年金月23万円だったが…夫死去で〈遺族年金月7万円〉も生活苦の妻、「緑色の封筒」を見逃し〈5年分の給付金〉もらえず「何かの間違いでは?」

急激に進む円安により、物価高が一層進むと懸念されています。そんななか生活がますます苦しくなるのは、年金に依存する高齢者たち。給付金の対象となっているケースも多いので、もらえるお金はきちんともらって、なんとか物価高を乗り越えたいものです。

円安のさらなる進行で「2024年秋」以降に、さらなる物価高懸念

急激な円安により、さらなる物価高が懸念されています。日銀の植田総裁は、現時点ではいまの円安が基調的な物価上昇率に大きな影響を与えているわけではない、円安が物価の動きに影響を及ぼすことになれば金融政策による対応を検討するとしています。

また1年半ぶりに円買い介入を実施した可能性が高まっていますが、その効果について懐疑的な見方が広がっています。どちらにせよ、わたしたちの生活への影響は避けられず、今年秋以降に、さらなる物価高を覚悟しなければならない、と専門家は警告を鳴らしています。

そのようななか、心配されるのは生活費を年金に依存する高齢者。年金額は、今年4月分(6月14日支払い分)から昨年比2.7%の引上げ。国民年金は満額で「6万6,250円→6万8,000円」に、厚生年金のモデル夫婦の支給額は「22万4,482円→23万0,483円」になりました。しかし、物価上昇分を考えると実質目減り。さらに今年の秋にもうひと段階、物価高となると、実質的な目減り幅はさらに広がることは確実です。

厚生労働省『2022年国民生活基礎調査の概況』によると、公的年金が収入の100%を占める高齢者世帯は全体の44.0%。80~100%とする高齢者世帯は16.5%で、合わせると6割にも達します。

さらに高齢者世帯における平均貯蓄額は平均1,603.9万円であるものの、「貯蓄がない」という高齢者世帯は11.3%。「貯蓄がある」とする80.7%の高齢者世帯でも、「貯蓄50万円未満」が3.4%、「貯蓄50万~100万円」が3.0%、「貯蓄100万~200万円」が6.1%。高齢者世帯の4世帯の1世帯は「貯蓄200万円以下」と、余裕があるとはお世辞にもいえない状況下にいます。

生活苦の高齢者をほんのわずかながらサポート「年金生活者支援給付金」

高齢者世帯で厳しいのが「年金の減額」。夫婦で月23万円という平均的な年金をもらう、同じ年の高齢者夫婦がいたとしましょう。国民年金が満額だとすると、妻は月6.8万円、夫は月16.2万円の年金を手にしています。

そして夫は65歳のときに亡くなり、残された妻が手にするのは、自身の年金と夫が亡くなったことでもらえる遺族厚生年金です。遺族年金の支給額は死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額。つまり9万4,000円の4分の3、つまり月7万円強。妻の国民年金と合わせると、月14万円弱になります。

夫が亡くなり、ひとりになったからといって、生活費が2分の1になるわけではありません。年金に依存する生活のなか、約10万円の年金減額……痛すぎます。生活が一気に苦しくなったとしてもおかしくはありません。

ひっ迫する高齢者の家計。ほんのわずかですがプラスになるのが「年金生活者支援給付金」です。これは消費税率引き上げ分を活用し、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の人に、生活の支援を図ることを目的として、年金に上乗せされる給付金。

対象になるのは「①65歳以上の老齢基礎年金の受給者」「②同一世帯の全員が市町村民税非課税」「③前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が778,900円以下」と、3つの要件を満たした人。また77万8,900円を超え87万8,900円以下の場合は「補足的老齢年金生活者支援給付金」の対象になります。

条件に当てはまった人のもとには、日本年金機構から緑の封筒に入った年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届くので、はがきの太枠内を記入し、切手を貼ってポストに投函すればOK。

支給額は月額5,310円が基準で、補足的老齢年金生活者支援給付金は「給付基準額×(保険料納付期間/被保険者月数)×(87万8,900円-前年の年金収入とその他所得合計)/(87万8,900円-77万8,900円)」で計算することができ、ざっと計算すると、女性は月4,455円ほどもらえる計算です。

――緑の封筒に入った請求はがき……捨ててしまったわ。だって私、月14万円弱、年金をもらっているから

本当にもったいない。この場合、遺族年金は対象外で、女性の場合は補足的老齢年金生活者支援給付金の対象になりうるということなのです。1年で約5万円のもらい損。生活者支援給付金は令和元年10月1日から始まっているので、女性は約5年分、請求すればもらえるはずだったお金をもらい損ねていることになります。

――えっ、なんかの間違いではないんですか?

年金には時効があり5年分はさかのぼって請求できますが、残念ながら老齢年金生活者支援給付金は対象外です。後悔しても仕方がありません。封筒や請求書を紛失したというなら、日本年金機構のホームページから請求書をダウンロード。いまから手続きすれば、基本的に請求した翌月分から支給の対象となります。

[参考資料]

日本年金機構『令和6年4月分からの年金額等について』

厚生労働省『2022年国民生活基礎調査の概況』

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』

厚生労働省『年金生活者支援給付金制度について』

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