ぶいすぽっ!メンバーたちが確かな実力を見せつけた 『RAGE VALORANT 2024 feat.VSPO!』現地レポ

2024年4月29日にぴあアリーナMMにて、『RAGE VALORANT 2024 feat.VSPO!』が開催された。

国内最大級eスポーツイベント・RAGEがBrave groupが運営するVTuberプロジェクト「ぶいすぽっ!」のタレントをメインに据えた大会となっており、ぶいすぽっ!の所属メンバーから選抜された6人がチームを結成し、「ストリーマーチーム」「VALORANTキャスターチーム」「元プロチーム」の3チームへと挑む内容となっていた。

本連載ではここ1ヶ月ほどにわたって「ぶいすぽっ!」から選抜されたメンバーたちにフォーカスを当てた記事を執筆してきた。今回の記事はもちろん、『RAGE VALORANT 2024 feat.VSPO!』当日の取材レポートである。

なお、記事後半ではイベント後半に行われたアフターパーティーの内容に関してのネタバレを多く含むため、まだイベントを見ていないという方はその点に注意して読み進めてほしい。

■コーチ・XQQの指導を受けて実力を磨いたぶいすぽっ!メンバーたち

あらためてイベント当日までの流れについておさらいしておこう。

今回のイベント開催に際して、3月25日に開催記念生放送がおこなわれ、ぶいすぽっ!チームの特別コーチとしてZETA DIVISON所属のXQQが参加することが発表された。くわえて、ストリーマーチームにはMOTHER3、元プロチームにはClutch_Fiといった猛者が出場することが決まった。

その後、ぶいすぽっ!メンバーたちは事前に発表されていた定期練習配信にくわえて、何度となくチーム練習や個人練習をこなし、チームワーク・個人スキルともに磨いていく1ヶ月間を過ごしていった。

指定されていた3つのマップ「バインド」「スプリット」「サンセット」の攻め方・守り方をXQQからコーチングされ、すこしずつ練度を高めていく。そんな地道な練習が続いていった。カスタムマッチをプレイした後に反省会をひらき、再びカスタムマッチで対戦して反省会を開き……配信では10回以上にわたってチーム練習が組まれたが、この他にもさまざまな練習を個々人がこなしていたであろう。

練習配信を見る限り、チームとして「サンセット」の攻防・押し引きに重点を置いていたように思う。「サンセット」は2023年8月に追加されたマップで、以前からある「バインド」「スプリット」に比べれば、プレイヤー達の経験も当然浅い。そのため、XQQは「サンセット」マップ攻略をメンバーに伝授するために、ボムの置き場所・引き場所・エリア取りをイチから教えていった。

競技シーンでは研究が進んでいるため、最近開催されたプロ同士の対戦をケースとして見せながら、「なぜこのプレイヤーはここでこのスキルを出したか?」「リテイクするタイミングと目安は?」といった細かな部分をぶいすぽっ!メンバーに質問・説明していった。

ZETA DIVISIONのコーチとしてチームを世界大会3位にまで導いたXQQが、どのような戦術を考え、どのようなプレイングを良いと考えているのか。世界の最前線で戦ってきたコーチの思考を知れるというだけでも、このイベント・企画は視聴者にとって貴重な機会だといえよう。イベントが終わったあとでも、『VALORANT』プレイヤーならチェックしたくなるような内容になっている。

そんなXQQの考え・狙いを実行していこうとするぶいすぽっ!メンバーの熱量も非常に高い。何度かメンバーと使用キャラを変えながら、さまざまな形のメンバー構成を模索していくことになった。

デュエリストである胡桃のあは、これまで殆どプレイしていなかったフェニックス・ヨルの2キャラをマスターするために躍起となり、白波らむねはブリムストーン・オーメンといったコントローラー系キャラを使って味方・敵の動きを予測しながらのプレイングを身に着けようと試みていた。

