「まだこの世にないもの作りたい」発明日本一の高校生 独創的な発想はどこから?自由な校風で才能輝く

新しい時代の風を感じさせる若者にスポットを当てる「次世代にチューモク!」。全国の児童生徒が発明した作品を競う大会で日本一になった高校生が、山口県宇部市にいます。独創的な発想は、どこから生まれてくるのでしょうか?

奥野粋子アナウンサー
「こんにちは~」
山根康輔さん
「こんにちは!」

全日本学生児童発明くふう展で最優秀

山根康輔さん、山口県宇部市に住む高校1年生です。「全日本学生児童発明くふう展」で今年入賞した作品157点から、最優秀賞にあたる「恩賜記念賞」を受賞。2回目の応募にして、全国の頂点に立ちました。

山根康輔さん(当時・藤山中学校3年生)
「まだこの世に今までにない、新しいものを作ることをテーマに考えました。これからも目に見える動くものなどを作っていきたいと思います」

360度・自由自在に動くタイヤ?!

去年発明したのは、360度自由自在に動かせる「オムクロタイヤ」です。よく見ると、ベルト部分に小さなタイヤが埋め込まれていています。

いま重機などに使われているタイヤは、向きを変えるために何度も切り返す必要があります。「オムクロタイヤ」は前後左右、滑らかに動きます。これまで世に存在しなかった唯一無二のタイヤを生み出しました。独創的な発明品はどのようにして生み出されているのでしょうか?

パソコン・3Dプリンターを駆使

まずは「設計」から。パソコンを使って、頭の中に思い描いたものを形にしていきます。

山根さん
「穴を開けたりとか、切り取ったりできたり」
奥野アナ
「もう形になりましたね」
山根さん
「あとは角を丸めたりとか、そんな感じでできたりします」
奥野アナ
「だから滑らかな曲線も描けるんですね」

これを繰り返すことで、複雑なパーツが形になるといいます。

実は…3Dプリンターも自作!

奥野アナ
「こちらが?」
山根さん
「作業場です、これが3Dプリンター。メインの3Dプリンターと小さい3Dプリンターがあります」

3Dプリンターはパソコンで設計したものをそのまま生み出すことができます。設計図のデータを3Dプリンターに送ると、設計通りの形が樹脂で生み出されていきます。

奥野アナ
「3Dプリンターは結構なお値段しますよね?」

山根さん
「といいつつ、本来の完成品は20万とか50万とかなんなら100万いっちゃうんですけど、自分で1からつくって調整も自分でするので5万円…そんなにしないかな、3万とか」

層を重ねて作り出す小さなパーツでも、30分ほどかかるそうです。これをいくつも組み合わせて1つの作品ができあがります。

発明日本一高校生の原点は?

山根さんの科学に対する興味は、小学生の頃にさかのぼります。

山根さん
「温泉に行ったときにツバメがいて、ツバメのひながいて、欲しくなって。でも持って帰るわけにはいかないから、欲しい欲しいって言っていたら、うずらを孵化できるらしいって聞いて」

うずらの卵からひなを育てる

最初に取り組んだ研究は「うずら日記」。小学3年生のときです。ふ化器と有精卵を買ってひなを孵化させ、育てました。これが、身近な疑問を探究していくきっかけになりました。

山根さん
「やりたいから発明品を作っているんで楽しいですね。好きなことをやってきたらこうなっていったみたいな」

小学2年生のときからプログラミング教室に通い、イメージを形にすることに取り組みました。今も知識と技術を学び続けています。

高校生活と研究、どう両立?

山根さん
「Xは2より小さくて5より大きくなります」

実は山根さんには、学校生活と好きな研究を両立するための自由な時間があります。去年の春開校の、山口松風館高校です。県内初、午前・午後・夜間の3部に分かれた定時制の学校です。必修科目のほか、選択科目から授業を選べるので、自分の興味や進路の希望に合わせて学べます。

山根さんは午前の部に通っていて、学校は午前9時に始まり、正午過ぎに終わります。この時間割りで、4年で卒業することを目指しています。

午前で授業終え「好きなこと」に没頭

昼に授業が終わると、午後からは自由時間。3年で卒業する高校生と比べると、好きなことに時間が使えます。

山根さん
「自由な校風なので、自分の好きなようにというわけではないけれど、気軽に過ごせるので好きです」

一方、中学生のときには学校に通うのが嫌だった時期があったといいます。

山根さん
「完全に決められているというか、制服がいやだったりしたので…。まぁ制服がいやだったんだけど…笑」

「1人部活」で放課後も充実

いまは窮屈に感じることもなく、学校生活が輝いています。いま山根さんが夢中になっているのがロードバイクです。「1人部活」と呼び、学校から帰ると毎日2、30キロ走っています。

山根さん
「風を浴びるのも気持ちいいです」

時には宇部市の自宅から山口市の高校まで、1時間半かけてロードバイクで通うこともあるといいます。

「好きなことで人のためになれば」家族も見守る

母親の友紀子さんはどのように感じているのでしょうか。

母親・山根友紀子さん
「何をしていても常にそのときに楽しいことをするっていうスタンスみたいな感じなので、何をしていても楽しんでいるように見えます」

「枠にとらわれない自由を息子に教わる」といいます。

由紀子さん
「人付き合いもとてもいいし、人のためになることっていうのは昔から好きだったと思うので、好きなことを通してそういうことができればいいかなと思っています」

山根さんの将来の夢は「エンジニア」。自分のノウハウを子どもたちに伝えたいとも話します。これからどんな発明が生まれてくるのか。斬新な発想を生かし、創作に力を注ぎます。

ことしの新発明品もスゴイ

実は山根さん、ことしの夏、新たな発明品を作り、県内の大会で優秀賞を受賞しました。全国で最優秀賞に選ばれた360度自由に動かせる「オムクロタイヤ」を改良し、水上でも動くタイヤを発明しました。作品名は「ストレスフリーで水陸レスキュー『スクリュータイヤ』」

山根さん
「陸上だと動かす時は斜めに小さな車輪が何個もついていて、そして水上だと、ここの間に水の流れが通って動くことができます」

ロボットの周りには水上で浮くように浮きもついています。陸上はもちろん、水上でも風や波にあおられることなく動くよう設計されています。将来はカメラをつけて、水中で行方不明者を捜索できるロボットにしていきたいと考えています。

(mixで2023年に紹介した特集の中から、ゴールデンウイークに家族で楽しんでもらいたい話題をピックアップしました)

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