アバンの使徒との対峙も意味なし…『ダイの大冒険』最後まで悪を貫いた「魔王軍の鑑」たち

『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』第1巻 [Blu-ray](エイベックス・ピクチャーズ)

今年、連載開始から35周年を迎える『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(監修:堀井雄二氏、原作:三条陸氏、作画:稲田浩司氏)。本作では“アバンの使徒”と対峙することで、魔王軍から正義の心を取り戻すことになった者たちが多くいる。ヒュンケルやクロコダインを筆頭に、ハドラーやバランでさえ改心したといっていいだろう。

しかし、なかには最後まで悪を貫いた者もいた。大魔王バーンや側近のミストバーン、キルバーンは例外として、今回は魔王軍の鑑ともいえる悪役キャラをみていこう。

■処世術は現代社会の模範? 狡猾で手段を選ばない策士「ザボエラ」

まずは、妖魔司教・ザボエラだ。ザボエラは序盤から登場し、かなり長く暗躍した敵キャラでもある。

絶大な魔力を誇り、卓越した知識と人を操るセンスが素晴らしい。人質を使うなど手段を選ばず、さらに人間の色恋沙汰にも精通しており、抜け目ない軍団長といえるだろう。

卑劣で残忍という悪役には持ってこいの性格で、他人を蹴落としても自分は生き残ろうとするなど小賢しく、非常に老獪で狡猾な振る舞いを見せていた。

ハドラーやバランに取り入り、同僚だったミストバーンにも頭を下げるという処世術は見事で、現代社会で生き残れそうな人材ともいえる。このような人物は不況の折には強そうだ。政治家としても生きていけそうである。

ザボエラ曰く、“強者”とは強いものを指すのではなく、最後まで残っていることが大事らしい。なるほど。たしかに競争社会で生き残るには、綺麗ごとばかり言っていられない。

しかも、「前回の課題をクリアして はじめて“改良”という…!」なんて言葉も吐いており、ビジネス現場の改善にも貢献できそうだ。やはり現代社会でも、この男は優秀なブレーンとして活躍するだろう。

■女が相手でも容赦ない! 最強の切り込み隊長「フレイザード」

ハドラーの禁呪法から生み出されたのが、氷炎将軍・フレイザードだ。

高熱の岩石と凍った岩石が半身同士でつなぎ合っており、炎のような凶暴さと氷のような冷徹さを持ち合わせている。大魔導士マトリフにも「もう少し早く生まれていたら絶対に勝てない」と言わしめたほどで、魔王軍のなかでもかなり強い存在だった。

コイツも残忍さが際立つキャラであったが、ザボエラと違うのは自ら前線へ赴くこと。欲しいものは自ら動き、暴力を用いてでも手にしようとする危険な思想の持ち主だ。キレ過ぎなければ最強なのになぁ……とつい思ってしまう。

レオナを手にかけようとしたとき、圧倒的な実力で優勢に立っておきながらもパプニカの三賢者・マリンの顔を掴み上げ、高温で大やけどを負わせていた。そんなことをしなくても勝ちはゆるぎない状況なのに、あえて自分の残虐性を見せつけようとする。

そういえば、マァムに哀れみの言葉をかけられて、「同情なんかいらねえよ!!」と、高温の脚でマァムの右手を踏みつけていた。相手が女性であっても容赦しないなんて、ある意味、悪役の見本といえるだろう。アバンの使徒が勢ぞろいしても、絶対に心を折らずに最後までしぶとく生き残ろうと必死だった。

惜しむらくは、生まれてからの期間が短かったことだ。レベルを積み上げていたらメドローアも自然とマスターしていたのかもしれないし、もしかしたら竜魔人よりも実力は上だったかも(?)しれない。

■スカイドラゴンが家族って…欲望のまま行動する暴れん坊「ガルダンディー」

『ダイの大冒険』でポップに見せ場を譲ってしまったのが、竜騎衆の1人、空戦騎・ガルダンディーである。竜騎将バランの側近ながら勝手な行動をとり続ける、なかなかの問題児だ。

コイツの相棒はスカイドラゴンのルードだ。ただの移動手段としてではなく、家族だと見なしているらしい。いや、スカイドラゴンが家族って……。しかし、ポップのベギラマによってルードは殺されてしまい、怒り心頭。ここからポップをじっくりいたぶる残虐性を見せつける。

ヒュンケルの加勢もあり、ポップのイオが顔面に炸裂し、あえなく死んでしまった。まあ、どうしようもないキャラだったので、同情などはなかった。

そもそもコイツは竜騎衆が揃ったときに、バランが準備をするからしばし待てと言っているのにもかかわらず、単独行動でベンガーナの町を炎で焼き尽くす非道ぶりを発揮している。ラーハルトによると“いつものこと”らしいのだが、欲望のまま暴れるので、人間にとっても大変やっかいな敵キャラであった。

作中、バランは息子である勇者・ダイを味方に引き入れようとする。もしも仲間になっていたとして、バランへの忠誠が厚そうなラーハルトとボラホーンはダイに対しても忠義を尽くすだろう。しかし、ガルダンディーがダイに忠誠を尽くすのかは甚だ疑問である。「くせぇガキが何いってんだ~?」なんて言って、ラーハルトの槍を食らっていそうだ……。

さて、ここで紹介した魔王軍の敵キャラたちは、アバンの使徒を相手にしても最後まで改心することがなく、もはや清々しいほどの悪役だった。やはり悪役たるもの、このくらいでないと倒しがいがないといえるだろう。

© 株式会社双葉社