また、チームリーダーであり、これまで配信活動の大半でソロ配信をつづけてきた夢野あかり、1ヶ月前にデビューしたばかり新人・紡木こかげなど、チームでも指折りの腕前をもつメンバーらがこの練習期間を通してチームワークやコミュニケーションを密にしていったことも、とても重要だったろう。

彼女たちにとってこの期間は、1人でプレイしているだけではほとんど味わうことのない「チーム5人でのプレイング」という武器を磨き上げていく濃密な1ヶ月だったといえる。

ZETA DIVISIONが運営する育成部門「VALORANT ACADEMY」メンバーとのカスタムマッチでは、中学生・高校生ながらゲーム内最高ランク・レディアントレベルの腕前を持つ面々に思いきり負けてしまうものの、挫けることなくチーム力を磨き上げていったのだ。

■対戦相手を圧倒してみせたぶいすぽっ!メンバーたち

そうして迎えた大会当日。その磨き上げたチーム力で、対戦相手を“粉砕”していくことになった。

まずはキャスターチームとの第1戦。この1ヶ月のカスタムマッチでたびたび対戦相手となっていたyueへの「ヘッドライン合わせ」(※)イジリを挟みつつ、一見するとリラックスしているようにも思えた5人。しかし、実際にはどこか口調が落ち着かず、少し緊張気味のメンバーも何人かいたようにも感じた。

(注釈:yueが数年前にSNSへ投稿したとある構文。チーム練習の際に相手として参加した際、チャットにそれを貼り付けたことでぶいすぽっ!メンバーからかなり気持ち悪がられた。そのときの意趣返しとして、この日はぶいすぽっ!側がそれをイジっていた)

XQQは「1キルとったら緊張は取れるから」と話していたが、まさにその言葉通り。序盤のピストルラウンド、中盤での少人数戦など、キャスターチームとの打ち合いを次々と制し、5人が死ぬことなくラウンドを取る「パーフェクト」を連発。

13本先取のマッチを9-3で攻守交代で折り返した後も気を緩めることなく圧倒してみせた。

この戦いでのハイライトといえば、14ラウンドから16ラウンドにかけて、胡桃のあが見せたプレイングだろう。以前からスナイパーライフルを得意としていた彼女だが、この3ラウンドではオペレーター/アウトローを使って中遠距離から何人もキルし、スモーク越しに相手をキル、しまいにはスキルを使って敵を発見したあとに近距離ながらもオペレーターを持ち替えてキルしてみせるなど、とんでもないハイライトシーンをうみだした。スコア面においても、フタを開けてみれば20キル以上を叩き出し、みごとな圧勝劇の立役者となった。

2戦目に登場したストリーマーチームは、トナカイト、ボドカ、鈴木ノリアキなどぶいすぽっ!メンバーとも旧知の仲のメンバーが揃っており、特に夢野にとってはMOTHER3と、白波にとってはゆふなと、自身の配信活動でも欠かすことのできないメンバーとの対決にもなった。

旧知の間柄、だからこそ負けられない。そうしたムードでスタートしたわけだが、ここでも胡桃のあの勢いが止まらない。

この日のために仕上げてきたヨルを使って相手をかき乱し、おなじくデュエリストを扱う夢野とブリーチを使う紡木とともにストリーマーチームへと襲いかかり、テックポーズを挟みながらもスコア7-0と圧倒していったのだ。

紡木が途中まで9キル0デスというスコアを叩き出せば、胡桃がエース(1人で敵5人全員をキルする)を決めてみせるなど、ぶいすぽっ!チームがこのまま一気に勝負を決めてしまうかと思われた。

先ほどと同じ9-3で攻守交代で折り返すが、対戦前にトナカイトが「Aサイトで待ってるからな!」と口撃していたことをうけ、ぶいすぽっ!チームがAラッシュを狙ったところ、ストリーマーチーム残り4人がうまく周囲から襲撃し、まさかのパーフェクトで後半戦をスタートした。

