【J2「J1昇格戦線」】仙台、終了直前19歳MFの果敢なドリブルで決勝点PK奪取 森山監督「最後の最後にみんなが執念を見せてくれた」(2)

大阪府堺市出身、川崎フロンターレからベガルタ仙台に育成型期限付き移籍中の19歳MF名願斗哉  撮影/中地拓也

■仙台は山口との6ポイントマッチに臨んだ

「杜の都」が揺れた。

J2リーグ第13節が5月3日に一斉開催され、11位のベガルタ仙台は6位のレノファ山口FCをホームに迎えた。順位こそ「5」離れているが、両チームの勝点差はわずかに「1」しかない。追いかける立場の仙台も、今日勝てば順位をあげることができる。6ポイントマッチの位置づけだ。

森山佳郎監督が指揮する仙台は、11節の清水エスパルス戦、前節のジェフユナイテッド千葉戦を落とし、今シーズン初の連敗を喫した。今日のホームゲームで連敗を止めるとの指揮官の思いは、ベンチメンバーからうかがえた。開幕節から前節の千葉戦まではCBを控えさせていたが、この日はいなかったのである。DF登録は右SB真瀬拓海ひとりで、GKを除く5枚はMFとFWとした。CBを終盤に投入しての「逃げ切り」よりも、ゴールを「取り切る」ことを念頭に置いていると理解することができた。

試合は20分に動く。ペナルティエリア外からのシュートに反応した山口MF池上丈二が、グラウンダーの一撃に足を伸ばしてコースを変える。これがGK林彰洋の逆を突いた。仙台はアンラッキーな形の失点で、追いかけることになってしまう。その後もセットプレーから際どい場面を作られる。3試合ぶりの勝利のシナリオは、書き出しもままならない。

■山口の堅守を土壇場でこじ開けた!

山口はここまでリーグ最少3位の9失点で乗り切っており、アウェイでは失点がわずか「3」だ。しかも、3試合連続のクリーンシートを達成している。

相手の手堅い守備を、仙台はいかに崩すのか。相手ゴールへ迫るよりも自陣ゴールで跳ね返す場面が続いた前半のアディショナルタイムに、ようやく決定的なシーンを作り出す。

MF長澤和輝のゴール前への斜めのパスを、FW中島元彦がCBの間へ潜り込んでヘディングで合わせた。背番号7の2試合ぶりのシーズン3得点目で、仙台は同点に追いついた。

同点に持ち込んだ仙台は後半、相手2トップの圧力を受けながらも、攻撃の回数を徐々に増やしていく。時間の経過とともに山口の守備ブロックが延びたことに加えて、MF相良竜之介や中島が相手を剥がしていったからだった。しかし、決定的なシーンで決め切れない、プレーの選択が最適でない、プレーの選択が遅い、といったことから2点目をあげられない。

仙台の森山監督は76分、84分、90分と交代カードを切る。これが、劇的なドラマを呼び込んだ。後半アディショナルタイムの90+1分、途中出場したばかりの19歳MF名願斗哉が得意のドリブルで仕掛けてPKを獲得する。これを途中出場のFW中山仁斗が決め、仙台は90+3分に前へ出る。もはやスコアは動かず、3試合ぶりの勝利をつかんだのだった。

試合後の森山監督は引分けも覚悟したことを明かしつつ、「最後の最後にみんなが執念を見せてくれて、ラストプレーで逆転できて。ホントにしびれましたね」と興奮を抑えるように話した。6ポイントマッチを制した仙台は、勝点を20として6位に浮上している。

次節は中2日で鹿児島ユナイテッドFCとのアウェイゲームだ。16位に位置するチームを確実に叩き、J1昇格戦線にしっかりと加わっていきたいところだろう。

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