「あぁ、こんな場所でするなんて…」秘密の不倫、陶酔の果てに全て失った女性の末路は【エリート銀行員たちの不倫事情】後編

メガバンクで働くユリさん(仮名・40歳)は、部下の送別会に参加します。そこで営業部本部で働くシュンジさん(仮名・45歳)に出会いました。彼からの意味深な言葉が胸に刺さったまま帰宅すると、そこにはあるLINEが来ていて……。激動の後編をご紹介します。

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彼の家は、なんと…

「家に帰ると、あるグループLINEが作成されていました。辞めていく女性行員が、飲み会に来てくれたメンバーを次々に招待したみたいです」

退職後も繋がりを保って、今後のビジネスに有利に使うつもりだろう。そう思って苦々しくLINEを眺めていると、メンバーにシュンジさんの名前を発見しました。少し迷った後で、お酒の力もあり「本日ありがとうございました」とだけ送りました。

「お酒の力って偉大ですよね。普段は絶対にやらないようなこともできてしまう。この時はお酒を言い訳につもりするつもりでした。」

しかし、この後でアルコールでは言い逃れはできない出来事が起こるのです。

「彼は『今夜は月が綺麗ですよ』と、自宅のベランダから空の写真送ってくれました。月よりもあたりの景色に目が行きました。映り込んでいた建物から、私の近所のマンションだと分かったんです」

そこは最低でも家賃が100万円はかかる部屋でした。「〇〇ガーデンですよね?うち、近所です」と送ると『そうなんですね。今度遊びに来てください』と返事が来ました。

「やましい気持ちはない。ただ高級マンションの中身を見てみたいだけ。そう言い聞かせて、LINEで作戦会議を始めました」

お互い子供がいるため、平日に有給を合わせて取ることになりました。彼の奥さんはPTA活動に精を出しているらしく、会議で確実に家にいない時間帯があるとのこと。日取りが決まり、ユリさんは慌ててエステや美容院の予約を入れました。服も買わなくてはなりません。何より大事なのは、仕事を終わらせなくてはなりません。時間がない……と思いながらスケジュールを詰め込みました。

あっという間に、Xデーがやってきました。これが彼女にとって、様々な意味での運命の分かれ道になるのです。

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ひみつの不倫…ベッド以外の場所で結ばれる2人

「オートロックを解除してマンションに入ると、ぎょっとしました。廊下に様々な物が置かれているんです」

三輪車、ロードバイク、ベビーカー、段ボールもありました。彼は『このマンションは外国人の方も多いので、ルールを理解していない人もいるんです』と弁明します。彼女はマンション近辺にたくさんの自転車が乱雑に置かれていたことを思い出しました。

部屋に入ると、リビングはとても広々としていて、大きなガラス張りの窓からは太陽の光がたっぷりと入ってきます。ベランダも広く、テーブルやチェアが置いてありました。珍しい間取りであちこち眺めていると、『気になるようでしたら、家の中をご紹介しましょうか?』と彼から話しかけられました。頷くと、手をひかれて家の中を案内されました。

「洗面所に入って、ここには住めないなと思いました。手洗い場のすぐ横にトイレがあるんです。その横には、ユニットバスがありました。」

『ここはヨーロッパのデザイナーが建築したので、間取りも欧米風なんですよ』と彼は説明します。もちろん清潔で広いことには変わりはないのですが、学生時代から「バストイレ別」で物件を調べていたほど風呂好きなユリさんにとっては、大きな痛手です。「外から見る景色と、実情は違うんだな」とぼんやりと考えていると、背後からシュンジさんに抱きつかれました。彼はユリさんの身体に手を這わせ、愛撫は胸から下半身に移っていきます。

「そのまま洗面所で最後までしました。リビングは窓が広すぎて、外から見られたら困るので……」

鏡の前で求め合う二人… 次ページ

彼との行為は鏡の前ということもあり、とても興奮するものでした。体を合わせた物同士に漂う親密さと、情事後の気だるさを保ちながら、2人はリビングでゆったりとワインを飲んで午後を過ごしました。

お土産にと渡された高級チョコレートを手に、ほろ酔い気分で彼女は家路に着きました。家に着いてすぐに、彼女はLINEで彼に「シュンジさん、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」とお礼を送りました。

「行動が早い。それが私の唯一と言ってもいい長所でした。ただしお酒を飲んでいて、判断が鈍ってしまったんでしょうね」

キッチンでコーヒーを淹れ、チョコレートに舌鼓をうっていたところ、彼女のスマホに着信がありました。LINE電話で、シュンジさんからです。浮かれた気持ちで電話を取ると、彼は緊迫した声で「あのメッセージ、すぐに消した方がいいかもしれない」と言います。

「LINEを見返してみると、グループLINEにメッセージを送っていたことが分かりました」

まさかの誤爆。翌朝、出社すると… 次ページ

時すでに遅し。既読が5人ついています。「業務中なのに、LINEなんて見てるんじゃないわよ」と課長らしい顔を作ってみたものの、すぐに引っ込めて「送信取消」を行います。この課長という役職も長くないかもしれない……そう考えた時、ふと「独立」という言葉が頭に浮かびました。

翌朝、オフィスに出社すると、すぐに支店長に別室に呼ばれました。LINEグループ内の誰かがご丁寧に本部に通報したようで、近いうちにリスク管理部が調査に来るそうです。

「私も彼も、まず出世はないでしょうね。彼には申し訳ないですが、ちょうど良かったかもしれません。家賃100万円のマンションも中は住みにくそうだし、独立について色々調べていると茨の道だって分かったんです。他人を羨ましがる癖をやめて、軸を持たないといけないと気づくことができました」

彼は特に怒った様子もなく、電話越しに謝り倒すユリさんに『別に良いですよ。僕も送り間違いは何度もしたことがあります』と淡々としていました。彼の一族は病院を経営していて、会計士資格を持っている彼は「監査役員」としての収入があり、銀行員の収入はあまりアテにしていないようです。

「40歳を過ぎた今、自分にとって本当の幸せは何か、軸を作り直そうと思います。人生はいつだってやり直せるし、今が生きている中で一番若いですから」

そう語るユリさんの笑顔には、同僚の独立を妬んで居酒屋の隅でビールを飲んでいた頃の面影は、少しもありませんでした。

<文/綾部まと>

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