まるで「SF映画」の景観! 迫力の「採掘工場」脇を抜ける「武甲山」登山レポ

武甲山へ大規模な採掘工場の脇を通り抜けて歩いて行く(撮影:酒井 天里)

埼玉県秩父市のシンボルともいえる「武甲山(ぶこうさん)」は、標高1,304mで日本二百名山の一つに数えられている。山頂からは秩父盆地に広がる街並みを一望でき、空気が澄んだ日には遠くに北アルプスが見える大パノラマが広がる。

今回はそんな武甲山をただ登山口から登るのではなく、西武秩父線「横瀬(よこぜ)駅」からスタート。採掘工場の脇を抜け、登山口まで歩き山頂を目指すルートを紹介する。

横瀬駅から山頂までは片道10km程、さらにアップダウンが加わるため体力に自信がある人向けだが、過ごしやすい季節の今であれば気持ちよく歩けるのでおすすめだ。

■横瀬駅からスタート

横瀬駅のホームは人が少なくひっそりとしている
横瀬駅を出てすぐの所にある二宮金次郎像と武甲山

日曜日の朝8時頃、スタート地点の 横瀬駅に到着。駅で下車する人は少なく、周囲には民家がある程度で、静かな雰囲気が漂っていた。

改札を出て歩いて行くと、すぐに目に入るのが年季の入った二宮金次郎像だ。随分と前から移りゆく武甲山と街の風景を眺めてきたのだろうか。

駅からは地図を見ながら登山口を目指して歩いていくのだが、圧倒的な存在感の武甲山が目印になるため、道迷いの心配はなさそうだ。

■迫力満点! 採掘工場の脇を歩いて行く

駅から30分程進んで行くと、現れるのが大規模な採掘工場だ。武甲山はその姿を見ればわかるように、北側の斜面は大規模な採掘地となっている。明治時代から現在に至るまで「石灰石」が採掘されており、工場でセメントなどのさまざまな素材に加工されているそうだ。削られた山肌を見て、少しかわいそうという気持ちを抱いてしまうが、これも日本を支えてきた一大産業の一つなのだ。

工場の脇にある道路を歩いて行くのだが、近くで眺める工場の圧倒的なスケールに驚く。むき出しの配管や円柱型の構造に美しさを感じる。そして、まるでSF映画の世界に入り込んだかのような雰囲気も魅力の一つだ。

道路脇の管からはモクモクと蒸気が上がっていて、これも雰囲気があってよい。しかし、工場風景に目を奪われてばかりではいけない。大型トラックなどの工業車両に注意して歩かなければならないし、砂埃が多いので手ぬぐいやマスクで鼻や口を覆うことをおすすめする。

■登山口に到着! ここから山頂を目指す

「御嶽神社」の一の鳥居。ここから登山道が始まる

更に工場から歩き続けること1時間、登山口の「一の鳥居」に到着。武甲山は古くから信仰の山でもあり、山頂には日本武尊(やまとたける)を主祭神とした「御嶽(みたけ)神社」がある。

ここから先は生川・表参道コースを登って、山頂を目指して歩いて行く。登山道には一の鳥居を起点として1丁目、山頂を52丁目とした「丁目」が刻まれた石があり、ルート上の現在地がわかりやすくなっているので安心だ。

登山口から1時間半程で山頂に到着。一の鳥居からは急な登りの険しい道が続き体力を消耗したが、横瀬駅から歩いて山頂まで辿り着いたときには何とも言えない達成感があった。

■橋立・裏参道コースで下山

橋立・裏参道裏山道コースで下山。気持ちのよい林間の登山道を進む
下山後に登ったばかりの武甲山を街から見上げる

下山は周回ルートである橋立・裏参道コースを選択。終点は秩父鉄道の「浦山口(うらやまぐち)駅」の近くに出るので、ここをゴールとしてもいいのだが、筆者はまだもう少し歩きたい気分だったので登ったばかりの武甲山を眺めて感傷に浸りながら横瀬駅まで戻り、行程を終えた。山頂から横瀬駅までは、登山道と街中合わせて3時間程度だった。

■武甲山の歴史的な背景を感じるために

今も石灰の採掘が続いている武甲山

多くの登山者に愛されている武甲山。ただ登るだけでなく、日本近代史のなかで、採掘地として発展・貢献してきた産業の山であることを学べ、違った視点でも楽しめるだろう。

今回紹介した横瀬駅からのルートは、明治から現在まで続く採掘の歴史の一端を感じ取れるので、事前に調べたうえで歩くことをおすすめしたい。

ルートとしてはトータル21km程と距離が長いため、体力と相談すること。また、早朝にスタートするなど余裕も持って行動するようにしよう。

・行程とタイムスケジュール
横瀬駅(08:00)→石灰工場(08:30)→一の鳥居(09:30)→武甲山山頂(11:00-12:00※休憩)→登山道終点(14:00)→浦山口駅(14:10)→横瀬駅(15:00)

・横瀬駅へのアクセス
東京都池袋駅から特急で約1時間10分。

●武甲山

住所:〒368-0072 埼玉県秩父郡横瀬町横瀬

●生川・表参道コースの新駐車場

2024年4月1日から主要ルートである生川・表参道コースの近くに新たに無料駐車場が新設された。収容台数は50台。

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