フェラーリの新たなるフラッグシップ「12 チリンドリ」がワールドプレミア! 電気もターボも使わずに最高出力830psを発生する6.5L V12を搭載

2024年5月3日(現地時間)、フェラーリは新たなフラッグシップとなる「12 Cillindri(ドーディチ チリンドリ)」およびそのオープンモデルの「12 チリンドリ スパイダー」を、米国のマイアミビーチで開催されたエクスクルーシブなイベントで世界初公開した。

リファインされたV12エンジンに8速DCTを組み合わせる

その名もズバリ、「12気筒」を意味するフェラーリの新たなフラッグシップ、「12 チリンドリ」。

12 チリンドリという車名は、イタリア語で「12気筒」のこと。それはつまり、フェラーリが初めて世に送り出したエンジンである自然吸気のV型12気筒を継承していることを意味している。

フロントミッドシップ搭載される6.5LのV12エンジンは、一部はスペシャルシリーズの に採用されたものだが、新バージョンとなった。最高出力は830ps、最大トルクは678Nmを発生。しかも最高回転数は9500rpmに引き上げられた。このパワートレーンには、F1テクノロジーがフィードバックされている。

このエンジン、ほとんどの改良点はトルクデリバリーの最適化に集中された。可変ジオメトリー吸気ダクトやアスピレーテッド トルク シェイピングなどにより、加速に影響を与えずにトルクの感覚を向上させ、ドライビングプレジャーを高めた。しかも、新たな排気システムはEU6Eなど最新の排出ガス規制に準拠するように開発されている。

組み合わされるトランスミッションのDCTは8速(812は7速)となり、21インチの大径タイヤの採用もあり、低速ギアでのタイヤのトルクを増大させて加速性能を向上し、また高速での航続距離を伸ばしている。さらに後輪操舵も備え、高速コーナリングの安定性や低速時の取り回しを向上させている。

今までのモデルとは異なる、シームレスなスタイリング

リアまわりの三角形のテーマや細いテールランプなども特徴的だ。

フラヴィオ・マンツォーニとフェラーリ スタイリングセンターによるチームが手がけたスタイリングは、1950〜60年代の伝統的グランドツアラーをインスパイアしたものだ。先代にあたる やコンペティツィオーネとは異なり、デザインはクリーンなラインで構成されている。シルエットは非常にすっきりとしており、ディヘドラル(上反角)形状からテールまで流れるように続く。往年の名車 を彷彿とさせる。

リアフェンダーはたくましく力強い印象だが、フロントフェンダーは流麗な造形のボンネットと一体化している。フロントまわりでは伝統のグリルは廃され、巻きついた1本の帯の中にヘッドランプが組み込まれ、ブレード状のデイタイムランニングランプが備わっている。

テールランプもリア全体を横切る凹んだブレードの中に埋め込まれている。またリアスポイラーの代わりにリアスクリーンと一体化した2個の可動フラップを採用して、特徴的な三角形のテーマを作り出した。ボディカラーのフレーム表面をトレースして、リアウインドーのテーマと共鳴させ、黒いスクリーンを特徴とするキャビンの残りに部分に有機的に溶け込ませる手法も独特だ。

最近のフェラーリ車らしいデュアルコクピットも採用

12 チリンドリのコクピットには、3つのディスプレイが備わっている。

インテリア デザインは、左右へと回り込んでドアパネルの内張りの溶け込むダッシュボード上面、中央部、フットウエルとシートを含む部分の3つの異なるレベルに分かれている。これらは明確に区切られ、色と素材の組み合わせでデュアル コクピットの効果を強めている。これは、最新フェラーリの や にも採用された、デュアル コクピット アーキテクチャーからインスパイアされている。キャビンはほぼ左右対称の構造だ。

センタートンネルのパネルはダッシュボードから伸び、そこから延長してきたように見える。センタートンネルの内張りはアームレストとなり、最近のフェラーリ車同様にY字型をした金属のエレメントの中に、アイコニックなシフトゲートが配されている。

車内の居住性も考慮され、面積の大きな着色ガラスルーフも採用。キャビンの明るさと室内の開放感を格段に向上させ、夏でも冬でも最適な熱効率を確保している。

メーターパネルは15.6インチ、センターダッシュに10.25インチ、そして助手席の前に8.8インチと、3個のディスプレイで構成された新しいヒューマン マシン インターフェースも導入。静電容量式のステアリングホイールや、スマートフォンとの接続システムやワイヤレス充電マットなども標準装備する

オープンでの200km/h走行も快適な、12 チリンドリ スパイダー

リアセクションのデザインは、写真のスパイダーとクーペではかなり異なる。

今回、同時に発表された12 チリンドリ スパイダーの外寸とホイールベースは、ベルリネッタ(クーペ)の12 チリンドリとまったく同じだ。車両重量の増加は、わずか60kgにとどめられている。基本的なスタイリングはベルリネッタと共通だが、リアの2個のフィンや、バックペイントを施したポリカーボネート製のクオーターガラスなどで差別化されている。

リトラクタブル ハードトップはアルミニウム製で、開閉に要する時間はわずか14秒。しかも車速が45km/hまでなら走行中でも開閉が可能だ。シート後方のリアスクリーンは電動で高さを調整でき、ルーフを開放して200km/hで走行してもキャビンでは通常の会話ができるほど快適性は保たれている。

フェラーリが「ひと握りの人のために作られたモデル」と謳う、12 チリンドリ & 12 チリンドリ スパイダー。欧州での車両価格は、ベルリネッタが39万5000ユーロ(約6480万円)、スパイダーが43万5000ユーロ(約7130万円)から。デリバリーは、ベルリネッタが2024年第4四半期から、スパイダーが2025年第1四半期からとされている。なお、現段階では日本仕様の車両価格や導入時期に関しては、アナウンスされていない。

左右対称のデュアル コクピットを採用したインテリア。シートの形状も独特だ。

●全長×全幅×全高:4733×2176×1292mm
●ホイールベース:2700mm
●乾燥重量:1560kg(1620kg)※いずれも軽量オプション装着車
●エンジン:65度V12 DOHC
●総排気量:6496cc
●最高出力:610kW(830ps)/9250rpm
●最大トルク:678Nm(69.1kgm)/7250rpm
●トランスミッション:8速DCT
●駆動方式:フロント縦置きトランスアクスルRWD
●燃料・タンク容量:プレミアム・92L
●最高速度:340km/h
●0→100km/h加速:2.9秒(2.95秒)
●0→200km/h加速:7.9秒(8.2秒)
●タイヤサイズ:前275/35R21、後315/35R21

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