選手には、ゴールを決められない時期も当然ある。しかし、そんな時期でもワントップには前線でボールを収めて攻撃の起点を作るという重要な仕事があるのだ。

だが、グループリーグの試合を見ていると、細谷はそこまでの仕事はこなせていなかった。

そういう意味で、点を決めた試合でも、また決められなかった試合でも、大迫は前線でボールを収めて時間を作り、無理なロングボールでもなんとか味方につなぐという仕事をコンスタントにこなせている。

大迫が入ればオリンピック・チームの戦力は間違いなくアップするだろうし、同時に大迫のそばでプレーすることは細谷にとっても貴重な経験となるかもしれない。

ただし、J1リーグで優勝争いをしているヴィッセル神戸にしてみれば、オリンピック世代ではない大迫を数週間、離脱させられるのは納得できないことかもしれないし、大迫本人にオリンピック出場のモチベーションがなければ、招集はすべきできないのだろうが。

いずれにしても、大岩剛監督にとってパリ・オリンピックに向けてのチーム作りの仕上げ段階にはあらゆる意味での難問が山積しているが、そうした問題を処理して最高のチームを作ってもらいたいものだ。

そして、海外クラブとの交渉をはじめ、日本サッカー協会にはU-23代表を全面的にバックアップしてもらいたい。

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