全国市区町村「公務員の定年退職金額」ランキング…「公務員なら老後も安泰」は本当か?

老後の生活費としてあてにしている人も多い退職金。そんななか、「公務員は退職金も高額だから、老後も安泰」という声を耳にします。実際はどうなのでしょうか。総務省の統計から紐解いていきます。

民間企業の最新退職金事情…「定年退職」で平均1,878.3万円

まず、サラリーマンの退職金事情についてみていきましょう。

厚生労働省の外局である中央労働委員会による『令和5年賃金事情等総合調査』によると、令和4年度1年間(決算期間)の平均退職金支給額は、「定年退職」で1,878.3万円。「会社都合」では平均1,399.9万円、「自己都合」では487.5万円でした。

学歴別にみていくと、「勤続35年」の場合、「大卒」で1,867.6万円、「高卒」で1,319.8万円。「満勤勤続」の場合、「大卒」で2,139.6万円、「高卒」で2,019.9万円でした。

さらに勤続年数ごとにモデル退職金額をみていきましょう。大卒総合職の場合、「勤続3年」で69.6万円、「勤続5年」で121.3万円、「勤続10年」で305.7万円、「勤続15年」で585.1万円。「勤続20年」で1,021.6万円と、1,000万円の大台を突破。「勤続25年」で1,487.5万円、「勤続30年」で2,054.5万円、「勤続35年」で2,539.5万円。そして「60歳」まで働いた場合の退職金は平均2,650.9万円、「定年退職(万勤勤続)」で2,858.4万円。多くの人が老後のために2,000万円を目標貯蓄額にしているなか、大卒サラリーマンであれば、30年以上地道に頑張れば、退職金でそれが叶う、といえそうです。

一方、高卒の場合、退職金額が1,000万円を超えるのは「勤続25年」で平均1,062.6万円。「勤続35年」で1,853.2 万円、「60歳」まで働いた場合の退職金は平均2,143.0万円、「定年退職(万勤勤続)」で2,162.5万円。学歴によって退職金額に格差はあるものの、学卒から1社ひと筋で頑張れば、退職金2,000万円の大台は目指すことができる……これが、民間企業の最新退職金事情です。

もちろん、昨今は退職金制度自体がない、という企業も珍しくはなく、厚生労働省による別調査では、「退職金制度なし」が24.8%と、4社に1社の割合になります。

2024年全国市区町村別「公務員の平均退職金額」ランキング

では公務員の退職金事情についてみていきましょう。地方公務員の退職金は「退職手当額=基本額(退職日の給料月額×退職理由別・勤続期間別支給率)+調整額」とされ、支給率は、退職理由別に、勤続年数1年ごとに計算されます。

*退職者の基礎在職期間の初日の属する月から末日の属する月までの各月ごとに、当該各月にその者が属していた職員の区分(第1号区分~第9号区分)に応じて定める「調整月額」のうち、その額が多いものから60月分の調整月額を合計した額

では実際の支給額についてみていきましょう。総務省によると、私たちが公務員といわれてパッとイメージする専門職ではない一般行政職の平均退職金額が最も高いのは、「香川県さぬき市」で2,449.7万円(関連記事:『全国市区町村「公務員の平均退職金額」ランキング2024…1~300位』)。

さらに60歳定年退職者の平均退職金額でみていくと、トップは「福岡県柳川市」で4,433.6万円。続く「東京都町田市」と「群馬県館林市」は共に3,000万円台でした。

【市区町村別「平均退職金額」1~10位】

第1位「香川県さぬき市」2,449.7万円

第2位「静岡県長泉町」2,414.8万円

第3位「千葉県神崎町」2,398.5万円

第4位「長崎県長与町」2,391.1万円

第5位「福島県相馬市」2,385.3万円

第6位「宮城県蔵王町」2,341.3万円

第7位「宮城県七ヶ宿町」2,306.1万円

第8位「和歌山県新宮市」2,271.3万円

第9位「大阪府阪南市」2,269.5万円

第10位「島根県隠岐の島町」2,265.8万円

【市区町村別「60歳定年退職者の平均退職金額」1~10位】

第1位「福岡県柳川市」4,433.6万円

第2位「東京都町田市」3,131.6万円

第3位「群馬県館林市」3,101.8万円

第4位「滋賀県栗東市」2,704.4万円

第5位「東京都狛江市」2,703.7万円

第6位「東京都小金井市」26,28.5万円

第7位「埼玉県東松山市」2,572.3万円

第8位「岐阜県大垣市」2,566.9万円

第9位「千葉県茂原市」2,558.8万円

第10位「兵庫県芦屋市」2,550.4万円

前述の通り、公務員の退職金については明確に決められています。そのときの退職者の属性によって、平均額は大きく変わるので、名の上がった自治体では退職金額が高い、ということはありません。とはいえ、

――やっぱり公務員は安泰だな

――いまどき、退職金で2,000万円ももらえるなんて……やっぱり公務員は羨ましい

そんな羨望の声も。確かに、民間企業に比べて公務員の安定感は抜群。しかし、公務員の給与水準、それに伴う退職金額は民間準拠で、基本的に「大企業>公務員>中小企業」という水準です。

民間企業でも公務員でもいえることは、「この会社のために/この町のために、ずっと身を捧げてきた」という人には、相当の退職金が約束されているということ。給与を理由に転職を繰り返す場合、最終的に職を変えたほうがプラスになるのか、我慢して1社にしがみつくのがいいのか……難しい判断であることは確かです。

[参考資料]

中央労働委員会『令和5年賃金事情等総合調査』

総務省資料『地方公務員の退職手当制度について』

総務省『給与・定員等の調査結果等』

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