銀座にオープンのくら寿司は「外国人客が6割」 ユニクロとのタッグ感と「マクドナルド1号店」との共通点

銀座にオープンした『くら寿司』 撮影/編集部

ロレックスやルイ・ヴィトン、シャネルといった超ハイブランドが軒を連ね、東京随一の高級ショッピング街でもある銀座。そんな都内有数のハイソな街に、全国で500店舗以上を展開する、安さが売りの回転寿司チェーン店『くら寿司』が4月25日、オープンした。

「場所は、ユニクロやGUといったファストファッションブランドや100円ショップのダイソーなども入る、地下2階、地上7階建ての商業ビル・銀座マロニエゲート2。ここに、くら寿司も店舗を構えることになりました」(夕刊紙記者)

レーンに流れている寿司はすべて1皿115円(税込・以下同)と、破格の安さが売りのくら寿司。休日ともなれば、ファミリー層を中心に混雑している店舗を全国各地で見かけることも珍しくない。そんな庶民の味方ともいえるくら寿司は、なぜ銀座へと出店したのだろうか。その背景を小売・サービス業界に詳しい経営コンサルタントの岩崎剛幸氏に聞いた。

「銀座出店の1番の理由は自社のブランド力の強化のためでしょう。お隣の大国・中国は経済成長しているとはいえ政治的な不安が大きい。やはり、アジアにおける東京の立ち位置は群を抜いています。その中でも銀座と言えば、商業地域としてはトップの立地。銀座にお店を構えることは、企業の信頼へとつながるのです」(岩崎氏)

治安や安全環境の観点から、日本をアジア進出の拠点に選ぶ外資系企業も多い。とりわけ銀座はブランド地域とあって、世界進出を目指す国内企業にとっても人気エリアというわけだ。アメリカ、台湾で多くの店舗を展開している国際的外食企業・くら寿司もまさにそうした立場にある。

他にも銀座の魅力はあるという。

「銀座は来街者が圧倒的に多い街ということもあって、高い売上高をあげることができます。業界内では、人出の多さから1000万人商圏とも呼ばれています。くら寿司が入るマロニエゲートビル2も1階~5階までを埋めるユニクロの会長である柳井正さんが旗振り役となって“EDLP(エブリデー・ロープライス)を掲げた。その結果、安さが売りのお店が集まり、集客力が上がっていますね」(前同)

■マクドナルド1号店出店からもわかる『くら寿司』の狙い

“安さ”を売りとしたビルに乗り込むくら寿司。しかし、銀座といえば高級店が立ち並ぶ大人の街のイメージが強い。そのようなエリアに激安店がズラリと軒を連ねたところで、勝機はあるのだろうか。

「マクドナルドが日本1号店を銀座三越にオープンしたのが1971年。当時は、確かに“アメリカの聞いたこともないファミレスが銀座に?”といった見方もありました。ただ、現在マクドナルドが日本国内で大成功しているのを見るに、当時の決断は大英断。このことからもわかるように、銀座には新しい物を受け入れる土壌があるんです」(前出の岩崎氏)

ファストフードやファストファッションと言えば安かろう、悪かろうが代名詞だった時代とは現在は一変。今や完全に市民権を得ている。それらの施設を迎え入れるだけの度量が銀座にはあるというわけだ。弊サイトは『くら寿司銀座』を訪問してみた。

4月29日、弊サイト記者がランチ時に同店を訪れると、店の外には順番待ちの人々の行列がズラリ。外国人観光客の姿も目立つ。

『くら寿司銀座』のスタッフ曰く、

「客層は外国からの訪日観光客の方と日本人の割合が半々ほど。夜の時間になると、外国人のお客様が6割ほどですね」

とのこと。

自動発券機で受付番号を取り出すと「ただいま満席です」と景気の良いセリフとともに、待ち時間77分との表示があり、大盛況の様子だ。

そんな『くら寿司銀座』にはある特別な仕掛けがある。客席にあるタッチパネルでは銀座店限定メニューを選ぶことができ、それを押すと店内にある屋台コーナーで職人が握った寿司や、揚げたての天ぷらセットを食べることができるのだ。

「インバウンド需要を見越してでしょうね。外国人に人気の寿司を載せる回転レールもくら寿司最長となる123メートル。

価格面もやはり大きい。海外のカジュアルレストランで寿司を食べれば、10貫で39ドル(約6160円)ほどです。銀座のくら寿司ですと、他店舗より少し高い1皿150円ですが、10皿で20貫食べたところで1500円。破格の安さですよね」(前同)

他にも訪日外国人向けの仕掛けか、店内には浮世絵風の絵画も。2つ下の階にある『GU』のフロアを見てみるとコラボTシャツも販売されている。

現地に行ってみると、柳井氏が“EDLP(エブリデー・ロープライス)”を掲げる商業ビル・マロニエゲート2が一体となり、『くら寿司銀座』を盛り上げようとしている雰囲気が感じられた。企業コンセプトに”Food Revolution”を掲げるくら寿司。銀座への出店という進化は、新たな客層を呼び寄せるか。

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