英がウクライナに供与の武器でロシア領内攻撃、英外相が容認か

イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相は2日、ウクライナ・キーウを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。キャメロン外相は、イギリスが供与した武器をどのように使うかはウクライナ次第だと述べ、ウクライナにはロシア領内の標的を攻撃する権利があると主張した。

キャメロン外相は、イギリスは年間30億ポンド(約5800億円)規模の支援を、必要な限り続けると述べた。

「ロシアがウクライナ領内を攻撃している以上、ウクライナが確実に自国を防衛しなくてはと思うのはよく理解できる」

そして、ウクライナに攻撃を仕掛けたのはロシアの方で、ウクライナには「ロシアに反撃する権利が間違いなくある」と述べた。

キャメロン氏の発言について、ロシアは「またしても非常に危険な発言」だと非難した。

クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は、「ウクライナでの紛争をめぐる緊張を直接的にエスカレートさせるもので、欧州の安全保障に脅威を与える可能性がある」と述べた。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、西側諸国がロシア政府への「ハイブリッド戦争」に関与していることを認めるに等しい発言だと述べた。

キャメロン氏はイギリスの武器がロシア領内の標的攻撃に使用されることを、直接支持したわけではない。

しかし、イギリス政府はこれまで明言しないまでも、長距離ミサイル「ストームシャドウ」などの武器はウクライナの主権領内でのみ使用されるべきとの考えだと、一般的に受け止められてきた。ロシア占領下のウクライナ南部クリミアでは、ロシア黒海艦隊への攻撃など、ストームシャドウの使用が成功した例はいくつかある。

ところが今回、リシ・スーナク英首相がウクライナに当面の間、年間30億ポンド規模の軍事支援を行うと約束したことを受け、この支援をどう扱うかはウクライナ次第だと、キャメロン氏は強調したかったようだ。

アメリカは紛争の激化を恐れ、ロシアの石油精製所に対する攻撃を中止するようウクライナに求めたと報じられている。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は今週、「ロシア軍が前線を突破した場合、そしてウクライナから要請された場合」、ウクライナへの地上部隊派遣を西側諸国は「合法的に」検討しなければならないと述べた。

ロシアのペスコフ報道官は、英誌エコノミストに対するマクロン氏のこうした発言について、「非常に危険な傾向」の一環だと批判した。しかしマクロン氏は、ロシアがウクライナで勝利すれば、欧州の安全はなくなると、インタビューで言明している。

ロシア軍、ウクライナ東部で攻勢強める

ロシア軍は最近、ウクライナ側の武器や人員が不足している状況につけ込み、ウクライナ東部でいくつかの村を占領した。

ウクライナの情報当局はまた、ロシアが北東部ハルキウ州やスーミ州での今夏の攻撃に備えているとみている。

ウクライナ国家警備隊のオレクサンドル・ピヴネンコ司令官は最近、ロシアが「不愉快な不意打ち」に備えてひっそりと、月に3万人を兵士として採用していると警告した。

ハルキウ市のイホル・テレホフ市長は、3日にロシア軍の空爆があり、高齢の女性が自宅で死亡したほか、乗客を乗せた路面電車も攻撃を受けたと述べた。

ウクライナ軍によると、ロシア軍の当面の目標は、壊滅的被害を受けた東部の町バフムートの西15キロにあるチャシウ・ヤルだという。この町は戦略的に重要な高台にある。

ウクライナ政府関係者は、ロシア軍がチャシウ・ヤルを掌握した場合、クラマトルスクやスラヴャンスクといった東部の主要都市への攻撃が可能になると考えている。ロシア軍は5月9日の第2次世界大戦の対独戦勝記念日を前に、ぜひともチャシウ・ヤルを掌握したいと考えている可能性がある。

しかし、ウクライナ軍の報道官は、ロシア軍がチャシウ・ヤル郊外のシヴェルスキー・ドネツク・ドンバス運河まで達した事実はないとしている。

ロシアは3日、この2週間でウクライナ東部の3つの村を占領したと主張した。ロシア軍報道官のナザール・ヴォロシン中佐によると、同軍はオチェレティネ村に足場を築いたが、ウクライナ兵が追い出そうとしているという。

ロシアが2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以降、イギリスはウクライナに戦車や精密誘導ミサイル、防空システムに至るまで、数十億ポンド相当の軍事支援を行ってきた。

1年前には、射程が250キロ以上の長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」の供与を始めたことを認めた。

こうした中、ウクライナのデニス・シュミハリ首相は、ロシア軍の度重なるミサイル攻撃で大きい被害を受けたウクライナのエネルギーインフラの復旧支援を、キャメロン外相に要請したことを明らかにした。

(英語記事 Kyiv can use British weapons inside Russia - Cameron

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