こんな登山靴はイヤだ! 前触れナシの「ソール剥がれ」 実体験に学ぶ「必須の対策」

登山中、実際経験する確率はそれほど高くないが、最悪なトラブルの1つが登山靴のソール剥がれ。実際に北アルプスのある有名な山小屋では、夏山のハイシーズンに1日に最低1人はソール剥がれの登山客が駆け込むという。ちなみに筆者の家族も、登山中に突然ソールが剥がれたことがある。暖かくなり本格的な登山シーズンが始まる今、登山靴の寿命やソールが剥がれたときの応急処置について、体験談も交えて紹介しよう。

■意外と短い? 登山靴のソールの寿命

一般的に靴のソールは5年ほど経つと剥がれやすくなるといわれている。ソール部分に使われているゴムやポリウレタンは、履いても履いていなくても経年劣化するためだ。最近はミッドソールに劣化しやすいポリウレタンなどが使われていないモデルもあるが、素材を貼り付けるための接着材が劣化するため、数年経つと剥がれることもある。そのため、3〜5年でソールを貼り替えることが推奨されている。

保管場所が、高温多湿の密閉した空間や直射日光が当たる所だと、もう少し早く劣化することもあるという。

登山靴をチェックしてみて、ソールの接着部分などにヒビ割れがある場合は要注意だ。また、ソールにヒビがなく綺麗に見えても、ソールの内側が劣化していることもあるので、購入して数年経っている場合は、あとで紹介する応急処置グッズを持っていくのがおすすめだ。

■突然剥がれた! 筆者家族の体験談

筆者家族のソールが剥がれた場所は、尾瀬の木道だった。登山靴は購入してから既に5年以上は経っていたが、山行前に確認したところ、ソール部分にヒビ割れもなく、大丈夫そうに思えた。しかし、鳩待峠、山の鼻を経て見晴方面へ歩いていたところ、何の前触れもなく片方のソールのかかと部分がベリっと剥がれた。尾瀬の木道は幅こそ狭いが平坦で、靴にはそれほど衝撃はなかったにもかかわらずだ。

幸い結束バンドを持っていたので、数本を靴に巻きつけて処置し、歩き続けた。さらに幸運なことに、立ち寄った尾瀬小屋に、布とゴムで作られた靴に履かせるタイプのスパイクのようなもの(本来は靴の滑り止め用の商品)が販売されていたので、それも購入し、靴に装着した。その日は天気も崩れることはなく、登山道も特に難所はなかったので、怪我もなく無事に帰ることができた。

■山でできる応急処置は?

運よく処置グッズが手に入ることは少ないだろうし、天気の崩れや、登山道には岩場も多いことを考えると、結束バンドだけではやや心もとない。結束バンド以外で応急処置に使えるグッズに、キネシオロジーテープ、ダクトテープがある。聞き慣れないかもしれないが、キネシオロジーテープは伸縮性のあるテーピング用のテープだ。商品によっては撥水性もある。ダクトテープは粘着力が高く防水性があるテープだ。

バンドやテープ類を靴底の土踏まずの部分から、一方はかかと側に、もう一方は足の甲の方へ巻きつける。中でも結束バンドは歩いているときに、かかと側がずれる可能性があるので、かかと側のバンドにもう1本バンドをひっかけて、足首をぐるっと1周巻こう。靴の横から見て、バンドが三角形になる形になるとよい。さらに足先側にもう1本巻くと安定する。

また結束バンドやテープ類は、グッズをザックにひっかけたり、ウェアの穴あき補修など何かと使用できるので、ソール剥がれの心配がなくとも、いつも携行するとよいだろう。

■剥がれたソールの費用や修理期間は?

ソールの貼り替え費用はメーカーや販売店、破損状態にもよるが、10,000〜20,000円ほどかかるようだ。修理期間は3週間から長いと2か月程かかることもあるので、今後の計画次第では買い替えを検討する必要があるかもしれない。

なお、あまりに登山靴が汚れている場合は、別途クリーニング代がかかったり、受付を拒否されることもあるので、できる限りきれいにしてから修理を依頼しよう。

靴は登山装備の中でも、軽く見ると命に関わる重要なアイテム。事前チェックを怠らない、応急処置グッズを持つなどして安全に楽しもう。

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