こんにちは！リビングふくおか・北九州Ｗeb地域特派員のユッチです。
2024年5月17日(金)公開予定の映画「湖の女たち」。『パレード』『悪人』『横道世之介』『怒り』など数多くの小説が映画化されてきたベストセラー作家、吉田修一と、多様なジャンルの話題作、問題作を世に送り出し、近年も『MOTHER マザー』『星の子』で絶賛を博した大森立嗣監督。モスクワ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した『さよなら渓谷』以来、10年ぶりに両者のタッグが実現し、観る者の理性と感性を激しく揺さぶるヒューマン・ミステリーが誕生しました。
マスコミ向け試写会で一足お先に拝見させていただいたので、早速レポをどうぞ！！
不審死事件をきっかけに
近くの介護療養施設、もみじ園で100歳の老人が不振な死を遂げたことを発端に物語が展開していきます。気性の荒い伊佐美(浅野忠信)、そのパワハラじみた指示に盲従する圭介(福士蒼汰)。不条理なモラルによる負の連鎖。現代社会の不機嫌な大人たちが浮き彫りになっています。
STORY
事件の捜査にあたった西湖署の若手刑事・圭介とベテランの伊佐美は、施設の中から容疑者を挙げ、執拗な取り調べを行なっていく。その陰で、圭介は取り調べで出会った介護士・佳代への歪んだ支配欲を抱いていく。
一方、事件を追う週刊誌記者・池田は、この殺人事件と署が隠蔽してきたある薬害事件に関係があることを突き止めていくが、捜査の先に浮かび上がったのは過去から隠蔽されてきた恐るべき真実・・・。それは、我々の想像を超えた過去の闇を引き摺り出すー。そして、後戻りできない欲望に目覚めてしまった、刑事の男と容疑者の女の行方とはー。
事態は思いがけない急展開を見せていく
容疑者と見なされた当直の職員・松本(財前直見)は強引な追求を繰り返されます。あることをきっかけに刑事たちの暴力的な取り調べの実態が表面化することに…。
さらに別の視点で進行するパートで、驚くべき広がりを見せていきます。想像もつかない方向へとうねり出す物語は、重層的な構造と壮大なスケール感で観る側を圧倒します。
不毛でアブノーマルな性愛に溺れる
主人公である圭介(福士蒼汰)と佳代(松本まりか)は、刑事とその取り調べ相手という形でめぐり合い、人知れず密会を重ね、欲望の赴くままに支配する者と支配される者のインモラルな行為をエスカレートさせ、危うい関係を深めていきます。
社会通念を逸脱した難役
ダブル主演を務めた福士蒼汰と松本まりか。圭介と佳代は、道徳的な通念を踏み外していくキャラクター。その身も心も剥き出しでさらけ出す覚悟を要求される難役を渾身の演技で体現しています。衝撃的なシーンもあり、登場人物の弱さと切なさ、愚かさと愛おしさ、汚れとイノセンスの両面をまっすぐに見すえたその描写は、人間という存在の本質を問いかけるかのようで、根源的な部分も考えさせられました。
もうひとつの主役は湖
劇中で描かれる事件や性愛のかたちは陰惨でグロテスク。実力派キャストが、このうえなく濃密でスリリングなアンサンブルを披露しています。湖はそっとこちらを見つめ、さながら神のように沈黙を保ち、深遠な神秘性を湛えています。内に闇を抱えた人間たちと悠久なる自然が織りなす鮮烈なコントラストには、「この世界は美しいのだろうか」という作り手のメッセージもこめられています。
バッハのヴァイオリン曲「シャコンヌ」の切り裂くような旋律も特徴的で、まさに現代の黙示録と呼ぶにふさわしい破格のミステリー。時を超えて浮かび上がった謎はいかなる真実を導きだすのか⁈そして湖のほとりで後戻りできない関係に堕ちていく二人の行く末は…。
美しい湖の風景を通して、謎解きとはまた違った今までにない没入感を体験してみてはいかがでしょうか。
『湖の女たち』
■公開日：2024年5月17日（金）全国公開
■出演：福士蒼汰 松本まりか 福地桃子
三田佳子 浅野忠信
■原作：吉田修一『湖の女たち』（新潮文庫刊）
■監督・脚本：大森立嗣
■製作幹事・配給：東京テアトル＝ヨアケ■公式サイト：http://thewomeninthelakes.jp■劇場：Ｔ・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマキャナルシティ１３、イオンシネマ戸畑、小倉コロナシネマワールド、Ｔ・ジョイ久留米、ユナイテッド・シネマなかま１６、イオンシネマ大野城、ＴＯＨＯシネマズ直方、ユナイテッド・シネマ トリアス久山、ＴＯＨＯシネマズ福津