この奇襲をキッカケにして1-4と勝利を重ね、合計10-7まで試合をまくったストリーマーチーム。ここで待ったをかけたのが、やはり胡桃のあだった。

Bサイト壁際の耐えポジションからの4キルでマッチポイントまで到達。ラストラウンドはチーム内でもっとも後輩である紡木が粘りに粘り、ヘルプに来た八雲べにが1vs2の状況を制し、13-9で2勝目をものにした。

元プロチームとの最終戦は、まず元プロチームのキャラピックに会場がおどろかされることになった。SCARZ・Crazy Raccoonに所属して『VALORANT Champions 2021』まで進出したAdeが最新キャラのクローヴを、『Overwatch』のプロリーグ「Overwatch League」に日本人初めて参戦したta1yoがネオンと、なんともイレギュラーかつ変則的なキャラピックをしてみせたのだ。

序盤はサイファーを使うClutch_Fiのラーク(味方から離れて単独で行動する遊撃役)が刺さり、2-5と元プロチームがリードすることに。その後タイムアウトを取ったぶいすぽっ!チームにXQQがチームにアドバイスし、戦略や狙いを整理して絞らせると、タイムアウト後は立て続けに3ラウンドを連取して、5-5まで持ち込んだのだ。

その後の両チームは、ハイライトを連発していく。SurugaMonkeyが2段(一箇所に対してふたりで待ち構える戦術)を組んだぶいすぽっ!チームを2発で倒すなどのクラッチプレイを決めれば、ぶいすぽっ!チームも磨き上げた連携でラウンドを獲得していき、一進一退の攻防が続いた。

最終的には、元プロチームが9-13で勝利を収めた。両チームを分けた差は、試合後にぶいすぽっ!メンバーとコーチのXQQが語っていたように、少人数戦における地力の差だったといえよう。相手との撃ち合い・スキルの当て方・どのように立ち回っていくかなど、とっさの勘と経験はさすがに元プロチームに大きな分があったようだ。

とはいえ、SurugaMonkeyとClutch_Fiが対戦が終わったあとのインタビューで「負けるかと思った」「もしもBO3だったら負けてた」と口にしたように、ぶいすぽっ!チームの完成度・威圧感はかなりのものがあったようだ。

3戦ともに見どころの多い試合となったわけだが、それ以外でもMC・実況・解説を務めたOooDaとTORANECOのコメント・各メンバーへのイジリが会場で大ウケするなど、真剣勝負をしっかり解説しつつも様々なユーモアを挟み、より楽しく観戦できる空間が生み出されていた。

■アフターパーティでは一点和やかなムード 笑いの絶えない雰囲気に

ぶいすぽっ!チームを主役にした対戦イベントを終え、その後は元プロ・ストリーマー・キャスター陣らをゲストにしたアフターパーティが開催された。

3チーム対抗のゲームイベントとなっており、Aチームには夢野・紡木・XQQ・MOTHER3・SurugaMonkey、Bチームには猫汰・胡桃・ボドカ・鈴木ノリアキ・ゆふな、Cチームには八雲・白波・Clutch_Fi・トナカイト・うぉっか、このようにチーム分けされた。

ステージ上で軽くスキップをするXQQ、「カワイイの代名詞、ノリアキです」と自己紹介する鈴木、「他のチームはキュートかもしれないですけど、このチームはセクシーとギャルなんですよ」というトナカイトの振りから、「脱いじゃおっかなぁ~」と上着を脱ぎだす八雲など、チーム紹介の時点からボケとツッコミが飛び交い、笑いの絶えない状況となった。

まず第1試合目は以心伝心ゲーム。会場のお客さんがボードを使って提示したお題に対し、5人が回答を合わせるというものだが、これが意外なほどに合わない。そのなかで「XQQコーチのチャームポイントは?」という問題が上がり、XQQ本人が自身のチャームポイントをあげなくてはいけないという地獄のような展開となり、会場が笑いに包まれた。

