【漫画】「ごっこ」から始まった本気の感情……女子二人の恋愛模様が愛らしい『百合ごっこの終わり』

「ロールプレイ」(役割を演じる)という言葉がある。私たちが幼い頃から親しんでいる「ごっこ遊び」と似たものだが、役になりきって過ごすうちに、その感情が本物になること珍しくない。3月中旬にXに投稿されたオリジナル漫画『百合ごっこの終わり』は、ごっこ遊びから始まる恋愛をかわいらしく描いた作品だ。

女子高生のとも子と葉子は「女子高らしいことがしたい」という理由から突発的に“ごっこ遊び”として交際を始める。高校生活は一緒にいろいろな楽しい思い出を作った2人だが、大学進学をキッカケにこの“遊び”は終了。別々の道を歩み始めたものの、葉子はとも子を忘れられずにいて――。

本作を手掛けたのは、『コミティア』への参加を続けている人気同人作家の椎名かじんさん(@kajinshina)。テンポがよく、爽やかでニヤニヤしてしまう本作を制作した経緯など話を聞いた。(望月悠木)(望月悠木)

「メガネっ娘好きだから」

――『百合ごっこの終わり』を制作した背景を教えてください。

椎名:年4回開催されている同人誌イベント『コミティア』に毎回参加していて、そこに出品するために制作しました。制作当時は付き合っていた方と結婚の準備を進めていた時期で、「こうやって作品を制作できるのも今回が最後かな」と自分の“卒業”も意識しながら取り組みました。その後、結婚の話は破談になりました。

――なぜ“ごっこ遊びから始まる百合カップル”という切り口にしたのですか?

椎名:当時はゆるい学園モノの百合作品をいろいろ読んでいました。その反動からなのか、「閉鎖的な楽しいだけの空間から出た時、百合関係はどうなるのか」という物語を描きたくなったんです。

――ストーリーはどう組み立てましたか?

椎名:まず「ページ数が少なくても読み応え感が出る2部構成にしよう」と思い、テーマにも合う高校卒業、大学デビューを舞台にしました。ちなみに、ストーリーの骨子ができたところで、タイトルはアーサー・C・クラーク氏の小説『幼年期の終わり』をもじったのですが、特に中身はオマージュしていません。

――とも子と葉子というメインの2人が生まれた経緯を教えてください。

椎名:私の描くキャラはだいたい使い回しで、髪がショートならトモコ、ロングならヨウコです。使い回しなので性格も名前によってだいたい共通しています。トモコが地味でヨウコは華がある感じなのですが、この作品ではどちらも同じくらいの顔の可愛さになるように心掛けました。

――ちなみにどちらもメガネをかけていた狙いは?

椎名:私がメガネっ娘好きだからとしか言いようがないです(笑)。

最初にすべてを説明

――葉子の視点のみで物語が進行していましたね。

椎名:2部構成にすることが決まった段階で、2人の視点を描くと話が長くなるため、主人公の葉子の視点のみにすることを決めました。とも子の心情描写を省き伏せることで、読者さんも葉子と一緒に寂しさやモヤモヤを感じてもらえたら嬉しいです。

――葉子ととも子の軽快なやり取りを見ていると、「本当に2人は一緒にいる時に自然体でいられているのだろうな」と感じました。2人の会話・関係性を描くうえで意識したことは?

椎名:“2人の馴れ初め”や“2人がいかに気の合う仲良しであるのか”ということを最初に全て説明してから物語を進めるようにしました。とも子のほうが一歩リードして自分の気持ちに気付いているので、とも子が物語を誘導して、葉子が自分の気持ちを整理していくという構成にしています。ただ、葉子が置いてけぼりにならないように、とも子から葉子へ思いやりが感じられるように、それでいて最後までは本心がわからないよう気を付けました。

――最後に今後はどのように漫画制作に取り組んでいきますか?

椎名:今後も『コミティア』に出展するなどで活動を続けていきたいです。また、宣伝も兼ねてXで毎週末に過去作品を1本まるっとアップしているため、そちらも見てくれる人が増えると嬉しいです。現在は社会人と大学生の続きモノの物語制作に取り組んでいるため、こちらもたくさんの人に読んでもらえればと思っています。

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