ちなみに、XQQは自身のチャームポイントは「声」と回答。練習配信のなかでも自身の声について話題に上がる事が多く、きっと回答してくれる……と予想してたのだろう。そんな期待とは裏腹にチームは「声」をあげることなく、ポイントを稼ぐことができなかった。

逆にとても美しい回答をみせてくれたのが、「今日のMVPは?」というお題に対するぶいすぽっ!メンバー6人の回答だった。A・B・Cチームとそれぞれに回答し、確認してみると、3チーム2人ずつに振り分けられていたぶいすぽっ!メンバー全員が「みんな」と回答していたのだ。

あまりにも綺麗かつ美しい答えに、チーム関係なく元プロ・ストリーマーの面々が「これはやってるわ」「マネージャーに裏で『書け』って言われたでしょ?」と驚きつつイジってしまうほど。一心同体とはまさにこのこと、ぶいすぽっ!の美しいチームワーク・友情がそこにあった。

つづく2試合目は「激レアさんを探せ!」ゲーム。会場のお客さんにむけて3回にわたって質問をして、6人以下まで絞っていくというゲームだ。

このゲームの面白いところは、質問に該当する者だけが残っていくという形になるため、意外性のある質問でかけあわさった“とんでもない人物”が残る可能性がある。逆に、たった1個の質問のみに該当する人物も存在することになり、一発で当てることができれば非常に盛り上がる。

Bチームが回答を考えていた際に、猫汰が「うぉっかさんのツイートみたんだけどさ、今日のイベントに『痛車』で来てるひとがいるんでしょ? それ聞いてみたら?」とアイディアを出し、「ぶいすぽっ!の痛車を持っているひとはいますか?」と会場に聞いてみることに。

これが見事に刺さり、会場も大盛り上がり。鈴木ノリアキが「オレ、あの車秋葉原で見たことあるよ。ってか同じ駐車場に停めたことある」と言うと、これにも会場が大いに沸くことになった。

最後の試合は「ジェスチャーゲーム」だ。会場にいる元プロ・ストリーマーの男性陣がお題に沿ってジェスチャーし、ぶいすぽっ!メンバーの2人が回答するというもの。

3チームともにスポーツにまつわるお題からチームメンバーにまつわるお題へと変わっていくという流れになっており、「これぞ!」という動き・ジェスチャーで答えさせたかと思いきや、「どうすればいい?」と思わせるお題でコミカルなジェスチャーをさせようとするものもあった。

Cチームはとあるお題で引っかかってしまい、トナカイト・八雲・Clutch_Fiが猛烈に抗議すると、Bチームのボドカが「色々うまくいってなかったし、もっかいじゃない?」と優しく尊重する姿勢を見せる。会場も拍手でそれに応えたことで、再挑戦することに。

だが問題の途中から再スタートしたことで、高難易度なお題が連発。この後に回答したAチームが次々と答えていったのをみて、「いや(Aチームのお題)『野球』って! 俺(のお題)『イナバウアー』!」と、難易度の落差に対してトナカイトが不満気味にツッコみ、大笑いを誘っていた。

詳しい内容は割愛するが、ABEMA PPVで視聴チケットを購入すればアフターパーティも見ることができるので、興味のある方はチェックしてみてほしい。

こうしてアフターパーティもさまざまな見どころやお笑いシーンを生み出し、無事に終了となった。

FPSゲームの真剣勝負とバラエティ企画を組み合わせたイベントはこれまでも何度か開催されていたが、ぶいすぽっ!メンバーをメインに据えてファンが一同に介するイベントがここまでの成功を収めたことは、『RAGE』における新たな事例として意義深いことだったのではないだろうか。今後、彼女らを中心に据えたイベントがふたたび開催される可能性は十分にありそうだ。

〈写真クレジット:『RAGE VALORANT 2024 feat.VSPO!』〉

(取材・文=草野虹)

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